マネキンからお好み焼きまで,人間社会に溶け込むロボットが集合 ―― 国際次世代ロボットフェア2008
2008年11月26日~28日,インテックス大阪(大阪市住之江区)にて,サービス・ロボットに関する技術展示会「国際次世代ロボットフェア2008(ICRT JAPAN 2008)」が開催された(写真1).テーマは"ロボットが創る地球と人間の新しい未来".
[写真1] 会場入り口の様子
ロボットは,モータなどの機械技術や材料技術,それらを制御するための情報処理技術など,さまざまな技術が高度に集積されて,初めて完成する.日本のロボット技術は世界でも群を抜いていると言われており,日本の将来を担う大きな産業に成長することが期待されている.
展示会場は,RT交流プラザ,先端ロボット,RooBO・ロボットラボラトリ,ロボットが創る生活空間など,いくつかのゾーンに分けられ,人間とロボットの共存・共生の場を提案していた.来場者が最先端のロボットに直接触れることもでき,ロボットに囲まれた近未来の生活を実感できるような工夫がなされていた.
●腰をかがめるサービス・ロボット,複数台で協調動作も
安川電機は,人と共存して作業する非製造業向け業務支援ロボット「SmartPalV(スマートパル ファイブ)」のデモンストレーションを行った(写真2).本ロボットは従来の「SmartPal」に腰部ユニットを追加し,体型をスリムにしたもの.腰部ユニットの追加により,床に置かれた物を取るなどの作業が可能になった.本ロボットは腕部や手部,移動部などの機能単位でユニット化されているため,機能の追加・変更を容易に行える.
[写真2] 安川電機の「SmartPalV」
主な機能として,ハンドリング機能,移動機能,コミュニケーション機能,環境認識機能,通信機能などを持つ.ハンドリング機能は,七つの関節(一般の産業用ロボットよりも一つ多い)により,人間の腕と同様の自由な動きができる.通信機能は,遠方にあるロボットや,エレベータなどの周辺装置と情報交換するための機能である.無線通信ネットワークを用いることで,複数台のSmartPalVを協調動作させることもできる.例えば,商業施設や空港などでの案内,オフィス内サービス業務(荷物搬送や巡回警備),介護支援(物品の手渡し)などの業務支援用途を想定しているという.
●紙でできたマネキン・ロボットを展示
イーガーと城東紙器は,外装がダンボール素材でできている「紙マネキンロボット」を展示した(写真3).外装のみの取り換えが可能であり,低価格で自由にカスタマイズを行える.イーガーが技術を,城東紙器が組み立てを,アキ工作社がデザインを担当した.紙と金属という対象的な素材を扱うため,開発の過程では,サーボ・モータと共存させる工業デザインの設計や紙とサーボ・モータとの接合を実現するパーツの設計開発,全体の制御など,さまざまな困難に直面したという.
[写真3] イーガーの「紙マネキンロボット」
本製品を利用したロボット演劇事業も進行中とのこと.2008年11月25日には,大阪大学 豊中キャンパスにおいて,ロボット演劇の試験公演が実施されたという.今後は,各種センサを搭載してサービスを多角化したり,学習キット・バージョンの開発などを予定している.
●お好み焼きを焼くロボット,返し技も得意
東洋理機工業は,人間と同じ道具を使ってお好み焼きを作る「お好み焼きロボット」のデモンストレーションを行った(写真4).ロボット本体は,安川電機の双腕ロボット「MOTOMAN-SDA10」を使用している.本ロボットは,視覚センサや力覚センサなどを使用せず,15軸のアームの動作プログラムのみで調理作業を行っている.
[写真4] 東洋理機工業の「お好み焼きロボット」
各腕に7軸,腰部を含めて計15軸を持ち,人間と同様の腕の動きや姿勢をとることができるという.音声認識・合成機能を備え,お客からの注文や好みの調味料を聞いたり,リクエストに応じて歌を唄ったりする.今回の実演でポイントとなったのは,お好み焼きをひっくり返す作業であるという.両腕の7軸すべてを動かして作業を行う予定だったが,CPUの処理能力不足により,7軸すべてを高速に動作させることができないことが判明した.そこで,手首に相当する軸のみを回転させることで,返し作業を行えるようにした.