評価ボードやベースバンドLSI,計測器など,Bluetooth 1.1準拠製品の展示が目立った ――MST 2001
2001年11月20日~22日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,組み込み分野の展示会である「MST2001」が開催された.今年は約260社が出展した.Bluetoothなどの無線機器,ATA SerialバスやUSB2.0などのインターフェース機器,Java関連製品などが展示された.
●省電力動作時の消費電力1mW以下のBluetooth評価ボード
Bluetoothは,2.4GHz(IMSバンド)の電磁波を利用して携帯電話やパソコンなどの機器間でデータや音声をやり取りする無線通信方式である.通信距離は約10m,データ通信速度は最大約1Mbps,音声通信速度は64kbpsである.
三菱電機は,省電力動作時の消費電力が1mW以下のBluetooth評価ボードを展示した(写真1).Bluetooth RFモジュールとBluetoothベースバンドLSI,Bluetoothプロトコル・スタックを組み合わせて通信を行った.
BluetoothベースバンドLSI「M64110WG」は,Bluetoothバージョン1.1に準拠している.HCI(host controller interface)-UARTインターフェース,リンク・マーネジャのほか,ベースバンド回路やリンク回路のコントローラを備えている.動作クロック周波数は通常16MHzで,消費電力はおよそ50mW.省電力動作時になると,動作クロック周波数は32.768KHzに切り替わる.そのときの消費電力は1mW以下.1対7のピコネットに対応している.外形寸法は9.0mm×9.0mmである.
Bluetooth RFモジュール「FA64846」はRFトランシーバIC(RF機能,IF機能,ローカル発振器,VCOの可変容量を内蔵)と周辺部品を搭載している.外付け部品はアンテナのみになる.2.5GHzのPLLを内蔵している.外形寸法は,12mm×10.4mm×2.7mm.
〔写真1〕三菱電機のBluetooth評価ボード 省電力動作時の消費電力は1mW以下.画像と音声の通信のデモンストレーションを行った.
●2Mビットのフラッシュ・メモリを内蔵するBluetoothベースバンドLSI
富士通は,BluetoothベースバンドLSI「MBG011」と「MB86C00」を展示した(写真2).MBG011は2Mビットのフラッシュ・メモリを搭載している.Bluetoothバージョン1.1に準拠している.ARM7TDMIプロセッサや8.0MHz~32.0MHzの周波数に対応したPLLを内蔵している.外形寸法は8mm×8mm×0.93mm.量産出荷は2002年3月からの予定.一方,MB86C00は,MBG011からフラッシュ・メモリを取りのぞいたLSIである.
〔写真2〕BluetoothベースバンドLSI 「MBG011」は2Mビットのフラッシュ・メモリを搭載している.
●通信機能を持ったBluetoothプロトコル・アナライザ
ソニー・テクトロニクスは,Bluetoothプロトコル・アナライザ「BPA100型」を展示した(写真3).Bluetoothバージョン1.1に準拠している.BPA100型は解析機能に加えて,通信機能を備えている.データ構造を解析したり,エラー・パケットを送出して,開発している機器の反応をチェックすることができる.
〔写真3〕Bluetoothプロトコル・アナライザ「BPA100型」 通信機能を持っている.
●JavaチップとJTRONを搭載したPDA
富士通とユニコムオートメーションは,それぞれのブースで,富士通のJava専用プロセッサ「MB92901」を搭載した携帯情報端末「io」を展示した(写真4).内部のボードについては,KDDI研究所が開発し,ユニコムオートメーションが製造した.
SVG(scalable vector graphics)形式のWebブラウザを用いて,地図などを表示できる.簡単な動画なども表示できる.タッチパネル式のディスプレイを備えている.OSにはJTRONを用いており,PersonalJavaに対応している.筐体の大きさは80mm×140mm×39mm.
〔写真4〕JavaチップとJTRONを搭載したPDA 「io」
このほかにも,Java関連製品として,Javaを用いたPDAや携帯電話などが会場のあちこちのブースで展示されていた.
●SH-4に対応したμITRON仕様OSのアプリケーション開発環境
イーソルは,同社のμITRON4.0仕様のOS「PrKERNELv4」専用のアプリケーション・ソフトウェア開発ツール「eBinder
ver.1.1 for SH」のベータ版を展示した(写真5).日立製作所のSH-4プロセッサ専用に開発された.正式版の出荷は,2002年初めの予定.ターゲット・ボードは京都マイクロコンピュータ製.本ツールは,Windows
98/NT/2000をOSとするパソコン上で動作する.デバッガとして,GNU gcc3.0を用意する.なお,ARM7プロセッサに対応したeBinderはすでに出荷されている.
〔写真5〕eBinder ver.1.1 for SHのベータ版 正式版の出荷は2002年初め.ボードは京都マイクロコンピュータ製.
●ATA Serialバス・プロトコル・アナライザ
東陽テクニカは,米国Computer Access Technology社(CATC)が開発したATA
Serial(シリアルATA)バス・プロトコル・アナライザ「SA001UAA-US」を展示した.東陽テクニカは,本アナライザの国内販売代理店である.
ATA Serialとは,現在,ハード・ディスク装置などに用いられているパラレル方式のATAバスに対して,転送速度が高速化された規格である.データの転送に用いるケーブルは,1本になる.米国Intel社や米国Quantum社などが規格化を進めている.この規格を用いた製品は,2002年末ごろに出荷される見込みだという.
本アナライザは,ATA Serial規格のうち,「SerialATA/1500」という仕様に対応している.この仕様のデータ転送速度は1.5Gbpsである.なお,ATA Serial規格のロード・マップでは,今後,3Gbps,6Gbpsと転送速度が上がっていく予定.
このほか,東陽テクニカは,CATC社のUSB2.0プロトコル・アナライザ/ジェネレータなども展示した(写真6)
〔写真6〕USB2.0プロトコル・アナライザ/ジェネレータ 開発はCATC社.国内販売代理店は東陽テクニカ.