初めてのETロボコン (4) ―― そして,大会当日

大山 将城

tag: 組み込み

コラム 2008年10月 2日

 2008年9月15日,私たちのチーム「TAMA Lab.」はETロボコン2008 関東地区大会に出場しました.2回の走行のうちイン・コースはまさかの逆走でリタイヤとなり,残念ながらチャンピオンシップ大会へは進出できませんでした.連載の最終回となる今回は,関東地区大会に向けた走行戦略の決定から大会当日までの様子をレポートします.

●最終的な走行戦略の決定

 試走会IIの手応えを基に,私たちは作戦を練り直しました.チャンピオンシップ大会に進出するためには,2回の走行をともに完走する必要があります.そのため,リスクが低めでかつ良績が見込める最終的な作戦を,アウト・コース用とイン・コース用のそれぞれで決めました.その作戦とは,

  • "フルスロットルであわよくば停止作戦"
  • "ツイン・ループはキャット・ウォーク作戦"

です.

 "フルスロットルであわよくば停止作戦"とは,アウト・コースの走行戦略です.アウト・コースを構成するコース区間を,スタート~坂入り口までの「安全区間」,坂入り口~ゴールまでの「ゴール区間」に分けます(図1).そして,この二つの区間に対して,表1に示す走行方法をマッピングしました.ゴール後停止の目印は,坂の入り口の灰色マーカとしました.なぜかというと,駆動モータ出力最大時では坂出口の灰色マーカを検知するのが難しく(前回のコラムを参照),また実装としては,「坂の出口の灰色マーカ検知後に一定時間走行してから停止すること」と「坂の入り口の灰色マーカ検知後に一定時間走行してから停止すること」は,パラメータ(「一定時間」の長さ)の変更だけで対応できるためです.この作戦では,坂入り口の灰色マーカを駆動モータ出力最大時に検知できるかどうかがリスクですが,検知できなかった場合もモータ出力最大でゴールを駆け抜けるので,それなりの走破タイムが望めます.

004_f1.gif
[図1] アウト・コースにおけるコース区間の定義

区間 走行方法
安全
区間
左エッジ走行,駆動モータ出力最大
ゴール
区間
左エッジ走行,駆動モータ出力最大,一定時間後停止
ツイン・
ループ区間
1) 左エッジ走行,駆動モータ出力中程度で走行開始
2) 一つ目のループの灰色マーカでエッジ・チェンジ
3) 二つ目のループの灰色マーカでエッジ・チェンジ
4) ツイン・ループ出口の灰色マーカで駆動モータ出力最大

[表1] コース区間と走行方法のマッピング

 一方,"ツイン・ループはキャット・ウォーク作戦"とは,イン・コースの走行戦略です.イン・コースの難所であるツイン・ループは,灰色検知の確度を上げるために駆動モータの出力を落としてゆっくり走ることがポイントです.ただし,あまりゆっくり走るとボーナス・ポイントの5秒(最大10秒)が無意味になってしまいます注1.そこで,ある程度の速さで走行することになるのですが,今度は灰色検知の確度が下がります.このためツイン・ループのループ部分を除いたS字カーブ状のコース区間(ここを「キャット・ウォーク」と後付けで命名)を走行することにしました(図2).この方法だと,コースがショートカットできて灰色検知も4回なので,ツイン・ループを2回とも回る方法で必要な6回の検知に比べてリスクが低いです.

004_f2.gif
[図2] ツイン・ループ区間の攻略(キャット・ウォーク作戦)
ループを回ると,出入り口で1回ずつ,ループで2回ずつの計6回の灰色検知が必要で,灰色検知ミスのリスクが高い.しかしS字状に通り抜けることで灰色検知は合計4回となり,検知ミスのリスクが減らせる.

 注1;ツイン・ループなどの難所を攻略すると「ボーナス・タイム」がもらえる.競技の勝敗は,実際の走行タイムからボーナス・タイムを差し引いた「リザルト・タイム」で決定される.ツイン・ループの片方のループを回ると5秒,両方のループを回ると10秒のボーナス・タイムがもらえるが,ツイン・ループを迂回するコースの走行よりも10秒以上かかってしまうようであれば,難所を避けて迂回したほうがリザルト・タイムが良いことになる.

 イン・コースを構成するコース区間は,スタート~ツイン・ループ入り口までの「安全区間」,「ツイン・ループ区間」,ツイン・ループの出口~坂入り口までの「安全区間」,坂入り口~ゴールの「ゴール区間」とします(図3).各区間の走行方法は表1の通りです.

004_f3.gif
[図3] イン・コースにおけるコース区間の定義

 これら二つの作戦は,コース区間や走行方法で共有できる部分が多く,実装もシンプルです.

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