富士通研究所,IDB-1394やWiMAX,品質保証技術などの成果をアピール ―― 富士通研究所 研究開発戦略発表会

組み込みネット編集部

 2008年4月4日,富士通の研究・開発子会社である富士通研究所は報道関係者とアナリスト向けに,同社の研究・開発戦略を発表した.同社は,システム技術としてリスク・マイニング,ソフトウェア検証技術,システム可視化技術,運用管理データベースなどの研究・開発に,インフラ技術としてはWiMAX,車載ネットワーク,ナノテクノロジなどに注力するという.さらに,中長期的な新しい事業として,グリーンIT技術の研究・開発にも力を入れる.高効率デバイスや低消費電力ネットワーク,省エネ・データ・センタなどの開発により,CO2排出量の削減を目指す.

 今回,開発戦略の発表と同時に,注力技術の展示・発表も行われた.

 富士通研究所は,ソフトウェア&ソリューション研究所,ITシステム研究所,ネットワークシステム研究所,ストレージ研究所,システムLSI研究所,シリコンテクノロジ研究所,基礎技術研究所といった八つの研究所と,画像・バイオメトリックス研究センタ,ナレッジ研究センタという五つの研究センタを有している.従業員は,日本国内が1,450名,海外が190名(米国,中国,欧州).研究予算は約400億円.

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[写真1] 株式会社 富士通研究所 代表取締役社長 村野 和雄 氏

● 後部座席でカーナビが見れる車載ネットワーク技術を開発

 同社は,IDB-1394を使った情報系車載ネットワークの研究・開発を手がけている.IDB-1394とは,IEEE 1394規格がベースとなっている車載ネットワークの規格である.DVDやカーナビの映像データ,制御信号などを多重化して伝送できる.転送速度は400Mbps.リング,ツリーなどのさまざまなネットワーク・トポロジに対応できる.

 富士通は,MB88388AというIDB-1394用LSIを2007年12月にサンプル出荷している.このLSIは,CODEC,ディジタル・コンテンツ保護機能(DTCP:Digital Transmission Contents Protection),IDB-1394ネットワーク・コントローラを内蔵する.CODECには,富士通研究所が開発したSmartCODECが採用されており,映像情報を2~3ms(ミリ秒)の遅延(従来比1/200の低遅延)で1/3のサイズに圧縮・復元できる.また,MPEGのCODECでは不可能だったカーナビ映像の伝送も行える.

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[写真2] 車載専用LSI MB88388Aの外観

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[写真3] IDB-1394とMB88388Aによる車載ネットワークの構成例

● 20kgの世界最小WiMAX基地局を開発

 WiMAXは,中長距離向けの次世代無線技術である.現在,規格として固定通信向けのIEEE 802.16-2004と,それに基地局移動についての仕様を加えたIEEE 802.16eが存在する.IEEE 802.16-2004の伝送速度は最大74.81Mbps,IEEE 802.16eは最大21Mbpsであり,2009年から商用利用を開始する予定.

 富士通は,WiMAX用のRFモジュールも開発しているが,固定基地局装置も開発している.同社の無線固定基地局装置は独自の高効率増幅技術を導入し,容積20l(リットル),重量20kgを実現している.この固定基地局は,WiMAXサービス・プロバイダであるUQコミュニケーションズが採用しているという.

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[写真4] WiMAX無線基地局 BroadOne WX3000

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[写真5] WiMAXのRFモジュール

● Webアプリケーション向け品質保証の基礎技術を開発

 Webアプリケーションを開発するにあたって,工数がかかるのはテストである.富士通研究所は,Webアプリケーションのテストを自動化して,ソフトウェアの品質保証を行える基礎技術を開発した.

 テストは,通常,「人手でテスト・シナリオやテスト・データを作成する」→「テストを実行する」→「結果を確認する」という流れになる.人手によるテスト・シナリオやテスト・データの作成には膨大に時間がかかっており,テストの実施ミスや確認ミスも発生しうる.テストが完了して稼動しているシステムでも,1,000ステップあたり0.122件の障害がある,と言われている(独立行政法人 情報処理推進機構の調べ).

 同社の品質保証技術は,コンピュータが処理できる定型の業務仕様定義書からテスト・シナリオやテスト・データを自動生成し,業務仕様どおりに動作するかどうかを網羅的にテストし,テスト報告書を出力する. Webアプリケーションの機能を,画面処理,業務処理,データベース処理の三つに分割し,業務処理の部分のみをテストする(つまりテスト対象を削減し,業務処理に絞ってテストを行う).

 このテストには形式検証技術が使われている.数学的手法を用いてソフトウェアの正しさを保証している.業務系アプリケーションのプログラムを対象とする形式検証技術は珍しい.

● データベースを仮想的に束ねる

 システムにかかわる費用の割合は,開発が30%,運用・保守が70%と言われている.同社が開発したITシステムの統合技術「統合CMDB(Configuration Management Database)」は,ITシステムの構成変更や増設,セキュリティのパッチ適用など,運用・保守作業を支援する技術である.

 企業の中にはさまざまなデータベースが存在する.社内のファイルやプリンタなどのリソースにアクセスするためのデータベースや顧客データベース,商品データベースなど,さまざまだ.また,1社が開発したデータベースを使っているとは限らない.複数のベンダのデータベースを同時に使用している場合もある.

 統合CMDBは,既存のデータベース間の情報を突き合わせ,データの整合性をとり,複数のデータベースを仮想的に束ねる(フェデレーション).これにより,横断的な検索が可能となる.大企業向けに開発されており,数千のデータベースを仮想的に統合することも可能である.

 本技術では,既存のデータベースにデータ変換モジュール・アダプタを追加する.各データベースに格納されているデータは,共通データ形式のRCXMLで統合CMDBに転送され,データベースの整合化が行われる.この統合CMDBの標準仕様の策定は,IBM社など6社が共同で行っている.

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