100Gの波長多重通信や散乱可視光の通信など,多様な発展を見せる光技術 ―― インターオプト2010

福田 昭

tag: 実装 電子回路

レポート 2010年10月 5日

●光ファイバを利用した32点同時計測の温度センサを展示

 光ファイバの応用と言えば光通信だが,工業的に重要な応用にセンサがある.光ファイバの先端にセンサ素子を取り付け,物理量の変化によって反射光の分光特性が変化することを利用してセンサとする.光ファイバは数kmと長くできるので,電源なしで遠隔地における物理量を計測できる.また光ファイバは電磁波の影響を受けないので,電磁ノイズの存在する環境でも計測が可能だ.さらに,光ファイバを分岐させることで同時に数多くの地点で物理量を検出できる.

 光部品やネットワーク部品などの開発企業である渡辺製作所は光ファイバを使った温度センサを開発し,本展示会で温度測定システムを実際に動かしてみせていた(写真7).32本の光ファイバ・センサを使って32点の同時計測を実演していた.-50℃~+200℃の間で,±65℃の範囲を測定できる.

写真7 光ファイバを使った温度計測システム
手前にある3個のポットに光ファイバ・センサを挿入し,温度を計測している.左のポットが冷たく(氷水が入っている),中央のポットは室温,右のポットは熱い(お湯が入っている).

 展示した温度測定システムでは,光ファイバの先端に温度センサとなる誘電体多層膜を取り付けてある.誘電体多層膜は特定波長(中心波長)付近で反射光が減衰する帯域阻止フィルタとして働く.中心波長は温度によって変化するので,中心波長より長い波長の光と中心波長より短い波長の光を光ファイバに導入して反射光の強度を測定すると,温度の変化を検出できる.

 渡辺製作所が開発したシステムではさらに,疑似ランダム符号で2波長の光を変調し,相関を求めることで信号対ノイズ比(SN比)を高めている.

●波長可変光源の発光スペクトラムを自由に変化

 要素技術の展示では,可視光の発光スペクトラムを自由に変えられる波長可変光源システムの実演が目を引いた.ニコンが開発した光源システム「ELS-VIS」である(写真8).

写真8 可視光の発光スペクトラムを自由に変えられる波長可変光源システム
中央の黒い箱が発光スペクトラムを調整するモジュール,右端の白い箱がキセノン・ランプ(白色光源).手前のノート・パソコンにインストールしたソフトウェアで発光スペクトラムを制御する.

 光源システム「ELS-VIS」は,キセノン・ランプ(白色光源)と発光スペクトラムを調整するモジュールで構成される.モジュールではキセノン・ランプの白色光を回折格子で分光し,光の3原色に分けてから光変調デバイスで強度を調整する.そしてレンズで集光し,光出力とする(写真9).

写真9 波長を連続的に変えるモジュールの光学系

 発光スペクトラムの制御は,ノート・パソコンにインストールしたソフトウェアで実施する(写真10).制御できる光波長の範囲は400nm~720nm.10nm刻みで強度を調整できる.発光スペクトラムの調整は,オーディオのイコライザに類似したツマミを上下することで実行する.ツマミの操作と連動して発光スペクトラムの表示が変わるので,所望の発光スペクトラムを容易に実現できる.

写真10 発光スペクトラムの調整画面
10nm刻みでツマミを上下することで,400nm~720nmの範囲で発光スペクトラムを調整する.操作画面はオーディオ機器のイコライザに似ている.

●第2高調波発生レーザ光源の効率を50%に

 高調波発生を利用した光源では,光部品・材料のベンダであるオキサイドが,第2次高調波発生(SHG)と第3次高調波発生(THG)を利用したレーザ光源を展示していた(写真11).基本波の光源は半導体レーザ励起のファイバ・レーザで,波長は1064nmである.高調波発生には疑似位相整合(QPM)結晶を使う.展示ブースでは,QPMでSHGを発生させたレーザ光学系と,QPMでSHGおよびTHGを発生させたレーザ光学系を実際に動作させていた.

写真11 高調波発生を利用したレーザ光源
疑似位相整合(QPM)結晶を高調波発生に利用した.手前は第2次高調波発生により,532nm(緑色)のレーザ光を発生させた光学系.奥は第2次高調波発生と第3次高調波発生の両方を利用して532nmと355nmのレーザ光を発生させた光学系.

 SHGの波長は532nm,THGの波長は355nmである.高調波の発生効率はかなり高く,10Wの基本波出力に対し,SHGで5W,THGで1Wの出力が得られるという(パルス列出力の場合).

 

ふくだ・あきら
テクニカル・ライタ/アナリスト

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