組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(2) ―― 「組み込み技術者向け」の情報処理技術者試験って?

久保 幸夫

tag: 組み込み

コラム 2010年10月14日

●情報処理技術者試験で「組み込み力」は測れるか?

 さて,これまでスキル・レベル1~スキル・レベル3の情報処理技術者試験の組み込み系の問題を見てきました.現行試験制度にETSSが組み込まれたことはよいのですが,残念ながら,現状では出題数があまりにも少なすぎます.そのため,スキル・レベル1~スキル・レベル3の情報処理技術者試験に合格し,IT全体の知識があることが判別できたとしても,はたして,組み込み技術者にとっては一番大事な「組み込み」に関する知識や応用力(すなわち「組み込み力」)がどれだけあるのかについては,十分に測れないのが実情といえます.

 また,比較的高度な内容が問われる応用情報技術者試験の午後の組み込み系の問題は選択問題なので,組み込みの問題を解かなくても他の問題を選択し,点数を上げれば合格できてしまいます.実際に,午後の試験で組み込み系の問題を選択する人が少ないという傾向もあるようです.これには,情報技術者試験関連ビジネスにおける「組み込み」に対する諸事情があります.

 まず,書店で販売されている試験対策書を見ても,組み込み系の問題だけ解説が薄かったり,まともな解説がなされていない本もたまにあります.また,受験対策のセミナなどにおいても合格するための効率的な試験対策として,「応用情報技術者試験の午前では,組み込み系の問題は出ても数問,切り捨てるのが得策! 午後は選択だから,逃げるが勝ち!」と解説されているものもあると聞きます(合格率アップのためには正しい選択かもしれないが,組み込み系の講師としては残念).これでは,何のために試験制度にETSSが組み込まれ,組み込み系の問題が出題されるようになったのか,という疑問がわいてしまいます.

●「何でも測れる魔法の測定器」はない

 ここまで読んで,「では,スキル・レベル1~スキル・レベル3の情報技術者試験は組み込みの観点から見て,使えないの?」とか,「結局,情報処理技術者試験の組み込みって,実質的にエンベデッドスペシャリスト試験だけじゃないの?」と,思われた方もおられることでしょう.でも,何でも測れる魔法のツール(測定器)はありません.ハードウェアなら,とりあえずマルチテスタでいろいろ調べてから,必要に応じてオシロスコープやロジック・アナライザ,スペクトラム・アナライザなどを組み合わせて調べることでしょう.スキルを測るためのツール(試験)も同じだと筆者は考えています.

 スキル・レベル1~スキル・レベル3の情報技術者試験だけでは「組み込み力」を十分に測れないとしても,ほかの組み込み系の試験,例えばETEC(組込み技術者試験制度)や組み込みに特化したベンダ系の試験と組み合わせることにより,補完が可能です(これらの情報技術者試験以外の試験については,4回目以降で解説する予定).初心者レベルから中堅を目指す若手組み込み技術者には,スキル・レベル1~スキル・レベル3の情報技術者試験と,関連するほかの組み込み系の試験にチャレンジすることにより,幅広いITのスキルと組み込みのスキルの双方を併せ持っているかどうかを測れることでしょう.

 次回は,スキル・レベル4の情報技術者試験である,エンベデッドシステムスペシャリスト試験などについて解説したいと思います.


くぼ・ゆきお


※冒頭の問題の解答・解説はこちら

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