Intel社の低電力Atomプロセッサを搭載した組み込みCPUボードが続々 ―― 第11回 組込みシステム開発技術展(ESEC)レポート

組み込みネット編集部

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レポート 2008年5月15日

 2008年5月14日~16日の3日間,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,組み込みシステムに関する展示会「第11回 組込みシステム開発技術展(ESEC)」が開催された.初日である14日の午前中はあいにくの雨天だったが,それでも展示会場の受付にかなりの列ができるほど来場者は多かった.展示については,米国Intel社が2008年3月に詳細を明らかにした低消費電力プロセッサ「Atom」を搭載した組み込みCPUボードや開発用ボードが多数展示されていた点が目を引いた.

●インテルのブースに採用事例が集結

 インテル(Intel社の日本法人)は,同社の展示ブースの中央にAtomプロセッサのデモンストレーション・コーナを設け,採用例の多さをアピールした.Atomとは,携帯機器や組み込み機器向けに開発された小型で消費電力の低いx86プロセッサである.45nmのHigh-K CMOSプロセスで製造されており,稼働状況に応じて細かく消費電力を管理するDeep power down(C6)という技術を採用している.また,ハイパースレッディング(マルチスレッド処理)機能も備えている.

 デモンストレーション・コーナには,クラリオンの携帯型インターネット端末「MiND(Mobile Internet Navigation Device)」,松下電器産業Ultra-Mobile PC「タフブック」,NECのタッチパネル・ディスプレイ一体型パネル・コンピュータ「12PNC」,台湾Nexcom International社のキオスク/医療向け端末「MTC2100」,PFUのCOM Express準拠CPUボード「AM105 モデル110」,台湾Portwell社の車載インフォテインメント・システム「PCS-8230」,ソフィアシステムズの携帯型インターネット端末/携帯型情報端末向けの開発環境「PEARTREE」が展示されていた(写真1)

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(a) クラリオンの「MiND(Mobile Internet Navigation Device)」


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(b) 松下電器産業の「タフブック」


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(c) NECの「12PNC」


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(d) 台湾Nexcom International 社の「MTC2100」


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(e) PFUの「AM105 モデル110」


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(f) 台湾Portwell社の「PCS-8230」


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(g) ソフィアシステムズの「PEARTREE」


[写真1] デモンストレーション・コーナのAtom搭載機器

 また,CPUボードの展示コーナが併設されており,ここにはAtomプロセッサを搭載した台湾Advantech社のCPUボード「SOM-5775」,オムロンの産業用システム向けCPUボード「OMRON E50」,ダックスのタッチ・パネル・インターフェース付き組み込みCPUボード「HFMB-22」,アイ・シー・エーのMini ITX準拠CPUボード「ICA-100」などが展示されていた(写真2)

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(a) ショウケース


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(b) 台湾Advantech社の「SOM-5775」(手前の型名は誤記)


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(c) オムロンの「OMRON E50」


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(d) ダックスの「HFMB-22」


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(e) アイ・シー・エーの「ICA-100」

[写真2] Atom搭載ボードの展示コーナ

 インテル自身もAtomプロセッサとそれに対応するチップセット(SCH:System Controller Hub)を搭載した評価ボードを用いた,タッチ・パネルを利用した家庭用機器制御システムのデモンストレーションを行った(写真3)

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[写真3] 家庭用機器制御システムのデモンストレーション・システム

 さらに同社は,今年(2008年)中に発表されると言われているTolapai(開発コード名)のデモンストレーションも行った(写真4).Tolapaiは,x86アーキテクチャのCPUコア,周辺回路,パケット処理のアクセラレータ回路(QuickAssist技術と呼ぶ),セキュリティ処理回路などを集積したマイクロコントローラである.デモンストレーションでは,VPN(virtual private network)にトラフィックを流したときのIPSec暗号化処理について,アクセラレータ回路を使用した場合と使用しなかった場合のCPUにかかる負荷を比較した.ソフトウェアで暗号化した場合のCPUの負荷は70%程度であったのに対して,アクセラレータ回路で暗号化すると10%程度になった.

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[写真4] Tolapaiを利用したIPSec暗号化処理のデモンストレーション

●Core 2 Duoボードと消費電力を比較

 PFUは,同社のブースでもCOM Express準拠のAtom搭載ボード(AM105 モデル110)を展示した(写真5).工作機械や医療機器,計測機器などへの組み込みを想定している.COM Expressは,PICMG(PCI Industrial Computer Manufactures Group)が制定した組み込み向けCPUモジュールの標準規格.本CPUボードの外形寸法は125mm×95mmで,COM Express Basicフォームファクタに従っている.

 本CPUボードは,1.6GHz動作のAtomプロセッサ 「Z530」,グラフィックス機能内蔵のチップセット「SCH US15W」,533MHz動作のDDR2メモリを搭載した最大1GバイトのSO-DIMMなどを搭載する.CRTディスプレイの最大解像度はSXGA(1280×1024)に,LCD(液晶ディスプレイ)はWXGA(1366×768)に対応する.表示色数は1677万色.PCI ExpressやPCIなどの拡張インターフェース,EthernetやUSB,シリアルATA,IDE,オーディオ,CRT,LCD,SDVO,SMBus,I2C,GPIO,ブザーなどの入出力インターフェースを備える.

 デモンストレーションでは,本CPUボードと,Core 2 Duoプロセッサを搭載した同社のCOM Express準拠CPUボード「AM120 モデル110」の消費電力を比較した.AM120の消費電力が30W程度だったのに対して,AM105は12W~13Wと低かった.また,AM120は空冷ファンを使用していたが,AM105は使用していなかった.

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[写真5] COM Express準拠ボードで消費電力などを比較

●70mm四方のQseven規格ボードが登場

 ジェピコのブースでは,ドイツcongatec社のAtom搭載COM Express準拠ボード「conga-CA」を紹介していた(写真6).ただし,展示会初日の14日の時点では実際のボードは到着しておらず,本CPUボードの写真を紹介するにとどまった.外形寸法は95mm×95mmで,COM Express Compactのフォームファクタに従っている.

 本CPUボードは,1.6GHz動作のAtomプロセッサ「Z530」または1.1GHz動作の「Z510」のほか,チップセット「SCH US15W」,1Gバイト以上のDDR2メモリなどを搭載する.また,GビットEthernetやシリアルATA,EIDE,PCI,USB,I2C,SDIOなどのインターフェースを備える.電力制御についてはACPI(advanced configuration and power interface)3.0に対応する.消費電力は標準3W以下,最大5W.OSは,Windows Vista/XP/XP Embedded/CE 6.0,およびLinux,QNXをサポートする.

 これとは別に,外形寸法が70mm×70mmと小さいcongatec社製のAtomプロセッサ搭載ボードも展示されていた.このCPUボードは,congatec社,Grossenbacher Systeme社,スウェーデンHectronic社,台湾IEI Technology社,ドイツMSC Vertriebs社,台湾Portwell社,イタリアSeco社が策定しているQsevenという規格に準拠している.2008年4月に規格がまとまり,それに伴ってcongatec社が本CPUボードを公開した.Qsevenに準拠したボードは,主にサブボードとして利用されるという.

 本ボードは,PCI ExpressやシリアルATA,USB 2.0,GビットEthernet,SDIO,LVDSなどのインターフェースを備えている.

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[写真6] congatec社のCOM Express準拠ボードとQseven準拠ボード(実ボードの到着は間に合わず,写真を展示)

●Mini ITXボードや開発環境などの展示も

 アイ・シー・エーは,台湾VIA Technologies社Mini ITX規格に準拠するAtom搭載ボード「ICA-100」を展示した(写真7).外形寸法は170mm×170mm.1.1GHz動作または1.6GHz動作のAtomプロセッサを搭載する.DDR2メモリ(PC2-3200,PC2-4300)を搭載したSO-DIMMのスロットを一つ備える.GビットEthernetやIDE,CompactFlash,サウンド,USB 2.0,キーボード/マウス,アナログRGB,LVDS,テレビ出力(コンポーネント,S-VIDEO,コンポジット),SDIOなどの入出力インターフェースを持つ.また,拡張バスとしてPCI Expressに対応する.OSはWindows XP.

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[写真7] アイ・シー・エーのMini ITX準拠ボード

 アドバネットもまた,同社の関連企業である米国EuroTech社(旧Applied Data Systems社)が開発したAtom搭載の評価ボード,および同ボードの開発環境「CATALYST DEVELOPMENT KIT」を紹介した(写真8).この開発環境には,オーディオCODECや80Gバイトのハード・ディスク装置,PCI Expressカード・スロット,Mini-PCI Expressカード・スロット,SDIOカード・スロット,USB 2.0ポート,シリアル・ポートなどを搭載したボードが含まれる.また,10.4インチ,800ドット×600ドットのLCD(液晶ディスプレイ)も付属する.対応OSはWindows XP/Embedded XP/Vista/Embedded CE 6.0,Linuxなど.

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[写真8] アドバネットのCATALYST DEVELOPMENT KITによるデモンストレーション

 ドイツKontron Embedded Computers社は,1.1GHz動作または1.6GHz動作のAtomプロセッサを搭載したCOM Expressボード「nanoETXexpress-SP」を展示した(写真9).外形寸法は55mm×84mm.消費電力は7W以下(12V動作時).256Mバイト~4GバイトのフラッシュROMディスクを搭載する.インターフェースとして,LVDSインターフェースやSDIOインターフェース,シリアルATAインターフェース,USBインターフェース,PCI Expressインターフェース(x1レーン),ギガビットEthernetインターフェースなどを備える.対応OSはWindows XP/XP Embedded/CE,Linux,VxWorks.

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[写真9] Kontron社のAtom搭載COM Expressボード

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