プリント基板のGerberフォーマットがなくなる!? (1) ―― GerberからODB++へ

剣持 裕治

tag: 実装 電子回路

コラム 2010年7月 9日

●オープンなプリント基板のデータ形式が登場

 ここまで紹介してきたGerberフォーマットは,プリント基板のフォトマスクを作画するための露光機を稼働させることを目的としたデータ形式でした.すなわちアートワーク・イメージを作成するためのデータであって,プリント基板の製造や実装の情報としては不十分です.

 そこで,Gerberフォーマットに替わる技術として,イスラエルのValor Computerized Systems社が「ODB++」というデータベースを開発して,公開しました.ODB++のODBとは「Open Database」の略です.名前のとおり,オープンなデータベースであり,プリント基板の設計・製造,および部品実装の各工程に必要な情報を統合した拡張可能なASCIIベースのフォーマットです(図3).


図3 ODB++に含まれる情報


 Valor Computerized Systems社は2010年3月に,米国Mentor Graphics社に買収されました.Mentor社は今後もプリント基板の製造市場向けの製品開発,製造市場に対する製品およびサポートの提供,Mentor社およびMentor社以外のプリント基板CADに対するDFM機能の統合を継続していくことを表明しています

●日本はプリント基板のデータ・フォーマットでも「ガラパゴス」?

 日本においては,まだODB++はそれほど一般的にはなっていません.海外のEMS(Electronics Manufacturing Service;電子機器の受託生産サービス)企業へ製造を委託する際に,初めてその名前を耳にする設計技術者も多いようです.海外のメーカに高密度な基板の製造・実装を依頼すると,必ずと言ってよいほどGerberデータではなくODB++を要求されます.この日本と海外の対応の違いはどこにあるのでしょうか? 理由を筆者なりに考えてみました.

 日本の基板製造現場では,長らく標準Gerberとその他の情報が記された指示書が使われてきました.アパーチャ・リストや数値解釈のための指示書の重要性は設計技術者,製造技術者共に十分に理解しており,情報の受け渡しの手順が標準化されています.そのため,製造技術者はアートワーク・イメージさえ正確に再現できれば,経験的にそれに適合する製造プロファイルを設定できます.それほど,製造現場の技術者が優秀なのです.

 これに対して海外では製造設備を最新のものに置き換え,なるべく自動化することで,個々の技術者の技量に左右されない生産性改善を進めているように感じます.
 こうした日本と海外の「ものづくり」に対する考え方の違いが,今後のプリント基板設計・製造の動向にどのような影響を与えるのか,注意して見ていく必要があると思っています.

          *          *          *

 次回はODB++のファイル構造や重要なポイントについて説明します.

(第2回に続く)


けんもち・ゆうじ

◆筆者プロフィール◆
剣持裕治(けんもち・ゆうじ).アーケード・ゲーム機の開発会社で電子機器開発の全般を経験.設計会社自営を経て某外資EDAツールのFAEマネージャーに.日本撤退により現在はフリーでコンサルタントとライタを兼務. 

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日