MATLABなどのシステム・レベル・ツールやマルチコア関連のデモに注目集まる ―― 45th Design Automation Conference
●マルチコア対応の開発環境が続々
マルチコア技術に関する業界団体であるMulticore Associationは,マルチコア向けC/C++プログラミングの指針をまとめるためのMulticore Programming Practices(MPP) Working Groupを発足し,第1回の公開ミーティングを開いた(写真12,写真13).Multicore Associationは,マルチコア・システム,仮想化,通信,リソース管理,タスク管理,デバッグ,メソドロジなどの指針をまとめるために活動している.このうち,短期的(Short-Term)なメソドロジについてのワーキング・グループがMPPである.
長期的(Long-Term)なメソドロジとしては今後,CやC++などに代わる新しい並列処理言語の開発などを考えていくという.日本では,OS/ソフトウェア開発ツール・ベンダのイーソルがMulticore Associationに参加している.Multicore Associationは2005年11月に発足した.
英国Imperas社は,オープンでフリーの仮想プラットホーム環境「OVP(Open Virtual Platform)」についての展示を行った(写真14).OVPは,命令セット・シミュレータとシミュレーション用のライブラリなどで構成される.OVPを利用すると,実際にLSIを製造する前にソフトウェアのデバッグを開始できる.こうした環境をオープンかつフリーで提供することにより,仮想プラットホームの標準環境にしたいという.また,本仮想プラットホームはマルチコア用のソフトウェア開発にも利用できる.
同社は2006年に創業した.現在OVPを利用した,機能検証などが行えるソフトウェア開発環境を開発中という.
米国CriticalBlue社は,ARMコアで動作するソフトウェアのオブジェクト・コードから,処理性能を高速化するために複数のコプロセッサのRTL記述とコプロセッサのオブジェクト・コードを生成できるソフトウェア「Multicore Cascade」のデモンストレーションを行った(写真15).CriticalBlue社は従来,ソース・コードに手を加えることなくオブジェクト・コードを解析し,処理性能を見積もったり,コプロセッサのRTL記述やオブジェクト・コードを生成できるソフトウェア「Cascade」を提供していた.今回,複数の異なるコプロセッサを生成できるようにした.
Multicore Cascadeは,ソフトウェアのブロックをどのコプロセッサに割り当てるかを選択できる.このとき,理想的な並列処理を行った場合の処理時間を表示する.例えば,ARM用ソフトウェアの性能を,複数のコプロセッサも含めて最適化する際に利用できるという.
●最先端プロセス向けにレイアウト・ツールの性能が向上
Mentor Graphics社は,DRC(Design Rule Checking)やLVS(Layout Versus Schematic)を行うレイアウト検証ツール「Calibre」と配置配線ツール「Olympus-SoC」の連携を強化することを表明した(写真16).
65nm,45nm,32nmとプロセスが微細になっていくにつれて,配線の形状だけでなく,DFM(Design for Manufacturability)を考慮した複雑なDRCを行う必要がある.しかし,配置配線ツールから出力したGDS IIフォーマットなどのレイアウト・データをCalibreに入力し,スクリプト・ベースでDRCを実行する従来の手法では,作業効率が悪かった.今回,Olympus-SoCとCalibreの連携が強化され,Olympus-SoC上から1クリックでDRCが行えるようになった.
Olympus-SoCは,2007年6月にMentor Graphics社が買収した旧Sierra Design Automation社の配置配線ツールである.消費電力や温度,電圧などのさまざまな条件を加味して最適な配置配線が行えるという.
米国Extreme DA社は,複数の条件(Multi-mode/Multi-corner)について,統計的タイミング解析(SSTA:Statistical Static Timing Analysis)を行えるソフトウェア「GoldTime MXO」の展示を行った(写真17).
複数の条件に対するタイミング解析では従来,それぞれの条件について個別に解析を行って修正しながら最適化する必要があった.GoldTime MXOは競合のタイミング解析ツールと比べて処理速度は5倍に,メモリ量は1/4で済む.また,複数条件を同時に解析しているという.これにより,プロセスや温度,電圧など,複数の条件を考慮して配置配線の最適化を行いやすくなった.