初めての技術系コミュニティ活動(7) ―― 職場とコミュニティ,それぞれのメンタリティ
それまで会社に閉じこもって仕事をしていた筆者にとって,コミュニティは全く新しい世界の発見でした.全くのボランティア・ベースで,コミュニティの仲間に何かを伝えたい,共有したいという意志.そしてそのために場をしつらえ,そこに集うということ.そこに参加すれば実践に基づくコアな情報を得ることができるというメリット以上に,コミュニティという場そのものに,筆者は惹かれました.
●職場とコミュニティの違い
例えば,会社で仕事をするときと,コミュニティの活動に参加するときのメンタリティについて考えてみましょう.
会社で仕事をするときは,責任をもって結果を出すことに重きを置いてものごとを考えると思います.結果が保証できるように,問題の検知と分析と対策を繰り返し行うでしょう.失敗の芽を早く刈り取ろうと,あえて物事のネガティブな部分を見たりもします.結果として,減点主義的な視点を持つのも普通のことだと思います.
コミュニティはその正反対の考え方をしている,と筆者は思いました.イベントに参加する,その場で発言したり質問したり,何らかのコミュニケーションをとる,そういった行動が加点主義的に評価されます.コミュニティはあくまでボランティア・ベースの場ですから,ノルマを課して駆動することはできないのです.歓迎と感謝の気持ちのある場所がコミュニティなのです.
会社的なセンスとコミュニティ的なセンス.どちらにも理由と価値があり,単純にどちらが優れているということではありませんが,それまで感じたことのなかったコミュニティの雰囲気が筆者にはとても新鮮であり,また魅力的に感じられたのです.
●コミュニティのイベントへ遠征する
筆者が住む名古屋にはアジャイル系のコミュニティがなく,イベントが開かれることもあまりありませんでした(正しくは,当時の筆者のアンテナに引っかからなかっただけかもしれませんが).ですから,自分の関心のあるアジャイル・コミュニティのイベントに参加するためには,東京や大阪に遠征するよりありませんでした.スケジュールや旅費の工面を考えると遠征はそれほど気軽にできることではありませんでしたが,それに見合う情報が得られ,またその都度行った先で新たに親交を深めることができるので,いつも次のイベントが楽しみでした.懇親会の場で「(開催地からすると遠方・地方であるところの)名古屋から来ました」と言えば,遠くからよくおいでくださいましたと歓迎していただけますし,楽しい時間を過ごすことができたのです.
●自分のホームでコミュニティを楽しみたい
そのうちに筆者は,「できれば地元でこんな交流を持ちたい」と思うようになりました.東京や大阪で開催されるイベントとその後の懇親会に参加すると,その日のうちに名古屋へ戻るためには懇親会を途中で抜けなければなりません.それが残念だというのが理由の一つ.そしてまた,イベントにただ参加するだけでなく,スタッフとしてさらに関わりを持ってみたいと思うようになったのです.
そして,地元でイベントを行う機会はやってきました.