市場で実績のある3Dディスプレイに注目が集まる ―― 立体Expo'08(立体映像産業展2008)
立体映像に関するハードウェア,ソフトウェア,コンテンツ,ならびに応用ビジネス・システムを集めた「立体Expo'08(立体映像産業展2008)」が,2008年12月3日~5日の3日間,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催された(写真1).会場では,3Dコンテンツ制作会社や店頭などで利用されている3次元(以降3D)ディスプレイに注目が集まった.
[写真1] 立体Expo'08 会場内の様子
●遅延のない3D映像を撮影・表示できる3Dカメラ・システム
レッドローバージャパンは,韓国Redrover社の3Dカメラ・システムを展示した.カメラを取り付けるための雲台,雲台の向きを変えるコントローラ,偏光ビーム・スプリッタと2台の液晶ディスプレイを搭載する3Dモニタ,2台の市販アナログ・カメラで構成される(写真2).会場では,2台のカメラで撮影した映像を,リアルタイムに3Dモニタに表示して見せた.
右目用のカメラで撮影した映像は3Dモニタの背面にある液晶ディスプレイに映し出され,左目用のカメラで撮影した映像は3Dモニタの天板に設置されている液晶ディスプレイに映し出される.右目用ディスプレイの映像は偏光ビーム・スプリッタを透過し,左目用ディスプレイの映像は偏光ビーム・スプリッタに反射することで,利用者は1カ所で左右の映像情報を受け取れる.利用者は偏光眼鏡を装着して,左右の映像を分離して受け取る.原理的には以前から知られていたものだが,このように装置として提供しているメーカは少なかったという.
手術の様子を映し出すモニタや地図の立体表示,3Dコンテンツの編集・制作などにおける採用実績を持つという.24インチ型モニタ「SDM-240」(写真3)の解像度は1920ピクセル×1200ピクセル.視野角は水平垂直ともに160°と広く,モニタからの距離に関係なく見られる点が特徴.雲台およびコントローラ,8インチ型3Dモニタ「SDM-080」のセットで300万円以下.24インチ型3Dモニタは115万円.
[写真2] レッドローバージャパンの3Dカメラ・システム
雲台,雲台の向きを変えるコントローラ,8インチ型3Dモニタ,2台の市販アナログ・カメラで構成する.
[写真3] 24インチ型3Dモニタ「SDM-240」の外観
偏光ビーム・スプリッタが映るように斜め方向から撮影した.
3Dディスプレイ方式には,偏光フィルムを用いて各ラインを左目用と右目用に振り分け,偏光眼鏡を利用して3Dに見せる「偏光眼鏡方式」,左目用と右目用に縦方向のピクセル列を振り分ける「裸眼方式(後述)」,青色,赤色の映像をモニタ上に重ね合わせ,青と赤のフィルムが張り付けられた眼鏡で見る「アナグリフ方式」,モニタが例えば120フレーム/sで動作し,左目用,右目用の画像を交互に出力し,眼鏡もモニタに連動して左右のシャッタを開閉する「シャッタ眼鏡方式」などがある.前の二つの方式には解像度が低下する,後の二つの方式には目に対する負担が大きいなどの欠点があった.その点,Redrover社の方式は解像度を落とすことなく,また,視野角を狭めることなく3D映像を表示できる.ただし,偏光眼鏡を傾けると,映像にずれが生じるという欠点がある.