ディジタル・テレビ放送を受信する携帯端末がお目見え ――ワイヤレスジャパン2004

組み込みネット編集部

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レポート 2004年7月29日

 2004年7月21日~23日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,無線通信技術に関する展示会「ワイヤレスジャパン2004」が開催された.本展示会では,ディジタル・テレビを視聴できる携帯端末のデモンストレーションが行われた.放送事業者のモバイル放送は,専用衛星から番組コンテンツを直接受信できる携帯端末の試作機を展示した.同社は,携帯端末向けの放送サービスを2004年10月中旬から開始する.また,三洋電機は地上ディジタル放送を受信できる携帯電話機を展示した.

●10月開始予定の携帯端末向け放送サービスをデモ

 放送事業者のモバイル放送は,2004年3月に打ち上げた専用衛星を利用する携帯端末向けディジタル・テレビ放送サービスのデモンストレーションを行った.東芝セミコンダクターのディジタル放送受信用チップセットを搭載した試作機に,実際に衛星から受信した映像を表示した(写真1).本チップセットは,復調LSI「TC90A82XBG」,CAS(conditional access sysytem)機能を備えるLSI「T6NA7XB」などからなる.動画圧縮伸張規格として,現在のところMPEG-4を採用している.

 今回展示した受信端末はいずれも東芝製だったが,開発メーカが限定されているわけではない.ただし,受信端末を開発する場合,モバイル放送から認定を受ける必要がある.本放送サービスは有料であるため,視聴を制限するためのスクランブル機能が必要になる.スクランブル機能はチップセットの中に組み込まれており,認定を受けたメーカにはチップIDが発行される.現在,シャープが受信端末を開発しているという.サービス開始時期までに,約3社が4~5機種の端末を出荷する予定.

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[写真1] モバイル放送のデモンストレーション
試作機はいずれも東芝製.衛星放送を配信するための本免許も取得している.配信番組はほぼ決定しており,7チャネルの映像,30チャネルの音声,データ情報などで構成される.

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[写真2] 受信端末のモックアップ
携帯型,車載用,ノート・パソコン/PDA用の端末をまず発売する.このほか,携帯電話やディジタル・カメラ/ビデオ,携帯ゲーム端末などの商品も考えている.

 本放送サービスは次のような流れになる.衛星からの信号電波(このときはKuバンド,すなわち11GHz~12GHz帯の周波数)をパラボラ・アンテナで受け,Sバンド(2.6GHz帯)に変換して受信端末に送信する.衛星電波が直接届かない場所(ビルの陰など)については,パラボラ・アンテナからギャップ・フィラ(再送信用アンテナ)に送信し,そこから受信端末に再送信する.

 ギャップ・フィラは90°,3kmの範囲で送信可能である.ただし,ビルなどの障害物による電波強度の低下やマルチパス(二つ以上の経路を通ってきた信号がお互いに干渉し合うこと)の発生を考慮すると,安定的に送受信するためには,半径1.5kmおきにギャップ・フィラを設置する必要があるという(写真3)

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[写真3] ギャップ・フィラ
同社のブースの横に設置されていた.衛星からの電波をとらえ,周波数を変えて再配信する.

●地上ディジタル放送に対応した携帯電話を展示

 三洋電機は,地上ディジタル放送に対応した携帯電話を展示した(写真4).W-CDMA/GSM方式とCDMA方式に対応した2機種を展示した.地上ディジタル放送サービスが開始される時期に合わせて製品化する予定.

 今回のデモンストレーションでは,携帯電話の内蔵メモリに記録したビデオ・データを再生・表示していた.本試作機の開発は,地上ディジタル放送の動画圧縮伸張規格にH.264が採用されるという発表が行われる前にスタートした.そのため,本試作機の動画像圧縮伸張にはMPEG-4が使われているという.実際の放送サービスが始まるまでに,H.264に対応させる方針.テレビを視聴したときの電池寿命は1.5時間程度.今後,電池寿命をさらに伸ばしていく必要があるという.

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[写真4] 地上ディジタル放送対応携帯電話
今回のデモンストレーションでは,動画像圧縮伸張にMPEG-4を用いていた.サービス開始までにH.264規格に対応させる予定.

●H.264対応ソフトウェア・デコーダ,CPU負荷が従来の1/5

 日本テキサス・インスツルメンツのブースでは,同社のアプリケーション・プロセッサ「OMAP」のデモンストレーションが行われた.例えば,テクノマセマティカルは,OMAPプラットホーム開発キット「Innovator」に同社のH.264規格のベースライン・プロファイルに対応したソフトウェア・デコーダを実装した.本開発キットには「OMAP1510」が搭載されている.OMAP1510は,DSPコア「TMS320C55x」とCPUコア「ARM925」を内蔵しているが,H.264ソフトウェア・デコーダはARM925上に実装した.

 本ソフトウェアは,「DMNA(Digital Media New Algorithm)」という独自のアルゴリズムを採用している.本アルゴリズムを用いると,用いない場合と比べてデコーダではCPU負荷を1/5に,エンコーダでは1/7にすることができるという.フレーム速度は5~30フレーム/s,画像サイズはQCIF(176×144ピクセル)とQVGA(320×240ピクセル)に対応している.デモンストレーションでは,同社のソフトウェア・エンコーダで圧縮した画像をパソコンから送り,開発キットでデコードしてその映像を表示した.このときの画像サイズは240×240ピクセル,フレーム速度は8~9フレーム/sだった.

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[写真5] OMAPにDMNAアルゴリズムを実装したH.264デコーダ
デモンストレーションにおける画像サイズは240×240ピクセル,フレーム速度は8~9フレーム/s.

●NTTドコモ,加速度センサを使ったウェアラブル・スイッチを開発

 NTTドコモは,骨伝導を利用したリモコン「UbiButton」のデモンストレーションを行った.腕時計型のリモコンを手首背面に付け,指先を触れ合わせると,リモコン内の加速度センサが働き,信号を検出する.モールス信号のようなコマンドを決めておき,このコマンドに応じてランプをON/OFFさせたり,カーテンの開け閉めなどを行った.デモンストレーションでは赤外線通信を利用していたが,Bluetoothなどの近距離無線通信規格などの利用も考えられるという.

 加速度センサは1軸の汎用品を用いている.信号検出用LSIは自社で開発した.製品化時期などは未定.

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(a) UbiButton  (b) 原理


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(c) UbiButtonでカーテンを開ける
[写真6] 「UbiButton」のデモンストレーション
デモンストレーションでは,指の振動を骨伝導で伝え,加速度センサでセンシングした.指の動作によって伝えたコマンドを検出してランプを付けたり,カーテンを開けたりした.

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