新人技術者のためのロジカル・シンキング入門(3) ―― 「必要とされる設計書」の作り方
ここでは設計書を作成する際のポイントについて述べる.新人研修などではきちんと設計書を作成してからコーディングを行うように指導されるが,実際の製品開発では設計書の作成が軽視されていたり,きちんと保守されていないケースがある.本稿では設計書に求められる要件について説明する.また,設計書の表現形式として,ブロック図やフローチャートを利用する際の問題についても議論する. (編集部)
技術解説・連載「新人技術者のためのロジカル・シンキング入門」 記事一覧
第1回 いかにしてバグの原因を突き止めるか
第2回 プログラミングにおける良いデータ構造
第3回 「必要とされる設計書」の作り方
第4回 直したバグがゾンビのごとく復活する
第5回 ソース・コード規約の作り方
第6回 ハードウェア基礎の基礎
第7回 「ひたすら流すだけのテスト」にさよなら
第8回 CPUの演算量をひたすら削る
第9回 メモリ転送速度の最適化設計
第10回 「工学の知」を実務に生かす
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Cさんはある携帯音楽プレーヤの開発に携わっています.携帯音楽プレーヤは,最近話題の人気商品であり,各メーカは開発にしのぎを削っています.そんな中,Cさんもここ1年ばかりソフトウェア開発に奮闘してきました.
「仕様が定まらない」,「開発を始めるとハードウェアが動かない」,「機能ブロックを結合すると,システムがハングアップしたり,音が出なくなったりする」など,お決まりのトラブルをくぐり抜けてきたCさんにも,開発がひと段落して,ホッとひと息つく時間ができたようです.
...と思っていたら,上司から以下のような要望が出てきました.「1次製品の開発中のバグは,その数の多さもさることながら,バグが報告されてから解決するまでに時間を費やしたことが問題視されている.2次製品の開発に向けて,各機能ブロックの担当者には,設計レベルからの見直しが必要なのではないか」.
そこでCさんは,各機能ブロックの担当者と連絡をとり,現状,どのような資料が残っているのかを調べてもらうことにしました.そこで判明したのは,携帯音楽プレーヤ全体の仕様書や,各機能を最初に割りふる際に議論した議事録のたぐいは残っているのに,設計書と呼べるものがほとんどないことでした.「設計書? 仕様書なら見たことあるけどね」と,別段気にもとめないツワモノも数多くいました.一部の機能については,コーディングの前にフローチャートをまとめた人がいるということだったので,それを見せてもらいました.しかし,その中身は現在の構成とはかなり異なるものでした.というのは,途中で加えられたバグの修正や仕様変更がそのフローチャートに反映されていなかったのです.
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