恒例のソフトウェア・テスト夏合宿,清流に臨む観光旅館で演習漬け ―― WACATE 2008夏
2008年6月14日~15日,あきる野市自然休養村 山渓(東京都あきる野市)にて,ソフトウェア・テストに関する若手技術者向けのワークショップ合宿「WACATE(Workshop for Accelerating CAdet Testing Engineers)2008夏」が開催された(写真1).「組み込み系」や「エンタープライズ系」,「Web系」など,ソフトウェア開発やソフトウェア・テストに携わる約40名の技術者が集まり,演習漬けの2日間を過ごした.
本合宿はそもそも,"運動部の夏合宿"のような演習詰め込み式の強化合宿を目指している.そのため,あらかじめ参考書籍が提示され,参加者に対して事前に書籍を参照したり,当日持ち込むことを勧めていた(写真2).
●「納期は明日」,実践的なシチュエーションでテスト設計を学ぶ
今回の合宿の目玉は,1日目の午後いっぱいを使って行うテスト設計演習である.あらかじめ実行委員会が決めた5~6人ずつの班に分かれ,「あなたがたは,いきなり集められた初対面の人たちです.今からテスト・チームとしてテスト・ケースを作成してもらいます」というシチュエーションのもと,与えられた製品仕様書に基づいてテストを設計する(写真3).個人の作業ではなく,あくまでもチームとして作業に取り組むところが,今回の演習のポイントになっている.
演習は,「チーム・ビルディング」,「仕様分析」,「テスト計画(テスト戦略)」,「テスト設計」,「テスト実装」の5ステップに分けられている.各ステップの成果物として提出するドキュメントが決まっており,ドキュメントを提出してステップ終了と認められれば次のステップに進むことができる.この日の演習時間は13:30~18:45の約5時間.実際に各班が成果発表を行うのは2日目だが,「18:45を過ぎると残業になります」と,あらかじめ実行委員会からけん制が入っていた.
シチュエーションとしては「テストに使える日程は3日間程度」,「明後日からテスト実行を行う予定」,顧客の要望としては「全てを網羅していなくて構わないから,できる限り効果のあるテストを」という設定だった.しかし,成果物を提出するというプレッシャのためか,各班とも進捗は遅れぎみだった.しかも,途中に特別ゲストによるミニ・セッションが入った(実は実行委員会の計画通りである)こともあり,演習時間終了時には「テスト設計」まで進んだ班が一つ,「テスト計画」まで進んだ班が一つ,残りの三つの班は「仕様分析」までしか到達していなかった(写真4).
講師を務めたテスト・コンサルタントの西 康晴氏(電気通信大学 講師)に各ステップの時間配分の目安をたずねたところ,例えば「チーム・ビルディングに1時間,仕様分析に1.5時間,テスト計画に0.5時間,テスト設計に2時間,テスト実装に0.5時間」などになるという.「いちばんポイントになるのが仕様分析なので,ここには時間をかけます.それからテスト設計も,テスト計画を随時修正しながら行う作業になるので,時間がかかります.テスト実装は,テスト設計さえできてしまえば機械的な作業になるので,ここには時間をかけないように作業を考えます.チーム・ビルディングは,本当はもっと時間をかけたいところですが,5時間という制約の中で実施する場合はやむを得ず削ります」(西氏).
演習の中の"割り込みタスク"という位置付けだった西氏の講演「テストコンサルタントを目指してみよう」だが,テスト・コンサルタントに必要なスキルや業務内容について具体例を含めて解説しており,興味深い内容だった(写真5).
本ワークショップ合宿は,秋川渓谷の渓流沿いに立つ旅館で行われた(写真6).演習後は屋外でバーベキュ・パーティが行われ,参加者はその後の"残業"に備えつつも楽しく夕食を囲んでいた(写真7).
関連リンク
・インタビュー:「自分はできる」と思っている人にこそ参加してほしい ――参加者が語る,若手向けテスト技術ワークショップ「WACATE」の魅力