組み込み技術者のための資格試験,傾向と対策(2) ―― 「組み込み技術者向け」の情報処理技術者試験って?

久保 幸夫

tag: 組み込み

コラム 2010年10月14日

●情報処理技術者試験における組み込み系問題の出題例

 では,実際の情報処理技術者試験において,どのような組み込み系独特の問題が出題されているか,見ていきましょう.まずは,スキル・レベル1のITパスポート試験です.

平成21年秋ITパスポート試験 問28
組み込みシステムの特徴として,最も適切なものはどれか.

ア 組み込みシステムの開発や稼働には,専用のOSを使用する.
イ 組み込みシステムの稼働には,ネットワークヘの接続が必要である.
ウ 組み込みシステムは機器内部の制御用であり,ユーザインタフェースは不要である.
エ 組み込みシステムは専用化されたハードウェアやソフトウェアから成る.

 これは,組み込みシステムの特徴を問う問題です.アについては,組み込みシステムの開発環境は汎用のOSで可能なので,×となります.ネットワークヘ接続しないスタンドアロンの組み込みシステムも多いので,イも×.ユーザ・インターフェースについてはシステムにもよりますが,ユーザ・インターフェースが必要なものが多いので,ウも×.そして,専用化されたハードウェア上に,専用のソフトウェアを動作させるのが組み込みシステムの特徴なので,エが○となります.このように,スキル・レベル1のITパスポート試験では,優しい問題が出題されています.また,組み込み系の出題も毎回1問程度です.

 なお,すべての問題と解答は,情報処理技術者試験の「平成21年度秋期試験 問題冊子」のページから参照できます.

 次に,スキル・レベル2の基本情報技術者試験(FE)の出題例です.

平成22年春 基本情報技術者試験 午前問18
エンジン制御,ハードディスク制御などの制御系ハードリアルタイムシステムでリアルタイムOSを活用する理由はどれか.

ア ウイルス侵入の防御のためにメモリ保護機構が必要だから.
イ 定められた時間内にイベントに対応した処理を完了させる機構が必要だから.
ウ システム全体のスルーブットを向上させる機構が必要だから.
エ 複数の独立したプログラムを並行して動かす機構が必要だから.

 ここでは,制御系ハード・リアルタイム・システムでリアルタイムOSを活用する理由が問われています.リアルタイム・システムは時間制約があるシステムです.それもハード・リアルタイムなので,割り込みなどのイベントに対して,定められた時間内に処理を完了させる(または処理を開始する)ことが求められます.よって,イの「定められた時間内にイベントに対応した処理を完了させる機構が必要だから」が正解です.その他は,一般的なOSに関することと考えられます.

 なお,冒頭に示した7セグメントLEDの問題は,上記の問題と同じ年の平成22年春 基本情報技術者試験の午前問23です.このように,ITパスポート試験に比べ,スキル・レベル2の基本情報技術者試験では,より組み込みらしい問題が出題されます.しかし,出題数は,午前の四択問題で2~3問程度にとどまっています.

 なお,すべての問題と解答は,試験センターの「平成22年度春期試験 問題冊子」のページから参照できます.

 次に,スキル・レベル3の応用情報技術者試験(AP)の組み込み関連問題を見てみましょう.

平成22年春 応用情報技術者試験 午前問23
問23 8ビットD/A変換器を使って,電圧を発生させる.使用するD/A変換器は,最下位の1ビットの変化で10ミリV変化する.
データに0を与えたときの出力は0ミリVである.データに16進数で82を与えたときの出力は何ミリVか.

ア 820
イ 1,024
ウ 1,300
エ 1,312

 16進数の「82」を2進数に直すと,最上位から「1000 0010」となります.2進数の各ビットの重みは最下位から1,2,4,8,16,32,64,128です.最上位から並べると128,64,32,16,8,4,2,1となり,2進数1000 0010は,"128"と"2"のビットが1で,ほかは0です.使用するD-A変換器(D-Aコンバータ)は最下位の1ビットの変化で10mV変化するので,

(128+2)×10mV=13000mV

となり,答えはウとなります.

平成22年春 応用情報技術者試験 午前問25
ワンチップマイコンにおける内部クロック発生器のブロック図を示す.
15MHzの発振器と,内部のPLL1,PLL2および分周器の組合せでCPUに240MHz,シリアル通信(SIO)に115kHzのクロック信号を供給する場合の分周器の値は幾らか.
ここで,シリアル通信のクロック精度は±5%以内に収まればよいものとする.

ア 1/2^4 ※4乗
イ 1/2^6
ウ 1/2^8
エ 1/2^10

 分周器は1/2,1/4,1/8・・・と周波数を下げる機能で,逆に,逓(てい)倍器は2,4,8...と周波数を上げる機能です.PLL(Phase Locked Loop)は逓倍器としてよく使われる回路です.

 15MHzの発振器の信号はPLL1で8逓倍しているので,15MHz×8=120MHzとなります.120MHzから分周器で115kHz(±5%)のクロック信号を生成する必要がありますが,単位の違いに注目して約1000で割れば,115kHzになりそうです.すると,エの2^10が1024ですから,一番近い値になりそうです.念のため確かめると117.1115kHzになり115kHz(±5%)に収まります.よって,エとなります.

 このように,応用情報技術者試験では,ワンチップ・マイコンを使いこなすための応用力を問う問題が出題されており,午前の四択問題で2~3問程度が出題されています.

 また,応用情報技術者試験の午後試験で,毎回の試験の選択問題として,組み込み系の問題が出題されます.組み込みシステムの事例に沿って設問に答えていく問題で,高度試験であるエンベデッドシステムスペシャリスト試験を少し簡単にしたような問題が出題されています.問題が長いのでここには掲載しませんが,すべての問題と解答は,情報処理技術者試験の「平成22年度春期試験 問題冊子」のページから参照できます.応用情報技術者試験(AP)の午後をクリックして「問7 タクシーの料金メータの設計」を参照してください.

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