組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(4) ―― Androidの登場で注目高まるETEC(組込み技術者試験制度)
●試験対策
既に,ETECクラス2試験の関連書籍は,数多く出版されています注2.まずは,これらの書籍を使用して,基礎的な知識を身につける(inputする)ことをお勧めします.またe-ラーニングなどの教育コースも充実しつつあるので,それらを活用するのもよいでしょう.その後に,ETECクラス2試験の予想問題が掲載された書籍を使用して,試験でスコアを高めるための"output"の演習を重ねていただけたら,まずはグレードB以上を取ることができるかと思います.
注2:CQ出版社からも,エントリ向けの関連書籍として『組込みソフトウェア技術者試験 クラス2 対策ガイド』や『すぐわかる!組込み技術教科書』が出版されている.
●気になる平均点は?
平均点は460点~480点程度のようです.詳細は,クラス2試験受験結果のプロファイルを公開しているWebページを参照してください.このページでは,経験年数別のスコアや取得グレードの割合なども見ることができます.
例えば,1年未満の受験者でグレードAを取った場合,上記の受験者データから,1年未満のスコアの平均は430点で,グレードAは9%,グレードBは55%,グレードCは36%であることが分かります.これによって,「同世代で比較すると上位9%に入っている」ことが判明します.
●ETECクラス2試験の難易度は?
ETECは合否を問う試験ではないので,一概に難易度をつけることはできません.現在,エントリ・レベルを対象としたクラス2試験が行われていますが,グレードAや600点以上のハイスコアを狙うとなると,けっこう大変かもしれません.
クラス2の本来の受験者像であるエントリ・レベルの人からは,「本を読んで勉強して試験に挑んだが,平均点に達するのがやっとだった」,「C言語の問題が難しくて手も足も出なかった」,などの感想を聞いています.このように,多くの若手受験者からは,「エントリ・レベルと言うものの,平均点以上のスコアを取るのはけっこう難しい」との意見を聞きます.また,「苦手なハードウェアの問題で点数を落とした」,「管理技術,全滅なり! 泣!」とか,分野ごとのバランスの悪さが見事に露呈して,自らの弱点に気付いたという意見も聞いています.ハイスコアを狙うためには,自分の不得意分野をなくして,まんべんなく点数を重ねることが大切のようです.
逆に,スコアが高かった人の話を聞くと,「ブート・ローダやスタートアップ・ルーチンの知識など,いかにも組み込みらしい問題が出ていた」,「昔ハマった,プロセッサのバイト・オーダ(エンディアン)の問題が出て,懐かしかった」などの感想がありました.さらに,試験対策本で勉強してグレードBや平均点以上の500点~600点を取ることはできるだろうが,それ以上のスコアを取るには,経験や上級の知識が必要だろう,との意見も聞きます.例えば,次のような問題は,単にC言語の文法の上っ面を理解しているだけでは解答が難しいと思われます.
問 以下のC言語で記述された構造体が,メモリ上に配置されたときの全体のサイズは何バイトになるか? なお,intは16ビットとする.
struct hogehoge
{
int i_data;
char c_data;
};
ア 3バイト
イ 4バイト
ウ 8バイト
エ 分からない
解答はこちら
先ほど紹介した,クラス2試験受験結果のプロファイル・データにおいても,経験年数が長いほどスコアが高くなる傾向が顕著に出ています.
以上を踏まえて考えると,現状のレベル2試験でも,ある程度レベル1のミドル・レベルに相当する問題が含まれており,それを解答できないとハイスコアの獲得は難しいものと思われます.そのため,ハイスコアを目指すなら,エントリ・レベルの書籍だけでなく,より高度な内容の書籍を使用して勉強することも必要かと思います.
●ベテラン/中堅の技術者でも意外と苦戦?
クラス2試験はエントリ・レベル向けだとはいえ,まだクラス1の試験は実施されていませんので,(自称)ミドル・クラス以上の方も,まずはクラス2試験で「腕試し」するのもよいかと思います.でも,エントリ・レベル向けと思って侮って受験すると,意外と苦戦するかもしれません.
90分で120問の量なので,「アラフォー世代以上の人が受けると,試験中に疲れが出て集中力が途切れ,眠くなる」といった話を聞きました.半信半疑でしたが,実は筆者も受験してみたところ,試験開始から60分ぐらい経過したところで目は疲れてくるし,眠くなるしで苦戦しました.試験終了間際に見直しができるのですが,なぜか「無回答」の問題が何問か続いていました(あぁ,解いた記憶がない! でも,解き直す時間もない!).
ですから,アラフォー世代以上の人は,試験前にドリンク剤でもグッとのんで,万全の態勢で臨まれることをお勧めします.ただし,目薬は試験会場に持ち込めません.目の疲れだけはどうにもなりませんね....
次回は,トロン技術者認定試験を取り上げる予定です.
参考・引用*文献
(1*)久保 幸夫;『組込みソフトウェア技術者試験 クラス2』模擬問題(第1回),Interface 2007年7月号,CQ出版社.
(2*)ETEC組込みソフトウェア技術者試験 クラス2のパンフレット
(3)ETEC 組込みソフトウェア技術者試験 クラス2 試験要綱
(4*)久保 幸夫;『組込みソフトウェア技術者試験 クラス2』模擬問題,Interface 2007年7月号~12月号,CQ出版社.
(5*)久保 幸夫;10分1本勝負! 組み込みソフトウェア道場,Interface 2008年2月号~7月号,CQ出版社.
くぼ・ゆきお
組み込み&IT関連資格講師
tag: 技術教育