ARM Cortex-A5,Cortex-M,フィジカルIPの概要 ―― 省電力のアプリケーション・プロセッサが登場
本日(2009年10月22日),英国ARM社からCortex-A シリーズの新ラインアップとして「Cortex-A5」(開発コードSparrow)が発表されました.Cortex-A5は,Cortex-A8,Cortex-A9に続くアプリケーション・プロセッサの32ビットCPUコアです.ここでは,新たに発表されたCortex-A5,および既存のCortex-MシリーズとフィジカルIPの概要について解説します.
2009年11月10日(火)には,東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にてARM社のプライベート・ショウであるARM Forum 2009が開催され,Cortex-A5の詳細についても紹介される予定です.
消費電力重視のモバイル機器や複雑なOS,および |
ARM Cortex-Aシリーズは,消費電力重視のモバイル機器や複雑なOS,およびユーザ・アプリケーション向けのプロセッサ・コアです.現在Cortex-A8とCortex-A9がシリーズとして用意されています.
Cortex-A8は,ARMv7アーキテクチャを採用した初のアプリケーション・プロセッサで,これまでARM社が開発したプロセッサの中では最も高い性能と電力効率を持つプロセッサです.Cortex-A9はシングル・コア・プロセッサも用意されていますが,マルチコア・プロセッサとして開発されました.「ARM Cortex-A9 MPCore」マルチコア・プロセッサは,ARM MPCoreテクノロジを統合するとともに,マルチコア・ソリューションの採用を簡素化し,普及を促進するための拡張機能を追加しています.
●省電力アプリケーション・プロセッサ「ARM Cortex-A5プロセッサ」
今回新たに発表されたARM Cortex-A5は,省電力かつ小面積のアプリケーション・プロセッサです.ARM1176JZ(F)-S と同等以上の高い性能とARM926EJ-Sに匹敵する小面積を両立し,また,どちらのプロセッサと比較しても,50%から80%の電力効率(DMIPS/mW)向上を達成します(図1).ソフトウェア的には,従来のCortex-Aファミリと完全な互換性があり,すでにこれらのプロセッサに向けた実装や最適化が進んでいる多くのOSやミドルウェア,アプリケーションをそのまま利用できます.最近では,ネットワーク対応のディジタル・カメラやフォトフレームのような,携帯電話以外の組み込みアプリケーションに対しても,より高いインターネットとの親和性,より高度なユーザ・インターフェースが求められています.しかし,一方で,コストや電力などの制約から,プロセッサを選択する際に,性能面での妥協を強いられる場合があります.
Cortex-A5はそのような用途に対して,高パフォーマンスと低消費電力をもたらすことができるだけでなく,Firefox,Adobe Flash のようなARMv7 に最適化されたソフトウェアを再コンパイルすることなく実行できる環境を提供します.ARMv7はすでにCortex-A8/A9で採用されているアーキテクチャで,以下のような機能に対応しています.
- コード密度と性能を両立させるThumb-2
- マルチメディア性能を向上させるNEON
- セキュリティのためのTrustZone
- JavaアクセラレータのためのJazelle
Cortex-A5のマイクロアーキテクチャには,省電力と小面積を実現するために,比較的シンプルなインオーダ8段パイプラインを用いる一方,周波数あたりの性能を高めるために,高度な動的分岐予測,シングル・サイクルの32ビット×32 ビット乗算器,最適化されたメモリ・システムを搭載しています.これらの相乗効果により,非常に高い電力効率を実現します.オプションとして,単精度・倍精度両方に適したVFP,および電力と面積に最適化したNEON を追加することが可能です.さらにCortex-A9 MPCore と同一の,最大4個までのマルチプロセッサ構成(Cortex-A5 MPCore)をとることで,スケーラブルに性能を向上させ,幅広い性能レンジに対応することができます.
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