壊して,演じて,半導体を知る ―― ハイテク・ユニバーシティ in 茨城

組み込みネット編集部

tag: 半導体

レポート 2008年4月 4日

 2008年3月25日~26日,日立ハイテクノロジーズ 那珂事業所およびルネサス テクノロジ 那珂事業所(いずれも茨城県ひたちなか市)にて,高校生向けの教育プログラム「ハイテク・ユニバーシティ in 茨城」が開催された(写真1).約30名の県内の高校生が集まって,実習や講義,討議,工場見学などを体験した.実習では携帯電話を壊して取り出したLSIの断面を電子顕微鏡で観察したり,1人1人がゲート素子の役割を果たして加算器の動作を体感した.主催は,半導体や液晶の製造装置,および材料などに関する国際的な業界団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)

 ハイテク・ユニバーシティとは,SEMIが2001年から主に米国内で行ってきた教育プログラムである.一般の高校生に半導体に関する好奇心や知識を高めてもらう目的で実施しており,実施回数は累計で約30回に達する.受講者の累計は約2,000人.米国におけるアンケート結果によると,受講者の約65%が「以前より理数系の楽しさを知った」と回答しているという.

 日本でも,理数系離れなどの危機意識を受けて,半導体に興味をもってもらおうという狙いで,ハイテク・ユニバーシティを開講することとなった.2007年3月,東京エレクトロン九州 合志事業所(熊本県菊池郡合志町)において,国内における1回目のハイテク・ユニバーシティが開催された.今回の開催が2回目となる.

 今後の予定としては,年1回程度,春休みの時期に開催していきたいという.また,会場や講師,教材,備品,資金などの面で協力してもらえる企業や団体を広く募集している.

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[写真1] ハイテク・ユニバーシティの様子
お茶やお菓子がふるまわれ,リラックスした雰囲気で開催された.

● 携帯電話を壊して学ぶ

 1日目には,半導体に関する講義や実習を行った.まず,日立ハイテクノロジーズの走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を使って,携帯電話に内蔵されているLSIの断面を観察した.最初に電子顕微鏡についての講義が行われた後,グループごとに手袋とペンチを使って携帯電話を壊し(写真2写真3),基板から引きはがしたLSIをさらに小さく折り取って,電子顕微鏡にセットした.

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[写真2] 携帯電話のカバーを壊しているところ
この日のために用意された「携帯電話破壊マニュアル」に沿って,グループごとに支給された携帯電話を破壊(分解)した.

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[写真3] バラバラになった携帯電話
観察対象であるLSIは既にはぎ取られている.

 最初は恐る恐るペンチを扱っていた生徒たちも次第に力を込めてバリバリと携帯電話を壊し始め,うまくはがれたときには歓声や拍手が湧いた.電子顕微鏡による観察にも熱心に取り組んでいた(写真4)

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[写真4] LSIの断面を電子顕微鏡で観察しているところ
順番に電子顕微鏡を操作して,むき出しになった配線などを観察した.

● ゲート素子になって半導体を体感する

 1日目の午後には,半導体に関する講義の後,生徒1人1人が「ANDゲート」,「ORゲート」,「NOTゲート」になって計算を行う人間計算機ゲームを行った(写真5).これは,巨大な回路図の各ゲート素子の上に1人1人が立って,入力された数字に基づいて各素子のふるまい通りに「0」または「1」のカードを掲げるというもの.三つのチームに分かれて計算の速さと正確さを競った.

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[写真5] 人間計算機ゲーム
カードを掲げたチームと床に置いたチームがあったが,掲げたチームのほうが圧倒的に早かった.

● 将来の進路を考える

 2日目には,半導体業界で働いている技術者が自らの仕事について語ったり,キャリア・カウンセラを講師として進路に関する討議を行ったりした.また,20~30歳代の技術者が「高校生のころはどのような仕事をしたかったか」,「なぜ現在の進路を選択したのか」,「これからの目標は何か」などについて語るパネル・セッションを行った(写真6).大半の生徒が「将来の夢」として挙げていたのは普段から身近に見聞きしている職業だったが,これまで知らなかった職業に就いた人の体験談に,生徒たちは興味深そうに耳を傾けていた.

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[写真6] 先輩技術者の話を聞く
左から,日立ハイテクノロジーズ 機械加工の海老根 章友氏,同社 機械加工の藤本 アキラ氏,東京エレクトロンFE 営業の高松 渚氏,ルネサス テクノロジ ドライエッチング担当の中原 陽一氏.海老根氏は2007年11月に開催された技能五輪国際大会のCNCフライス盤部門で,藤本氏は同大会のCNC旋盤部門で,それぞれ金メダルを獲得した.

関連リンク
・組み込みネット ニュース:SEMIジャパン,高校生を対象とした半導体製造の教育プログラムを熊本で開催

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