中国出張や中国赴任を成功させるこつが分かりやすく整理された解説書 ―― 『すぐに役立つ 中国人とうまくつきあう実践テクニック』

山西 一啓

 

 

『すぐに役立つ 中国人とうまくつきあう実践テクニック』
吉村 章 著
総合法令出版
ISBN-10: 4862802079
ISBN-13: 978-4862802071
316ページ
2010年4月
1,365円(税込)
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 本書には,中国でビジネスをする場合や,日本で中国人とビジネスをする場合に,本当に「すぐに役立つ」ことが満載です.

 評者は7年前に,中国に1年半ほど駐在していましたが,その時にこの本を読んでいたら,もっとうまく中国人と仕事ができたのにと思いました.赴任が決まった当時,中国語を少し勉強しましたが,それよりもっと中国人の気質を教えてもらっていたら良かったのにと悔やまれます.その当時は,会社も駐在員も,まだ中国人のことを正しく理解していなかったのだと思います.そのため,何度か中国側と日本側でぎくしゃくしたことがありました.もしかすると,それはごく些細なことが積み重なって起きたことだったのかもしれません.

 例えば本書には,上司が飲みに連れて行ってくれた翌日には,日本人なら「昨日はごちそうさまでした」と言うのが常識ですが,中国人はあえて言わないのが常識だと書いてあります.相手に対する気遣いは同じなのですが,文化風習が違うため,行動が違ってくるというわけです.評者も,中国人はこんなものなんだと思っていましたが,実は評者を気遣ってくれていたのだと,今ごろ分かった次第です.先に駐在していた人も,そういうことまでは教えてくれませんでした.いや,彼らも本当の理由は分からなかったのだと思います.

 また,中国人には「以心伝心」は通用しません.「このくらい分かってくれているはずだ」,「これくらいは理解してくれるだろう」という期待と思い込みをつい抱いてしまいますが,恐らくこのような「空気を読む文化」は日本独特のものでしょう.このあたりは,駐在員が日本の本社に説明してもなかなか理解してもらえないところです.

 逆に,中国人の感情の表現はストレートで,日本人のように持って回った言い方はしませんし,優れた才能は素直に賞賛するところがあります.日本人のように,才能をひけらかすと妬まれるから控えめにしておこう,というような屈折した考え方は不要です.

 それなのに,日本人は中国人の気質や文化を自分たちより低く見て,「だから中国じゃうまくいかないんだ」なんて言っていた気がします.日本人の方が異質なのだと気付くべきでした.

 本書では人間関係を「たまご型コミュニティ」や「花びら型シェルター」と例えて,分かりやすく図解しています.人を裏切らない絶対的な信頼関係をたまごの殻のようなシェルター内に築き,それが趣味や仕事や地域のつながりごとに広がって花びらのようになっているということです.そして,会社にはこのシェルター機能がないというのです.なるほど,日本人のように会社に帰属することで安心してしまうのと,大きな違いがあります.気に入らないとすぐに辞めていく人が少なからずいるのも分かる気がします.

 中国人は給料明細を見せ合って,春節には転職すると聞きましたが,それは単に他人と比較して自分の給料が多いかを確認するだけかと思っていました.実は,会社からどれだけ評価されているかをチェックしていたのですね.さらに,自分がどれだけ会社から評価されているかを仲間に誇示するという意味合いも含まれていたというわけです.

 会社側としては,そんな社員を引き留めるにはどのようにすればよいのでしょう.これについては,「社員管理のドーナッツ」として示した七つのキーワードで,分かりやすく説明しています.

 また,日本人は会社というシェルターに守られているので,人を見極める感度が鈍いと指摘されています.中国人は自分の前に現れた相手とどのような付き合い方をしたらいいかを即座に判断する能力に長けているそうです.仕事相手でも,人間関係はまず個人の付き合いから始まり,中途半端な付き合い方では見透かされてしまうということです.そのために,絶対にやってはならない禁止項目や,絶対に言ってはならない禁止フレーズを守らなければなりません.

 中国語を勉強している人なら,時計を贈り物にしてはいけないと習いますが,それ以外にも贈ってはいけないものがあることを知りました.また,贈り物は個人対個人が基本であることや,つまらない物なら贈らない方がましだという考え方を初めて知りました.

 また,中国語の本には,食事は少し残すのが礼儀だと書いてあるので,それは知っていました.しかし,宴会で中国側の総経理が座る,グラスにナプキンが挿してある席は,てっきり上座だとばかり思っていました(実はホストの席).自分の思い込みで判断するのは間違いのもとです.ついつい日本人の感覚で判断してしまいがちなので,気を付けたいところです.

 評者は赴任先の中国人の何人かと個人的に親しくなりましたが,彼らの印象は,日本で広まっているいわゆる「中国人」の印象と明らかに違っていました.いろいろ親切にしてくれますし,日本人よりストレートです.その理由もやっと分かりました.中国人は,親しさの程度による対応の差が大きいということ,本当に信頼を得るには高いハードルを越える必要があること,などが本書には書いてあります.

 果たして,評者は彼らの信認を得ることができていたのでしょうか?


やまにし・かずひろ
キャッツ(株)

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