次世代の携帯電話システムを支えるGaNデバイスなどに注目 ―― マイクロウェーブ展2009 レポート
電子デバイス商社である米国Richerdson Electronics社の日本法人リチャードソンエレクトロニクスは,米国の高周波ICベンダ各社の製品を展示した.TriQuint Semiconductor社(写真8),ANADIGICS社(写真9),Peregrine Semiconductor社(写真10),Avago Technologies社(写真11),Nitronex社(写真12,写真13)などの製品である.リチャードソンエレクトロニクスの展示ブースはそれほど広くなく,各社の製品サンプルが所狭しと並べられていた.
写真8 TriQuint Semiconductor社の高周波デバイス群(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
写真9 ANADIGICS社の高周波デバイス群(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
写真10 Peregrine Semiconductor社の高周波デバイス群(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
写真11 Avago Technologies社の高周波デバイス群(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
写真12 Nitronex社の高周波デバイス群(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
写真13 Nitronex社のGaNオンSiウェハ(展示ブースはリチャードソンエレクトロニクス)
●携帯電話端末の特性評価用ファントムを軽くする
高周波の半導体デバイスおよびモジュール以外では,新開発のファントムが興味深かった.電波暗室や電波吸収体などのベンダであるマイクロウェーブ ファクトリーが,全固体で軽量なファントムの実物を展示していた(写真14).
写真14 頭部が3kg,胸部が5kgと軽量のファントム
軽いので,3次元測定用の2軸移動ステージに容易に搭載できる.マイクロウェーブ ファクトリーが展示.
ファントムとは人体と同様の電磁的性質を備えた実物大の模型で,外見は服飾店のマネキンと似ている.例えば,携帯電話端末の無線特性の評価に使われる.ファントムに携帯電話端末を持たせることで,人体が携帯電話端末に与える影響を実際に計測して把握する.
従来のファントムは生理食塩水を詰めたり,セラミックで製造したりしており,誘電率や導電率などを人体と同様にすることを基本的な考え方としていた.そのため,このタイプのファントムには,頭部と胸部を合計すると重量がおよそ30kgになってしまうという欠点があった.
これに対して,マイクロウェーブ ファクトリーが展示していたファントムは,頭部ファントムの重量が約3kg,胸部ファントムの重量が約5kgときわめて軽い.人体の形をした外枠の内側にカーボンを含むスポンジを貼り付けた構造をしている.誘電率や導電率などではなく,アンテナ・パターンが人体と同様になるように作製した.
展示ブースでは,頭部と胸部のほか,手首のファントムも出品していた(写真15).携帯電話端末を持つ手首は人体に近いので無線特性に与える影響が大きい.携帯電話端末の評価には不可欠なファントムである.
写真15 手首のファントム.マイクロウェーブ ファクトリーが出品
このほか,球体状の誘電体レンズ「ルネベルグ・レンズ」の展示が目を引いた.コーンズドッドウェルが実物を展示していた(写真16).開発企業はフランスLun'tech社である.
写真16 ルネベルグ・リフレクタ.Lun'tech社の製品(展示ブースはコーンズドッドウェル)
ルネベルグ・レンズとは球体の中心から半径方向に誘電体が連続的に変化するレンズで,球体に対して直線的に電磁波が入射すると,球体の表面で電磁波が収束する.マイクロ波~ミリ波のレンズ,あるいはリフレクタ(反射体)として利用されている.例えばレーダやミサイルなどの性能試験用デコイ(ターゲット)に使われる.複数のルネベルグ・レンズを使用して戦闘機(ターゲット)と同じアンテナ・パターンを実現し,模擬敵とする.
ふくだ・あきら
テクニカルライター/アナリスト
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