客観評価の試験と主観評価のアンケートを組み合わせて人材育成の効果を"見える化" ―― アイシン・コムクルーズ 間瀬 順一氏に聞く
―― 実施してみて,いかがでしたか?
間瀬氏:2008年,在籍していた社員のほとんど全員でETECとETSS-DSを受けました.ETECの結果とETSS-DSの結果には強い相関が見られました.また,テストは若い人のほうが得意かな,と思っていましたが,ベテランの開発者のほうが点数が高かったです.
2009年には,2008年に受験していない人のみがETECとETSS-DSの両方を受験しました.2010年にはまた全員で受験して,教育の効果を定量的に確認しようと思っています.
ETECは「技術要素」,「開発技術」,「管理技術」の分野ごとに正答率が示されるだけですが,ETSS-DSでは各分野内の階層項目でさらに細かく傾向が分かります.これで「弱い」と出た項目のうち,業務で必要なものについては,これからの社内教育で強化していく予定です.
―― 試験を受けた人の反応はどうでしたか?
間瀬氏:おおむね好意的でした.「忙しくて試験を受けている暇がない」という声は思ったより少なく,「受けてよかった」という声がどちらかというと多かったです.ただし,当社の中核となる車両の部品システムに関する知識は,ETECのような汎用的な試験では測れないため,「(これらの試験は)業務との関連が薄い」という指摘もありました.
●中堅社員向けの教育カリキュラム作成が課題
―― 人材育成において,課題だと考えていることを教えてください.
間瀬氏:一つは,中堅社員向けの教育のカリキュラム作成です.現在,若年層向け(新入社員向け)には教育カリキュラムを整えてありますが,中堅層向けはまだまだ徒弟制度的な教育が中心で,明文化されたものがありません.今後の電気自動車(EV)やハイブリッド・カーの開発などを考えると,車載ソフトウェア開発にはますます人材が必要になります.当社は社員数を大幅に増やす方向で採用を進めていますが,採用した若手社員が中堅社員になるまでに教育カリキュラムを準備しておきたいと考えています.中堅層に必要なスキルとしては,問題解決能力などのパーソナル・スキルが多く,集合教育でどうこうできるものではない部分もありますが,知識体系だけでも明文化したいと思います.
もう一つは,対象製品の大型化に伴い,システム全体を把握しづらくなっていることです.以前はほとんどの製品について,1人が1製品のすべてを見ることができていたのですが,現在は,「一部のサブモジュールについては詳細に理解しているけれど,全体が分からない」という技術者が増えています.そこで,小さめの製品を模擬的に作ってみるPBL(project based learning)を実施して,システム全体を見渡せるような教育を行いたいと考えています.