ユビキタスやモバイル・コンピューティングを実現する次世代通信技術 ―― 『最新図解 NGN(次世代ネットワーク)のすべて』

大野 典宏

tag: 組み込み 電子回路 Interface

書評 2009年2月17日

ユビキタスやモバイル・コンピューティングを
実現する次世代通信技術

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本田 雅裕著
技術評論社
ISBN-10: 4774136271
ISBN-13: 978-4774136271
208ページ
1,680円(税別)
2008年10月
Amazon.co.jpで購入


 NGN(Next Genetration Network;次世代ネットワーク)とは,特定のプロトコルやネットワーク網を示す言葉ではありません.いわば,現在は「縦割り」になっている電話などに代表される通信やTVなどの放送網を統合しようというコンセプトのことを言います.

 例えば,従来からの通信方式である固定電話のサービスは,ISDNでディジタル化され,一般家庭からインターネットへ接続するユーザを増やす大きな起爆剤となりました.そしてADSLによって,従来の電話網を生かしたインターネット接続の基礎技術になりました.今では光ファイバを使ったFTTH(Fiber To The Home)が主流になっています.携帯電話は,NTTドコモが始めたiモード・サービスから携帯電話でのWeb接続や電子メールなどの機能が付け足され,既に重要なインターネットへの接続手段となっています.また,インターネットの技術もIP電話や動画サービスといった通信や放送に応用されつつあります.さらにCATV(ケーブル・テレビ)などは,放送の配信ばかりでなくインターネット接続にも使われています.

 これは大変な資源の無駄だと思いませんか.

 それぞれが独立のサービスとして立ち上げられ,独自のインフラを使いながら,ユーザへのサービスがクロスオーバしているのです.つまり,それぞれのサービスが独自の通信手段という資源をバラバラの方式で使っており,末端の端末で同じようなサービスに見えているにすぎないのです.

 それを解決しようというのが,今回の話題であるNGNです.具体的には,それぞれでバラバラになっている通信網を新たなIP通信網として統合し,資源の共有化を図ろうという試みです.

 NGNの具体的な形はまだ明確ではありません.サービスを提供する会社に依存してしまうからです.しかし,決まっていることはあります.

 電話,Web,電子メール,TV放送までを統合して一つのネットワークで共有しようとすると,QoS(Quality of Service)が保証されなければなりません.例えば,インターネットを利用したビデオや電話のサービスなどで,回線の混み具合によって通話が途切れたり,TV放送がフリーズしてしまっては意味がありません.この問題に対する解決策として,RACF(Resource and Admission Control Function)という機能が提案されています.

 また,ユーザがモバイルであろうと,固定であろうと,そしてサービスを提供する会社が違おうともシームレスに接続されなければ,NGNとして統一する意味がありません.そのために,NNI(Network Network Interface)という通信網同士のインターフェースが規定されています.

 このように,各通信網同士がシームレスに接続され,同じサービスが保証されなければならないとなると,各通信サービス提供企業が共通の技術を使い,相互への乗り入れをスムーズに行えるように足並みをそろえなければ意味がありません.そのため,ITU(International Telecommunication Union)が中心となって標準化の試みがなされています.

 さて,このように夢のようなNGNですが,実際に実現するのはいつのことでしょうか.残念ながらそれは分かりません.10年後になるかもしれませんし,計画自体が頓挫する可能性もあるからです.

 しかし,今のような「縦割り」の通信サービス業態,そして違った通信網同士への相互サービスの非互換性,さらにはユーザの利便性を考えると,NGNのような技術は必須となります.そうでなければ,いつまで経っても音声が途切れたり,画像がフリーズするVoD(Video on Demand)サービスで我慢しなければならなくなるからです.NGNが最適解だと断言することは残念ながらできませんが,いつかは何らかの手段を用いてやらなければならないことであるのは間違いないことです.それが「地球規模でのサービスの統合」という究極の夢を実現するための手段なのですから.

 そしてこれは,ユビキタス・コンピューティングやモバイル・コンピューティングといった概念を実現するためにも必須の技術であると言えるでしょう.また,ユーザがどこにいても,どんな端末からアクセスしようとも,同じサービスが受けられるクラウド・コンピューティングや共通化されたWebOSへの実現にも,このような考え方は必須でしょう.

 今回紹介する本書は,NGNを実現するために何が問題になっているのか,何を解決しなければならないのか,そして何を実現しなければならないのかを網羅的に解説しています.未来のシームレスなネットワークで結ばれた「今よりも便利な,すべての通信・放送手段が統一化された社会」を想像してみてはいかがでしょうか.

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