拝啓 半導体エンジニアさま(6) ―― 新興国需要が半導体市場を左右し始めたそのとき,日本の技術者は...

ジョセフ 半月

tag: 半導体 電子回路

コラム 2009年10月27日

 前評判の良いWindows 7が発売となり,売れ行きが気になるこのごろです.直接の売り上げはMicrosoft社の業績になるのですが,Windows 7の売れ行きが良いと,間接的にもうかる会社も多いと思います.当然の期待ですが,半導体関連業界にも波及効果の一部が回ってくるはずです.

●クリスマス商戦の「サイクル」に変調の兆し

 実はここで,「裾野の広いパソコンなので…」と書きかけたのですが,消してしまいました.確かに今でも裾野は狭くないのですが,かつてほど業界への影響力は大きくないように思います.あまり表面に出ないところでは今でも日本製の部品が結構使われていると思いますが,パソコン関連のメジャーなプレーヤはほとんど海外でしょう.日本の電子部品業界で直接影響を受けるところは多くないのかもしれません.Windows 95の発売のころの盛り上がりをOSの世代交代サイクルのピークと考えれば,その後,何度かのOSの世代交代サイクルを繰り返し,そのたびにだんだんとピーク振幅が減衰しながら,パソコンOSもパソコン自体も成熟した,というところでしょうか.


 また,そろそろクリスマス商戦シーズンに突入します.業界の皆さんはよくご存知のとおり,長年,民生品分野の消費は米国のクリスマス商戦が年間のピークとなるサイクルです.当然,民生品向けの生産については,それに合わせた年間生産量のピークが各社ごとにあると思います.ただし,その山の時期は製品や部品の性質によって異なり,一般にリード・タイムが長く,部品として製品製造の前に調達されなければならない半導体製品の場合,10月末ともなれば,とっくの昔にクリスマス商戦向けの製造は終わっていることでしょう.各社はそのうち業績を発表するでしょうが,どのくらいの数量まで回復してきているのか,これも気になります.


 しかしこのごろ,どうもそういう今までの「サイクル」そのものが変調をきたし,もしかすると別のサイクルに取って代わられてしまう過程にあるのではないか,と思われることがあります.単に昨年来の不況による変動が大きく,サイクルが大きく乱れた,というだけにとどまりません.ぶっちゃけ,「世界中のみんなが米国のクリスマス商戦のピークに照準を合わせて生産していた」ということそのものが,考えてみればかなり特殊な状況だった,そしてそういう風にみんなが気づいて,ちょっと考えをあらためている最中ではないかとも思われます.昨年のクリスマス商戦はリーマン・ショックの直後で,いろいろ取りざたされましたが,今年,来年とその傾向がどうなっていくのかをよく見きわめている段階かもしれません.


 時間はかかっても元のサイクルに戻る,という可能性がないとは言えません.しかし,新興国需要が中心となってくると,必ずしも米国主体のクリスマスがピーク,という話にはなりそうにないですよね.もしかするとチャイニーズ・ニューイヤーとかラマダンとかが消費のピークになっていくのかも知れません.いろいろな要素が重なって平準化されてしまうのか,二つのコブ山になるのか,それとも別の一つの大きな山になるのか.すでにそのあたりを見抜いて,手を打っている企業もあるのでしょうが,現時点では筆者には予想がつきません.もちろん,輸出主体をあらためて内需に専念する,という選択肢もありますが….

●新興国需要に合わせて「現地化」が求められるエンジニア

 ただし,予想がつくことが一つ.新興国需要が中心となってくると,売れる製品の筋が変わって来るだろうということです.当然だと思います.皆さん,長年の経験で,米国向けや先進国向けで売れそうな製品はよく把握していると思うのですが,新興国向けはイマイチよく分からん,というところがあるのではないでしょうか.もちろん,新興国向けに市場を開拓されている方々も多いとは思うのですが,市場そのものの変質というか動きが激しく,なかなかついていくのは大変なようです.


 過去はともかく,現在の日本企業は計画を立てるまでに時間が必要だし,動き出すとなかなか修正できないしで,新興国にありがちな突然の風向きの変化に対応するのが苦手なのではないかと思います.少し偏った見方かもしれませんが,だいたい新興国の商売相手は,売れるとみたら後先考えずにパッと飛びつきます.そして,日本人からするとえらくいい加減に作り,ちょっと風向きが変わるとサッと逃げてしまう,という風に見える人が多いような印象を受けます.


 実際のところ日本人も高度成長期くらいまではそうだったのかも知れません.しかし今の日本人は,なかなかそのように手早く動けず,そういう相手に振り回されてばかりいるように思えます.ついつい日本の常識を押し付けたり,日本の方角を見てものを考えるからかもしれません.遥かな昔,(これは悪い例ですが)満州の馬賊の頭目になっていた日本人ばりに「現地化」しないと,なかなか対等に渡り合えないのかも知れません.


 半導体のエンジニアにしてもしかり,ワークステーションの前でシミュレーションしているばかりでは,市場要求のシフトに適応できないかも.かといって馬賊にはなりきれないしなぁ….

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