ディジタル・シネマ,3Dテレビ,3G-SDI伝送など,次世代の映像機器市場を支える技術に注目 ―― Inter BEE 2009(国際放送機器展)レポート

北村 俊之

tag: 組み込み

レポート 2009年11月26日

 2009年11月18日~20日の3日間,幕張メッセ(千葉市美浜区)にて放送機器や映像機器,音響機器などに関する国際展示会「Inter BEE 2009」が開催された(写真1).主催は社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA).従来の放送技術に加え,通信,IT,音響,ライティングなど,広範囲にわたる製品が展示された.出展社数は,海外企業466社を含む816社,展示小間数は1,391小間と,過去最大の規模だった.

 会場では,HDTV(High Definition Television)を中心とした放送,映像,音響に関する最新の技術や機器にITや通信の技術を組み合わせ,放送技術の革新や変化などを体感できる場を提供していた.

 また,近年のテレビ放送のディジタル化に伴い,今回より新たに「IPTV/Mobile TV/クロスメディア・ゾーン」が新設され,ディジタル化が終了した後の携帯用テレビに関するビジネスなどがテーマとして取り上げられていた.このほか,ディジタル・サイネージやディジタル・シネマ,3D映像などのパビリオンも展開された.


写真1 会場の様子

 

●非圧縮の4K RGBに対応したビデオ・ディスク・レコーダを展示

 計測技術研究所は,非圧縮の4K RGBに対応したビデオ・ディスク・レコーダ「UDR-20S」を展示した(写真2).4K映像とはフル・ハイビジョン(フルHD)の約4倍に相当する高精細映像で,ディジタル・シネマなどに利用される.展示ブースでは,2枚の液晶パネルの左右にデータを表示し,4Kのステレオ3D映像が上映されていた.視聴には,古今書院製の専用のステレオ・ミラー・ビューワを利用する.

 本レコーダでは,1ユニットに8チャネルのHD-SDI入出力(BNC接続)を装備し,非圧縮記録・再生が行える.解像度は最大4,096ピクセル×2,160ピクセル(4:4:4).4Kディジタル・シネマのほか,2Kディジタル・シネマ,HD-SDI(Single-Link,Dual-Link)などのビデオ・フォーマットにも対応する.また,フロント操作が可能なパネル,ホット・スワップに対応したディスク・パックなどを搭載する.

 本レコーダは,ケーブル接続用の工業規格であるAES/EBU BNC接続によるディジタル音声,外部制御用のシリアル通信規格であるRS-422ポート,LCDタッチ・パネル・コントローラ,外部同期用リファレンス信号など,ビデオ機器として最低限必要なインターフェースを備えている.また,外部ディスク拡張用ポート,制御およびデータ通信用ネットワーク・ポートも装備している.


写真2 計測技術研究所の「UDR-20S」

 

●ワンボックスのビデオ・システムがマルチフォーマットに対応

 エヌジーシー ディ・ストーム ディビジョンは,番組制作に必要なすべての機材を一つのボックスに集約した米国NewTek社製のデスクトップ型ビデオ・システム「TriCaster XD300」を展示した(写真3).ライブ中継からインターネット放送まで対応できる.本ビデオ・システムは,HD/SDモニタに対応した「XD300」,SDモニタのみに対応した「TriCaster」,「TriCaster PRO」,「TriCaster STUDIO」,「TriCaster BROADCAST」の4機種が用意されている.本ビデオ・システムを利用することにより,ライブ放送用のスイッチャやプログラム・モニタ,テロップ,ビデオ・エフェクト,ディスク・レコーダ,パソコン画面入力,バーチャル・セットを利用した放送が可能となっている.

 また,ノンリニア編集機能やキャラクタ・ジェネレータ,およびライブ・エンコーダを標準で備える.ライブ・エンコーダを利用すると,ライブの映像をリアルタイムにWindows Media形式(WMV)やFlash Video形式(FLV)に変換できる.この機能を利用することにより,インターネットを使用したストリーミング放送を実現できる.さらにハード・ディスクを内蔵しており,同時に複数のファイルを保存できる.さまざまな機材がモジュールとして一つのボックスに集約されているので,少人数でのオペレーションや設置場所の省スペース化に有利である.


写真3 エヌジーシー ディ・ストーム ディビジョンの「TriCaster XD300」

 

●撮影用カメラが左右2系統の3D映像をリアルタイムに合成

 エフエー システム エンジニアリングは,3Dハイビジョン映像を撮影できるカメラ・ユニット「3D-CliniCam」を展示した(写真4).3Dハイビジョン映像を撮影しやすいように左右両眼のカメラをコンパクトにまとめたカメラ・ユニットで,あらかじめコンバージェンス・ポイントなどが調整されており,同期のとれたHD-SDI出力の3D映像を収録できる.主に医療現場における手術映像の撮影,収録,視聴を用途とする.撮影された左右2系統の映像は,二つの画面を合成する装置「Side By Side Encoder」により水平方向に圧縮され,一つの3Dハイビジョン映像に合成される.これにより,3D映像をリアルタイムに合成して,通常のハイビジョン・レコーダに立体映像の同期を取ったまま記録することや,ライブ伝送(3D-IPTV)が実現できるという.


写真4 エフエー システム エンジニアリングの「3D-CliniCam」

 


●ケーブル・モデム・ネットワーク・アナライザを展示

 サンライズテレコムは,ケーブルのインストレーションやネットワーク検証テスト,トラブル・シューティングなどに利用できるネットワーク・アナライザ「CM2000」を展示した(写真5).本測定器の使用により,例えばケーブルのインストレーションの作業時間やトラブル解析にかかる時間を短縮できるという.

 最高30Mbpsまでのスループット・テスト,DOCSIS 2.0規格に準拠したケーブル・モデム・テスト,および変調エラー率(MER)やビット誤り率(BER)の測定などに利用できる.OSとしてWindows CE 5.0を採用する.本測定器は,6.4インチのフルVGA/カラー・タッチ・スクリーン,フィールドで交換可能なバッテリ,対応周波数が1GHzの高性能SLM(レベル・メータ)を搭載している.また,Webブラウザ機能やVoIPテスト(音声品質,コール・シミュレーション)の機能を備えている.バッテリは4時間連続使用可能.


写真5 サンライズテレコムの「CM2000」


●SD/HD-SDIから3G-SDIまで多様なビデオ規格に対応

 日本テクトロニクスは,3G-SDIからDual Link-SDI,HD/SD-SDI,コンポジット・ビデオまで,さまざまなビデオ規格の信号を1台で測定できる波形モニタ「WFM8300型」を展示した(写真6).本測定器は,アイ・パターン表示による計測やジッタ計測,ケーブル長測定などに利用できる.

 スピアヘッド・ガマット表示やLQV(Level Qualified Vector)表示により,より正確なカラー調整が行える.さらに,Dual Link-SDI(SMPTE372M)のモニタリングや自動フォーマット検出(SMPTE352M)の機能を標準装備しており,アルファ・チャネルや2K XYZカラー・スペースに対応する.


写真6 日本テクトロニクスの「WFM8300型」

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