地上デジタル放送がけん引する映像信号処理技術が続々製品に ―― 2008年国際放送機器展(Inter BEE 2008)

北村 俊之

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2008年11月26日

 2008年11月19日~21日,幕張メッセ(千葉市美浜区)にて,放送機器や映像機器,音響機器などに関する国際展示会「2008年国際放送機器展(Inter BEE 2008)」が開催された(写真1).主催は電子情報技術産業協会(JEITA).今回で44回目を迎える本展示会は,米国の「NAB(National Associations of Broadcasters)Show」,欧州の「IBC(International Broadcasting Convention)」と並ぶ国際展示会となっている.

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[写真1] 展示会場の様子
幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開催された.

 現在,日本でのアナログ放送は終了まで3年を切り,ほぼ全国的に地上デジタル放送が普及しつつある.そのような中で映像技術が発展し,また放送と通信の融合/連携のシナジ効果による,新たなサービスへの期待が高まっている.

●可搬性に優れた波形モニタを展示

 日本テクトロニクスは,マルチスタンダード/マルチフォーマット・ポータブル波形モニタ「WFM5000型」を展示した(写真2).本機器は,独自のラスタライザ技術と高輝度LEDバックライト液晶ディスプレイを採用しており,高精細な波形表示を行える.ガマット表示,ピクチャのサムネイル表示,表示フリーズ,コンテンツのコンプライアンス検証を行える10,000イベントのエラー・ログなど,モニタリングに必要な基本機能を備えている.16チャネルのエンベデッド・オーディオ,2チャネルのAESオーディオを標準でサポートしており,1台でビデオとオーディオのモニタリングを行えるという.小型・軽量であり,屋外での収録や中継車などといった設置スペースに制限のある場所での使用に適しているという.

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[写真2] 日本テクトロニクスの波形モニタ「WFM5000型」

●東芝と池上通信機がフラッシュROM内蔵携帯型レコーダを共同開発

 東芝は,池上通信機と共同で開発したフラッシュROM内蔵型のポータブル・レコーダ「GFSTATION PORTABLE(GFS-P10)」を展示した(写真3).本機器は,クリップ単位の録画・再生やプレイ・リストの編集・再生が行える.AC,DCの2電源に対応しているため,Vロケ運用,中継車搭載など,屋内外を問わず運用できる.ジョグ再生(±1倍速),シャトル再生(±60倍速),バリアブル再生(±2倍速)をサポートしており,ジョグ/シャトル・ダイヤルを装備したVTRと同様の操作性を持つ.RS-422-A,TBCリモートなどのインターフェースを装備しており,汎用外部コントローラからの制御も可能.オプションとして,GビットEthernetによるファイル共有も可能.

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[写真3] 東芝,池上通信機のフラッシュメモリ内蔵型ポータブル・レコーダ「GF STATION PORTABLE(GFS-P10)」

●IP伝送に利用できるH.264/MPEG-2対応デコーダ

 NECは,映像圧縮方式のH.264/MPEG-2に対応したデコーダ「VD-7700」を展示した(写真4).本製品は,入力系統としてDVB-AISとIP入力をサポートしており,従来のFPU/SNGシステムのほか,IP伝送にも利用できる.IP伝送では,同社のIPエンコーダとの組み合わせでエラー訂正機能を実現しており,低品質のIP網でも高品質の画像を伝送できるという.音声は,MPEG-2 AAC/BC,MPEG-1 レイヤ2,LPCM(SMPTE302M-2002)の各方式に対応.映像・音声の復号部とIPインターフェース部を内蔵し,コンパクトな1Uハーフ・サイズ(210mm×450mm×44mm)の筐体に収納した.なお,同社はH.264エンコーダ「VC-7700」も参考出展していた.

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[写真4] NECのH.264/MPEG-2デコーダ「VD-7700」(写真右)とH.264エンコーダ「VC-7700」(写真左)

●27倍のHDスタンダード・ズーム・レンズが登場

 キヤノンは,27倍のHDスタンダード・ズーム・レンズ「DIGISUPER 27AF」を展示した(写真5).本ズーム・レンズは,同社が開発した独自のハイビジョン対応オートフォーカス(AF)機構を搭載しており,大きくピントが外れた状態からでも素早く正確にフォーカスを合わせられるという.また,移動する被写体に焦点を合わせたまま追従することが可能.「FULL TIME AF」(常時AF)と「PART TIME AF」(一時AF)の二つのモードを備えている.それぞれのモードでAF機能のON/OFFを切り替えるACTIVE/HOLDスイッチを組み合わせることで,撮影状況に合わせた使い分けが可能.

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[写真5] キヤノンのHDスタンダード・ズーム・レンズ「DIGISUPER 27AF」

 広範囲の諸収差を補正できる独自の光学設計技術「パワーオプティカルシステム」を採用する.例えばレンズ材料にUD(Ultra Low Dispersion)ガラスや蛍石を使用することで,色収差と像面湾曲の収差補正を行っている.また,ズームやフォーカス情報などのレンズ・データを,エンコーダ,アナログ,シリアルの3種類の信号で出力可能なバーチャル出力端子を標準装備する.CG映像とライブ映像を合成するバーチャル・スタジオなど,さまざまなシステムと組み合わせて利用できる.

●ストリーム・レコーダ&プレーヤを展示

 アイベックステクノロジーは,スタンドアロンでMPEG-2 TSの録画・再生を行うポータブル型ストリーム・レコーダ&プレーヤ「SCU1200AL」を展示した(写真6).本機器は,軽量や簡易操作などの利便性を生かした,MPEG-2/H.264機器の開発・保守ツールとしての用途のほか,シームレスにストリームを蓄積するループ録画機能による運用監視や,パソコンと連動したリモート制御によるディジタル・サイネージ(電子看板)など,幅広い用途に応用できるという.

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[写真6] アイベックステクノロジーのストリームレコーダ&プレーヤ「SCU1200AL」(中央)

 最大80Mbpsの記録レートに対応しており,約11時間(24Mbps時)のHDストリームの録画・再生が可能.USB2.0ポートを装備しており,外部機器との間でストリーム・データの読み書きを行える.また,ループ録画機能により,シームレスなストリーム蓄積が可能.

●低価格のディスプレイ・テスタを展示

 アジレント・テクノロジーは,近日発売予定のディスプレイ・テスタ「U8101A」を展示した(写真7).本テスタは,1台で各ディスプレイ規格に対応したマルチフォーマット・ビデオ・パターン・ジェネレータである.モジュール方式をとっており,システム構成を柔軟にカスタマイズできる.また,カラー・ディスプレイを搭載しており,パターン選択やシーケンス設定など,量産試験に必要な機能を備えているという.

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[写真7] アジレント・テクノロジーのディスプレイ・テスタ「U8101A」

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