通信モジュールの使い方と試作基板の作成事例
● ファームウェア環境
ここでは,通信モジュールをモデム・モードで動作させ,パケット通信に必要となるPPP,TCP/IPプロトコル・スタックはCPU基板側に実装する方式とします.開発環境を含めてすべてフリーで入手可能なものとしました.表1にファームウェア環境を示します.なお,ここに示した動作環境や開発環境以外にも動作実績,開発実績をもつものが数多くあります.
表1 ファームウェア環境
また,通信モジュール内でTCP/IPパケット化を行う通信方式もあります.この場合,CPU基板側にはPPP,TCP/IPプロトコル・スタックが必要ありません.CPU基板からのシリアル・データはそのままTCP/UDPユーザ・データとしてサーバとの間で送受信されます.
● サーバとの通信
今回利用したTCP/IPスタックTINETには,試験的にTCP/IP機能を使うためのサンプル・プログラムが含まれています.このプログラムは無線通信用に作られたものではありませんが,発信接続については,特に無線通信であることを意識することなく使用できます.通信モジュールをアナログ・モデムに置き換えれば,従来のダイヤルアップ接続と同じなので,容易にその構成が理解できると思います.
一方,サーバから通信を開始する場合,ふだん無線リンクは接続されていないので,サーバからのパケットは通信モジュールや端末には届きません.また,通信モジュールあるいは端末のIPアドレスは,PPPリンク確立処理の中でネットワークから割り当てられるので,無線リンクが接続されていない状態ではIPアドレスが不定で,サーバはどのアドレス宛てに送信すれば良いのか分かりません.これを解決し,サーバからの通信開始を可能とするため,KDDIでは,仮想的な固定IPアドレス付与とショート・メッセージによるパケット着信通知機能を組み合せたCIPLネットワーク・サービスを提供しています.この通信フローを図2に示します.なお,CIPLネットワークはインターネットとは直接接続されていないため,非常にセキュアな通信環境となっています.
図2 サーバから接続を開始するケース
● CDMA 1X WIN通信モジュール
KDDIではCDMA 1X WINに対応した高速通信モジュール(京セラ製KCMV-200)も販売しています.通信速度が最大2.4Mbpsであり,インターフェースはUSBになっています.なお,USB接続には専用のドライバが必要です. Windows用(Dual Core を除く), Linux 用(カーネル・バージョン2.4 対応),ITRON用のサンプル・ドライバが提供されています.
● 通信モジュールのアンテナ
通信モジュールは移動無線局であり,アンテナおよび接続ケーブルを含めて,電波法に基づく技術基準に適合した状態で使用する必要があります.KDDIでは,各通信モジュールで使用できる推奨アンテナを各種用意し,TELEC認証を取得しています.この推奨アンテナや接続ケーブルをそのまま利用する場合は,あらめて認証を取得する必要がありません.
■お知らせ
今回ご紹介した試作基板の回路図,サンプル・プログラム,WMM200用変換基板,各通信モジュール用評価キットをご希望の方はKDDI通信モジュール営業担当(module-info@kddi.com)までお問合わせ下さい.
さいとう・たかし
KDDI(株) モバイルブロードバンドソリューション部 モジュール2G