福岡県北九州市がカー・エレクトロニクス開発の拠点を設立

組み込みネット編集部

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レポート 2007年10月31日

 2007年7月,福岡県北九州市は,車載組み込みシステムに関する人材育成や研究開発を推進する組織「カー・エレクトロニクスセンター」を北九州学術研究都市内に設立した(写真1)

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[写真1] 北九州学術研究都市
開発総面積は約335ha(ヘクタール).そのうち,約35haの敷地(第1期事業区域の大学ゾーン)内に,三つの大学と複数棟の研究開発施設が配置されている.写真奥に見える建設中の棟は2008年7月に完成予定の研究開発施設.ここにカー・エレクトロニクスセンターが入居する予定.

 ここ数年,自動車の生産拠点が九州北部に集まってきている.2005年12月には,トヨタ自動車九州が新設したエンジン工場(苅田工場,福岡県京都郡苅田町)が竣工した.また2008年夏には,ハイブリッド車向けにユニット部品を生産する小倉工場(福岡県北九州市小倉南区,福岡県京都郡苅田町)の操業開始が予定されている.ダイハツ工業も,軽自動車の生産拡大に伴い,2008年8月の操業を目指してエンジン工場を福岡県久留米市に建設することを決定した.さらに日産自動車も,同社 九州工場敷地内に車体組み立て工場と塗装工場を新設し,2009年から稼働を開始する予定.

 このような状況下で,カー・エレクトロニクスセンターがどのような役割を果たすのか,北九州産業学術推進機構 カー・エレクトロニクスセンター 企画管理課長の清水 俊哉氏に聞いた(写真2)

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[写真2] 北九州産業学術推進機構 カー・エレクトロニクスセンター 企画管理課長の清水 俊哉氏

●カー・エレクトロニクスの拠点を目指して

 清水氏によると,カー・エレクトロニクスセンターは「自動車産業を産業振興施策の柱にしたい」という福岡県北九州市の政策の一環として設立されたという.2005年11月,北九州市と自動車関連企業,近隣の大学などが「カーエレクトロニクス拠点構想検討委員会」を立ち上げ,拠点形成に向けての課題や役割分担などを討議した.2006年8月にまとめられた本委員会の提言を受け,拠点構想の核となる推進機関として設立されたのが本センターである.

 本センターは,人材育成と研究開発の推進を目指している.人材育成については,北九州学術研究都市内にキャンパスを構える九州工業大学,北九州市立大学,早稲田大学を中心として進める.例えば,産学連携講座を設けたり,カー・エレクトロニクス分野の学科や専攻を創設することが考えられる.また,研究開発については,本センターの研究員登録制度などを活用して,自動車関連企業と大学の産学共同研究を進めてもらうことを想定している.実際に,2008年7月の新棟完成に合わせて,いくつかの自動車関連企業が北九州学術研究都市内に拠点を構えることを予定しているという.

 これまで九州に設立されている自動車関連施設の多くは組み立て工場であり,設計部門や研究開発部門は首都圏や東海地区などに集中しているのが現状である.しかし,景気回復に伴い東海地区では十分な人材が確保できない状態にある.一方,九州には工業系の大学が多く,優秀な人材を確保しやすいという.北九州市は,人材の確保の容易さをアピールして,付加価値の高い産業を地元に呼び込むことを狙っている.

●人材育成や人材交流の動きが活発に

 このほかにも,福岡県内には組み込みシステムに関連する人材育成の活動が行われている.例えば九州大学は,「九州大学 システムLSI設計人材養成実践プログラム(QUBE)」という社会人向けの講座を2005年から実施しており,ハードウェア(LSI)設計や組み込みソフトウェア設計,ハードウェアとソフトウェアの協調設計に関する教育コースを提供している.

 また,2006年4月に設立された「九州組込みソフトウェアコンソーシアム(QUEST,旧称 九州組込みソフトウェア研究会)」は,九州における組み込みソフトウェア技術者のコミュニティであり,講習会などを通して技術交流を行っている.会員数は,企業会員が54団体,個人会員が21名(2007年10月現在).さらに,開発案件を共同で受注するバーチャル組織「九州組込みフォーラム(Q's Forum)」(2005年12月設立)も,教育や人材交流を推進している(写真3)

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[写真3] 九州組込みフォーラム(Q's Forum)と九州組込みソフトウェアコンソーシアム(QUEST)の運営メンバ
左から,Q's Forumの松田 昭信氏(パナソニック コミュニケーションズ),高本 博文氏(レガートデザインコーポレーション),谷本 崇氏(宮崎情報処理センター),宮川 研司氏(福岡ソフトウェアセンター),松尾 敏弘氏(鹿島エレクトロ産業),馬場 伸一氏(九州日本電気ソフトウェア),QUESTの芦原 秀一氏(ネットワーク応用技術研究所),那須 隆志氏(マイクロコート).

 九州に限らず,地方出身の技術者の中には,できれば生まれ育った"地元"で働きたいと考える人が少なくない.しかし,地元に就職先がなければ,首都圏などに出て行かざるを得ない.また,「ビジネスの主体は首都圏,地方に回ってくるのは下請け仕事」という傾向があり,地方で働くことに積極的な意義を見出しにくい.そのため,多くの地方自治体が,地元に付加価値の高い産業を根付かせ,地域に発展させるための取り組みを進めている.

 九州では,2007年11月下旬に前述のような個々の取り組みを一つにまとめる組織「九州地域組込みシステム協議会」が発足する.設立発起人の代表は九州大学 大学院 教授の福田 晃氏.企業や大学のほか,地方公共団体や支援機関などが参加を予定している.

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