PHS経由でネットに接続できるEthernetアダプタのファームウェアをハック・中編 ―― LANにつないでメールの送受信と自動実行を実現

中本伸一

tag: 組み込み

技術解説 2007年11月 1日

 メールを利用する最大のメリットは,プロバイダのメール・サーバを利用できることです.自分でサーバを設置する必要はありません.メール・サーバはほとんどのプロバイダが用意しています.このメール・サーバには固定されたグローバルなIPアドレスが割り当てられているので,世界中からアクセスが可能です.また,組み込み機器がメール・サーバへアクセスする際には,ファイア・ウォールの内側から通信を開始します.これでファイア・ウォール越え問題を解決できます.皆さんも,ふだん使っていないメール・アドレスの一つを本機のメール・アドレスに割り当ててください.

 メールを利用した場合の欠点は,操作にタイム・ラグが生じてしまうということです.皆さんがメールを受信する際には,通常,5分~10分に1回程度のメールのチェックを行っていると思います.このメール・チェックの時間がそのまま操作のタイム・ラグになります.リアルタイム性が高い用途の場合は,例えば最初のメールを引き金にして専用のデータリンク・プログラムを内側から起動するという方法を採ることで,この問題に対処できます.

● メール送受信の一連の手順を実現

 メールを受信する際には,自分のユーザ名とパスワードをPOP(Post Office Protocol)サーバへ送信します.正規のユーザであると認められると,自分宛てのメールにアクセスできるようになります.また,メールを送信する場合はSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)プロトコルに従ってメールを送信することになります.

 数年前まではSMTPサーバにはユーザ認証がありませんでした.つまり,SMTPサーバを利用して誰でもメールを送信できるので,悪意のある人間が誰かになりすまして大量の迷惑メールをまき散らす,という悪行が横行していました.こうした事情から,昨今ではほとんどのプロバイダのSMTPサーバにもユーザ認証が必要となっています.

 本稿ではPOPサーバにアクセスしてメールを受信し,SMTPサーバのユーザ認証を行い,メールを送信する,という一連の手順を,本機をカスタマイズして実現します.すべてのプログラムはSilentCで書かれているので,コンソールからの操作によりソースを変更して容易にカスタマイズできます.本稿を参考に,より実用的なアプリケーションを作成していただければと思います.

● OSX-1をLANにつなぐ

 まず,本機からメールを送受信するプログラムを作成します.本稿の前編を参考に,サイレントシステムのWebサイトから必要なファイルをダウンロードして本機に転送し,telnetでSilentCが動作する環境を整えてください.

 次に,本機からメールを送受信するために,本機をインターネットに接続する必要があります.本機はもともとW-SIMを利用して手軽にインターネット接続の機能を提供する機器ですが,W-SIMを使わずに既存のLAN環境に接続することも可能です.ただし,このときはまったく別の手順が必要です.もちろん,別にもう1台の本機を用意してクロス・ケーブルで接続すれば,いつでもインターネットにつなげられるのですが,初期の実験段階ではLANに接続してメールを送信することにします.

 手順が少し複雑なので,以下の説明を見ながら一つ一つ確実に作業を進めてください.基本的には,本機のIPアドレス設定を読者の皆さんのLAN環境に適合するように変更するための手順です.

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