仮想化やクラウドへの備えは万全,Windows 7やWindows Server 2008 R2などの位置づけをあらためて確認 ――Microsoft Tech・ED Japan 2009 レポート

北村 俊之

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レポート 2009年9月 1日

 マイクロソフトは,2009年8月26日~28日の3日間,パシフィコ横浜(横浜市西区)にて,開発技術者向けカンファレンス「Microsoft Tech・ED Japan 2009」を開催した.今年で15回目を迎える本カンファレンスで,同社は「POTENTIAL LIVES HERE~新たな可能性.新次元への道標~」をテーマに掲げた."ソフトウェア+サービス"構想を支える主要プラットホームである「Windows 7」,「Windows Server 2008 R2」,「Exchange Server 2010」,「Office 2010」などの新製品を紹介した.また,「セキュアな運用管理の実現」,「仮想化による柔軟で機敏なITインフラの構築」,「直観的で信頼性の高いアプリケーション開発」などにかかわる製品や技術の情報,ノウハウなどについて解説した.講義形式で学べるテクニカル・セッションやHands-on Labのほか,参加者同士のネットワークを広げるさまざまな企画が用意されていた.

●変化に即応できる俊敏なITシステムを構築

 開催初日には,「次世代のITの可能性がここにある」と題して,マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場 章弘氏,同社コマーシャルWindows本部 本部長の中川 哲氏,同社サーバープラットフォーム ビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐 光喜氏,米国Microsoft社 コーポレートバイスプレジデント Ofiiceプロダクト マネジメントグループ 沼本 健氏によるリレー形式のキーノート・スピーチが行われた.

 冒頭登壇したのは大場 章弘氏である(写真1).ITに求められる多岐にわたるニーズやクラウド・コンピューティングなどの新しい潮流に対応することを目標に,変化に対応しやすく俊敏性の高いシステムを目指す「Dynamic IT」の概念を提唱した.Dynamic ITとは,IT環境やインフラを最適化し,コストダウンの要求や市場の変化に即応できるシステムを構築することを指す.このDynamic ITの概念に対応した製品として,「Windows 7」や「Windows Server 2008 R2」がある(写真2).2010年には,「Exchange Server 2010」,「Office 2010」などの製品のリリースも予定しているという.


写真1 マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場 章弘氏

 


写真2 「Dynamic IT」を実現する製品群

 

●処理性能と互換性をアピールするWindos 7

 Dynamic ITを実現するための同社のクライアントOS「Windows 7」は,9月1日から法人向けボリューム・ライセンス・プログラムが開始され,10月22日には一般消費者向け販売が開始される.本OSの紹介を中川 哲氏が行った(写真3).同氏によると,開発のポイントとして「Microsoft社が何を作りたいかではなく,ユーザが何をしたいのかという視点に立ってWindows 7を開発をしてきた」という.同社は全世界で200カ国,約1,100万人,約600万台のクライアント・パソコンに対するニーズの調査を実施し,インタビューしたユーザ数もおよそ1600人に上るという.


写真3 マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川 哲氏

 

 特に,システム管理者に利益をもたらす新機能として紹介されたのが,「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」のコンポーネントとして提供される「Application Virtualization(App-V)」である(写真4).従来,社内のクライアント・パソコンの入れ替えやOSの更新などに際して,使用しているアプリケーションも個別にインストールし直す必要があり,これが管理者の作業負荷を高める一因となっていた.しかし今後は,この「App-V」を利用することで,サーバ側で持つアプリケーションを仮想化してユーザに配布できる.これにより,構成変更時の手間を軽減できるだけでなく,ユーザにとってもロケーションを問わず同じ環境で作業できる,というメリットが出てくる.同氏はこれらをデモンストレーションを交えてアピールした.また,こうしたサービスが実現できるのは,バックヤードでWindows Serverが稼動しているおかげであるとして,「Windows Server 2008 R2」も併せて紹介した.



写真4 「Application Virtualization」のコンセプト

 

●データ・センタ側を支えるWindows Server 2008 R2

 続いて登壇した同社 サーバープラットフォーム ビジネス本部長の五十嵐 光喜氏は,Windows Server 2008 R2を「ハードウェアの進化を具現化するクラウド時代の新基盤OS」と位置づけた(写真5).今後のDynamic ITを実現するデータ・センタでは,仮想マシンと物理マシンの間の壁を取り払い,現在の環境とクラウド環境をシームレスに統合し,管理者が同一のプラットホームのもとで運用できることなどが要求される.また,メニー・コア化,64ビット化,低消費電力などのハードウェアの進化を取り込みながら,これらを実現するのがWindows Server 2008 R2であることを強調した.


写真5 マイクロソフト サーバプラットフォーム ビジネス本部 業務執行役員 本部長の五十嵐 光喜氏

 

 デモンストレーションでは,「Core Parking」,「VHDブート」などの機能が紹介された.「Core Parking」は,プロセッサの負荷状況に応じて未使用のコアを停止させる技術である.デモンストレーションでは,Xeon 5500を搭載した同じ構成のサーバにWindows Server 2003 R2とWindows Server 2008 R2をインストールし,後者の方が約20%(約50W)消費電力を低減できることを示した(写真6).同氏によると,大規模化,集約化が進むデータ・センタでは,省電力の機能が大きなメリットをもたらすという.


写真6 「Core Parking」のデモンストレーション

 

 また,VHDファイルを通じて仮想マシンと物理マシンの間の環境展開を容易にする「VHDブート」では,Hyper-V上で動作する仮想マシンのVHDファイルを,物理マシンのブート・ドライブとして利用できることを紹介した.この機能を利用すると,仮想マシンと物理マシンが混在した環境の管理が容易になる.さらに,Windowsの展開サービスと組み合わせることで,「OSイメージの作成が容易になる」,「展開先も物理マシンや仮想マシンを選ばない」などのメリットもある.

●ユーザ・エクスペリエンスにこだわったOffice 2010

 キーノートの最後を飾ったのは,沼本 健氏の紹介による次期オフィス・スイート「Office 2010」,およびコラボレーション・サーバ「Exchange Server 2010」の紹介である(写真7).同氏はOffice 2010の開発ビジョンとして,「共同作業の効率化を向上するユーザ・エクスペリエンス」,「社内外で利用可能な柔軟性」,「バックエンド・システムと統合化されたビジネス・プラットホームの形成」の三つを挙げた.


写真7 Microsoft社 コーポレートバイスプレジデント Ofiiceプロダクト マネジメントグループ 沼本 健氏

 

 実演デモンストレーションでは,Excel 2010のセル内にグラフを表示する新しいスパークライン機能を紹介した.この機能により,それぞれのデータの動向分析が容易になる.また,ExcelのWebアプリケーションでは,Webブラウザ上で現行のExcelと同じ機能を再現している.Webブラウザは,Internet Explorerのほか,FirefoxやSafariにも対応する予定.デモンストレーションでは,iPhone上のSafariで動作する様子が紹介された(写真8).


写真8 iPhone上のSafariで動作するWebアプリケーション

 

 Outlook 2010では,Exchange Server 2010と連携することで,メール送信前に相手の状態を確認する機能などが搭載されている.また,PowerPoint 2010はマルチメディア機能が強化されており,張り付けた動画をそのまま編集するなど,さまざまな表示方法を設定できる.さらに,共同作業のための機能を強化しており,別の人が編集した内容をすぐに反映できるようになっている.

 現在,Exchange Server 2010がベータ版,OfficeやSharePoint,Visioがテクニカル・プレビューの段階に入っているという.

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