マイクロ波集積回路の線路設計を助ける百科事典 ―― 『Passive RF & Microwave Integrated Circuits』

水野皓司

tag: 半導体

書評 2004年5月17日

マイクロ波集積回路の線路設計を助ける百科事典

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Leo G. Maloratsky 著
Elsevier 刊
ISBN:0-7506-7699-X
368ページ
16×23.5cm
8,409円(税別,Amazon.co.jpの2004年5月16日現在の価格)
2003年11月(初版第1版)



 現在,マイクロ波技術に対する要求が急激に高まっています.携帯電話,各種通信回線をはじめとする通信技術から,ITS(intelligent transport systems;高度道路情報システム)関係の計測技術,あるいはLSIの高速論理回路技術まで,さまざまな分野でマイクロ波技術が必要とされています.企業では「マイクロ波~」と名まえの付いた部署は最近減っています.しかし,その実,さまざまな部署でマイクロ波技術は重要な基礎技術となっています.

 本書は,マイクロ波集積回路用の線路設計についてまとめたものです.各種の伝送線路,半導体ダイオードを用いた制御回路などについて,全部で14章,340ページにわたって述べられています.増幅器や発振器などの能動素子,能動回路には触れていません.本書は,入門書あるいは教科書を意図して書かれたものですが,参考文献が比較的豊富なので,この分野の技術者が線路設計の際に百科事典代わり使うこともできます.

 本書では,まず,第2章で集積回路に使用される基本線路の構造やインピーダンスなどについてまとめています.主にマイクロストリップ線路について説明していますが,そのほかの5種類の線路についても説明しています.3章では,これらの線路が結合した構造について,その基本特性を述べています.4章では,キャパシタやインダクタなどの回路素子について述べています.5章と6章では,マイクロ波回路設計で一般的に用いられる行列を用いた解析手法を紹介しています.7章~12章では,前章までの基礎をもとに,各種線路の組み合わせ,あるいはその応用について解説しています.方向性結合器,電力合成器,フィルタ,半導体ダイオードを用いた制御回路,移相器,サーキュレータなどについて,実例とともにその基本特性を述べています.

 13章では,例としてLバンド(1GHz近辺)のトランシーバを取り上げ,前述の回路や素子について紹介しています.14章は,実装技術についてまとめています.まず,マイクロ波パッケージについて,金属,セラミック,プラスチックに分けて説明しています.次いで,立体回路構成,多層平面回路といった回路構成を紹介し,最後にHMIC(混成マイクロ波集積回路),MMIC(モノリシック・マイクロ波集積回路)などについて述べています.

 このように,本書は広い範囲のマイクロ波受動回路について記述した書籍です.マイクロ波回路技術者はもちろん,高速信号を扱う論理回路設計者にとっても参考となるものと思われます.なお,同じような内容を含む『モノリシックマイクロ波集積回路(相川正義 他 著,電子情報通信学会 刊,ASBN:4885521459,1997年2月)』も,本分野の技術者にとって参考になることでしょう.こちらは,能動素子ついて詳しく述べられています.


水野皓司
東北大学電気通信研究所 テラヘルツ工学分野

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