モデルと走行性能ついに一致? チーム「あずまひろしはじめました」も2冠 ―― ETロボコン2008 関東地区大会
2008年9月13日~15日,工学院大学 新宿キャンパス(東京都新宿区)にて,小型自走式ロボットの競技会「ETロボコン2008 関東地区大会」が開催された(写真1).関東地区は130の参加チームをA~Cのブロックに分け,ブロックごとに1日ずつ競技会を開催した.このうちCブロックの競技会では,チーム「あずまひろしはじめました(東洋ソフトウェアエンジニアリング)」が,モデル部門と競技部門の両方で1位を獲得した(写真2).両部門とも1位となるのは,東海地区大会のチーム「ADoniS」に次いで2チーム目(東海地区大会の様子はこちらを参照).
[写真1] 関東地区大会の様子
工学院大学 新宿キャンパス(東京都新宿区)にて開催された.会場となったアトリウムは天窓から外光が入ってくるため,光の状況は多少なりとも天候に左右される.Cブロックが開催された15日の天気は曇りで,光の状況は比較的安定していたようだ.
[写真2] 難所を攻略して喜ぶチーム「あずまひろしはじめました」
第2走目.2周ともツイン・ループを攻略し,ゴール後停止を見事に決めた.生後10カ月の赤ちゃんも名札を付けて,立派なチーム・メンバとして参加していた.
●なぜか敬遠? 新ショートカット
走行タイムを競う競技部門では,実際に走行したタイムから難所攻略などで獲得した「ボーナス・タイム」分を引いたタイムが競技結果となる.このため,ボーナス・タイムを獲得しようと「ゴール後停止」や「ツイン・ループ」に挑戦するチームは多く,また成功するチームも少なくなかった.ところが,なぜか「新ショートカット」に挑戦するチームは少なく,成功するチームとなるとめったに出ない(写真3).
[写真3] 新ショートカットに果敢に挑戦したが...
チーム「アクティブウィングRC(富士通ラーニングメディア)」の走行体は,ショートカットの入り口を検知するまではよかったが,点線から外れ,止まってしまった.
昨年までのショートカットはゆるやかな曲線だったため,ショートカットの入り口から出口までを突っ切ることが可能だった.しかし,新ショートカットは点線がうねっており,またゲートが設置されているため,ショートカットの点線を正確にトレースしなければ攻略できない.「攻略して5秒のボーナス・タイムを獲得するより,素直にコースに沿って走ったほうがメリットが大きい」と考えるチームが多かったようだ.
●ワークショップでモデルを議論
競技会終了後に,ETロボコン2008の審査委員会が主催するモデルワークショップが開催された.内容はブロックごとに異なっていたようだが,Cブロックのワークショップでは,クラス図をどのように書けばよいか(そもそも何のために書くのか)や,ユース・ケース図でよく見られた間違い,デザイン・パターンの使い分け,PID制御の使い方などについて審査委員が解説した(写真4).そのほか,参加チーム間で「あのモデルはどうやって作成したのですか?」,「PID制御で走行性能はどれくらい向上しましたか?」などの質疑応答が行われた(写真5).
[写真4] PID制御について語る本部審査委員の近政 隆氏(サイバネットシステム)
[写真5] 参加チームからの質問に答えるチーム「科学の妖精(聖望学園高等学校科学部)」
「指導者がいない中で,どうやってモデルを作成したのですか?」の質問に「気合いと根性で作りました」と回答し,会場を沸かせた.
●バランスの良いチームがチャンピオンシップ大会に出場
ETロボコン2008は,設計モデルと競技結果のそれぞれに点数を付け,モデル部門と競技部門の順位を確定する.11月に開催されるチャンピオンシップ大会には,各地区大会(関東地区では各ブロック)から選抜された上位6チームが出場する.モデルと走行結果の両方に優れたチームを選抜するため,審査委員会はモデルと走行結果の成績を0~1の範囲の得点に置き換え,モデルと走行結果の調和平均をとって上位チームを決定している(写真6).
[写真6] モデルと走行結果どちらも優秀なチームをチャンピオンシップ大会に選出
二つの成績を単純に足して2で割る「相加平均」だと,どちらかの成績が良ければ上位入賞できてしまう可能性がある.(2×モデルの成績×走行成績)/(モデルの成績+走行成績)という「調和平均」をとることにより,モデルと走行の両方で良い結果を出したチームが選出できる.
関東地区大会 Cブロックでは,表1の6チームがチャンピオンシップ大会の出場権を獲得した.ETロボコン2008の地区大会は,9月20~21日に行われる関西地区大会で最後となる.各地区大会で選抜されたチームは,2008年11月19~21日,パシフィコ横浜(横浜市中区)にて開催されるチャンピオンシップ大会で戦いの火花を散らす.
順位 | チーム名 | 所属 |
1位 | あずまひろしはじめました | 東洋ソフトウェアエンジニアリング |
2位 | 田町雑伎団 | オージス総研 |
3位 | GALAPAGOS | (個人) |
4位 | そふとMEN | (個人) |
5位 | チームチャナルート | エヌアイデイ 通信1部 |
特別賞 | 蕨レーシングチーム'08 | 沖通信システム |
[表1] モデル部門と競技部門の総合成績(関東地区大会 Cブロック)
順位 | チーム名 | 所属 |
1位(エクセレント・モデル) | あずまひろしはじめました | 東洋ソフトウェアエンジニアリング |
2位(ゴールド・モデル) | 蕨レーシングチーム'08 | 沖通信システム |
3位(シルバー・モデル) | GALAPAGOS | (個人) |
[表2] モデル部門の結果(関東地区大会 Cブロック)
順位 | チーム名 | 所属 |
1位 | あずまひろしはじめました | 東洋ソフトウェアエンジニアリング |
2位 | 田町雑伎団 | オージス総研 |
3位 | チームテンプら | テンプスタッフ・テクノロジー |
[表3] 競技部門の結果(関東地区大会 Cブロック)