走行消費電力の低さを競うロボコンを開催 ―― Green ET Challenge 2010コンテスト
●各チームが異なるアプローチで上位を目指す
競技は,各チームが2回ずつ走行し,合計の消費電力の低さを競った.順位は,消費電力の低いほうが上位となり,リタイアすると600Wと換算される.すべてのチームが1回ないし2回リタイアし,完走率は21.4%と低迷した.各チームにリタイアの原因を聞いたところ,
- スパイク・ノイズの影響でマイコンが暴走した
- トルク不足で坂道が登れなかった
- 動力用電池の電圧が高すぎてコースアウトした
と,さまざまな原因があることが判明した.このほか,ミニ四駆のコースの値段が高くて設置場所もないため,事前のテストが不足していたという面もあるだろう.
優勝したのは,チーム「通りもん(マイクロコート)」である(写真6,図9).成績は866.81ポイント.1回目はリタイアしたものの,2回目の走行では大会前の評判通りすばらしい成績を残した.摩擦力を極力減らすため,4輪駆動を2輪駆動に変更する,ギアのバリを取り除く,車軸を強度の高いものに交換する,タイヤの接地面を小さくするなど,走行体のボディにいろいろな工夫が施されていた.また制御ソフトウェアも,回生ブレーキに惰性走行を組み合わせて合理的に改良されていた.なお,このチームが1回目にリタイアした原因は「速すぎた」ためであり,ほかのチームとは違う意味でのリタイアである.
写真6 チーム「通りもん」の走行体
図9 チーム「通りもん」の計測データ
準優勝はチーム「FSCレーサーズ(沖通信システム)」である(写真7,図10).成績は909.8ポイント.安定した良い走りをしていた.回生ブレーキのような急な停止は行わず,少し車体を重くして,減速したいときには電気を流さないで惰性で動く方式をとっていた.制御ソフトウェアは,ウォッチドッグ対応やエラー用走行パターン設定など,異常処理がきちんと実装されていた.
写真7 チーム「FSCレーサーズ」の走行体
図10 チーム「FSCレーサーズ」の計測データ
完走したもう1チーム「頑張れ長辻(企業)」は,特別賞を受賞した(写真8,図11).このチームは競技前の試走でもハンダごてを握って制御基板の修正を続けており,まさか完走できるとは思っていなかった.まさにその場で,緊急対策を実行して成功したチームである.また組み込みソフトウェアとしても,マーカをカウントして難所ごとに攻略するという,ほかのチームとは違ったアプローチをとっていた.
写真8 チーム「頑張れ長辻」の走行体
図11 チーム「頑張れ長辻」の計測データ
来年度もコンテストを開催する予定(競技内容は未定)なので,興味のある方はぜひ参加していただきたい.きっとさまざまな面白い体験ができるだろう.最後に,お忙しい中ご参加いただいたチームの皆様,運営委員会を支えてくださった皆様,ほかご協力いただいた多くの皆様に,この場を借りてお礼を申し上げます(写真9).
写真9 競技者,主催者および運営委員(ボランティア)
やました・なおひと
NPO法人 九州組込みソフトウェアコンソーシアム(QUEST)室長
Post a Comment