高速シリアルの最新計測ソリューションを披露 ―― テクトロニクス・テクノロジ・カンファレンス2008

福田 昭

tag: 実装 電子回路

レポート 2008年10月20日

 2008年10月15日,計測機器の大手ベンダ米Tektronix社の日本法人である日本テクトロニクスは,顧客向けの講演会兼展示会「テクトロニクス・テクノロジ・カンファレンス2008」を開催した(写真1).会場は,東京駅近くにある東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区)の6階フロア.事前の予想をはるかに上回る,500名近い来場者で会場は大盛況だった.

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[写真1] テクトロニクス・テクノロジ・カンファレンス2008の会場受け付け

●企業文化はダナハー流,トヨタの改善システムを導入

 講演会では,日本テクトロニクスの代表取締役社長を務める米山 不器氏が,「Innovation is Everywhere~新しいデジタルワールドへの挑戦」と題して基調講演を行った(写真2).講演ではまず,テクトロニクス・グループの概要と歴史を紹介した.テクトロニクスは1946年に米国でオシロスコープの開発企業として誕生した.日本では1966年にソニーとの合弁会社,ソニー・テクトロニクスを設立して2002年まで活動してきた.この合弁会社は,事業としては大成功を収めた.しかしテクトロニクス・グループの活動が世界各地域に広がったことなどから,各地域のテクトロニクス・グループ企業間の連携がきわめて重要になってきた.そこで2002年に合弁を解消し,米国本社の100%子会社である日本テクトロニクスとなった.

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[写真2] 日本テクトロニクスの代表取締役社長を務める米山 不器氏

 2007年11月,米国の総合エンジニアリング企業Danaher社が米Tektronix社を買収した.Danaher社は数多くの子会社群を抱えており,ディジタル・マルチメータで知られる米Fluke社もDanaherグループの一員である.Danaher社は買収した企業の名称やブランド名などは基本的にはそのまま残しており,テクトロニクス・グループも外見上はこれまでと変わらずに事業活動を継続している.ただしダナハー・グループはトヨタ自動車の改善システムを導入して生産部門だけでなく営業部門や開発部門などにも適用しており,企業文化はダナハー流に変化した(写真3).米山社長は「『なぜ』という問いを最低でも5回は繰り返す」,「現場に行け」といった言葉でダナハーの企業文化の一端を説明していた.

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[写真3] ダナハー・グループの経営理念

●高速インターフェースに対応した計測機器をアピール

 続いて米山社長は,高速シリアル・インターフェースの高速化と多様化が同時進行していることを示した(写真4).例えばUSBは最大データ伝送速度が12Mビット/sから480Mビット/sに高まり,次に5Gビット/sへ進もうとしている.シリアルATA(SATA)は1.5Gビット/sだったのが3Gビット/sに高速化し,そして6Gビット/sへと改良されつつある.PCI Expressは第1世代で2.5Gビット/sだったのが第2世代で5Gビット/sへと高速化された.さらには8Gビット/sの第3世代が次に控えている.またディスプレイのインターフェースでは,LVDS,HDMI,DisplayPortと様々な高速シリアルのディジタル・ビデオ・インターフェースが登場してきた.

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[写真4] 高速ディジタル・インターフェース規格とデータ伝送速度の一覧

 高速シリアル・インターフェースはディジタル信号だが,高速化によって実態はアナログ信号となっている.信号の波形歪みやジッタ,アイ・パターンなどを,開発エンジニアや計測エンジニアなどがチェックしなければならない.データ伝送速度が高まれば,それだけ設計余裕が減少し,開発作業が難しくなる(写真5).つまり,より高度な計測機器が要求される.

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[写真5] データ伝送速度の向上がもたらす開発課題

 またインターフェース規格に準拠した設計では,コンプライアンス試験(規格仕様を満足しているかを検査する試験)が不可欠である.これも高速化によって試験項目が増え,試験作業の負担が大きくなっている.例えばシリアルATAの第1世代(Gen1)では50項目程度だったテスト作業が,第2世代(Gen2)では3倍の153項目に増えてしまった.第3世代(Gen)では,テスト項目は250項目近くに達するという.このため,設計期間,検証期間,コンプライアンス試験期間を長期化させない計測ソリューションが求められている.

 講演では計測ソリューションを構成する機器の例として,20GHz帯域のディジタル・オシロスコープ「DSA72004型」,任意波形発生器「AWG7000シリーズ」,リアルタイム・スペクトラム・アナライザ「RSA6114A型」,20GHz帯域のアクティブ・プローブ「P7500シリーズ」を紹介した(写真6).また日本テクトロニクスが東京・品川の本社施設内に開設した計測機器の試用施設「T&M Center of Excellence」で,様々な高速シリアル・インターフェース規格に対応した計測作業を体験できることをアピールした(写真7)

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[写真6] テクトロニクスが考える計測ソリューションに,実際の製品をあてはめたところ

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[写真7] 計測機器の試用施設「T&M Center of Excellence」の概要
事前予約制だが,無料で各種の計測機器を試用できる.また日本テクトロニクスのアプリケーション・エンジニアが,計測機器の使い方をサポートしてくれる.

 展示会では,高速シリアル・インターフェースの計測ソリューションを構成する計測機器を中心に,ディジタル・オシロスコープや任意波形発生器,解析ソフトウエアなどが展示されていた(写真8).会場は大混雑で,昼休みには歩くのにも不便を感じるほどだった.

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[写真8] 展示会の会場風景
ディジタル・オシロスコープはハイエンド品だけでなく,ローエンド品も展示されていた.


ふくだ・あきら
テクニカル・ライタ/アナリスト

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