大出力電流・低発熱など,用途別に最適化した電源ICが目白押し ――第21回 電源システム展
2006年4月19日~21日,幕張メッセ(千葉市美浜区)にて,設計者・生産技術者のための総合展示会「TECHNO-FRONTIER 2006」が開催された(写真1).その中の一つとして,電源装置や電源用部品などに関する展示会「第21回 電源システム展」のようすを紹介する.会場では,アプリケーションごとに最適化した電源ICやDC-DCコンバータの展示が多く見られた.例えば,ルネサス テクノロジは,カー・オーディオ向けに大出力電流に対応し,かつノイズや発熱を抑えた電源ICを展示した.
●ノイズを抑えたスイッチング・レギュレータでオーディオ市場をねらう
ルネサス テクノロジは,カー・オーディオ向けの電源IC「R2S25404SP」を開発した.同社のブースでは,本電源ICを採用したドイツBlaupunkt社のDVDカー・オーディオ機器「Las Vegas DVD35」が展示されていた(写真2).「本電源ICの特徴は,オーディオ向けレギュレータとしてスイッチング・レギュレータを内蔵したこと」(同社の説明員).
近年,カー・オーディオではDVDなどのデータを再生するため,大きな出力電流が求められるようになっている.一方で発熱(消費電力)の問題もあるため,電力変換効率の高いレギュレータが必要となる.スイッチング・レギュレータは消費電力が低い反面,リプル(ノイズ)が発生するため,オーディオ用の電源ICとしては敬遠されがちだった.逆に,リニア・レギュレータはノイズが少ないが,スイッチング・レギュレータと比べて電力損失が大きい.そのため,リニア・レギュレータの場合はヒート・シンクを取り付けるなどの対策を施すが,これにより実装面積が大きくなってしまう.
本電源ICでは,6チャネルの出力のうちの2チャネルはスイッチング・レギュレータとしている.スイッチング・レギュレータの出力電圧は,それぞれ3.3V~9V(出力電流は1.5A)および2.0~5V(出力電流は1.0A).同社は,自動車向けにスイッチング・レギュレータ回路を最適化することで,ノイズを抑えたという.本電源ICの待機時の消費電流は,最大75μA,標準50μA.過温度や過電流,ESD(electrostatic discharge)などに対する保護回路を備えている.
サンプル出荷はすでに開始している.量産出荷は2006年第2四半期から開始する予定.
●8チャネルの独立した出力を備えたディジタル・カメラ用電源IC
NECエレクトロニクスは,ディジタル・カメラ用電源IC「μPD168801A」のデモンストレーションを行った(写真3).ディジタル・カメラでは,CCDカメラやLCD(液晶ディスプレイ),バックライト,モータなどを駆動するため,複数の電圧が必要となる.本電源ICは,独立した8チャネルの出力を備えている.チャネルごとに昇圧型,降圧型,昇降圧型,極性反転型など,各種方式に対応している(写真4).8チャネルの3チャネルはMOSFETを内蔵しており,4チャネルはMOSFETを外付けして使用する.残りの1チャネルはシリーズ・レギュレータを内蔵している.
このほか,位相補償回路や過熱保護回路などを備えている.本電源ICのスイッチング周波数は300kHz~1MHz.パッケージは,外形寸法が6mm×6mm×0.9mmの48ピンVQFN.量産出荷の開始時期は未定.
●最大出力電流30Aのパワー素子
東芝は,大出力電流DC-DCコンバータ用パワー素子「TB7004FL」を搭載した評価ボードを展示した(写真5).本パワー素子は,「DrMOS(Driver-MOSFET )」と呼ばれる規格に準拠している.DrMOSは,マイクロプロセッサ用の電圧レギュレータICに関する規格であり,米国Intel社が提唱している.スイッチング周波数や出力電流,信号などの電気的特性のほか,ピン配置やパッケージなども規定している.
本パワー素子は,二つのMOSFETとドライバICを内蔵している.出力電流は最大30A,入力電圧は最大20V.スイッチング周波数は1MHz.パッケージは,外形寸法が8mm×8mmの56ピンQFN.おもにノート・パソコンなどにおける需要を見込んでいる.現在サンプル出荷中であり,量産出荷は2006年夏ごろを予定しているという.
●コンセント経由でハイビジョン映像を出力
松下電器産業は,伝送速度が最大190Mbpsの高速電力線通信(PLC:power line communication)を利用したEthernetアダプタ「BL-PA100」を展示した.家庭などのコンセントにアダプタを差し込むことにより,コンセントの電力線経由でEthernet通信やIP電話通信が可能.利用する周波数帯は4MHz~28MHz.すでに米国で販売を開始している.
国内では,現在,この周波数帯を電力線通信で利用することが認められていない.同社は,規制が緩和されしだい,本アダプタを国内でも販売する予定(2006年の7~8月ころを想定している).
会場では,DLNA(Digital Living Network Alliance)ガイドラインに対応した再生装置(DMP:Digital Media Player)とサーバ(DMS:Digital Media Server)をアダプタ経由で接続し,サーバからダウンロードしたハイビジョン映像を流してみせていた(写真6).
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