新XScaleやUWB,PCI Expressのデモが続々 ――Intel Developer Forum Japan Spring 2004

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

レポート 2004年4月13日

 2004年4月7日~8日,ヒルトン東京ベイ(千葉県浦安市)にて,米国Intel社主催の「Intel Developer Forum Japan Spring 2004」が開催された.本フォーラムでは,通信関係,携帯機器関係,ディジタル家電などについての基調講演や報道関係者向けの説明会が行われた.また,PCI ExpressやUWB(ultra wideband)などに対応した製品や,同社製のマイクロプロセッサを搭載した製品の展示会も開催された.ここでは,XScaleプロセッサの新シリーズ「PXA72x」の開発環境や,PCI ExpressとUWB関連のデモンストレーションについて報告する.

●新XScaleプロセッサ「PXA27xシリーズ」の開発環境が整う

 2004年4月12日に新しいXScaleプロセッサ「PXA27xシリーズ」が発売された.これは,開発コード・ネーム「Bulverde」として,2003年9月に発表されたものである.従来のXScaleに対して,電力管理機能やグラフィックス処理機能などが強化されている.本フォーラムでは,PXA27x向けの電源ICや開発環境が多数展示されていた.

 セイコーエプソンは,PXA27xに対応した電源IC「S1F81150」を展示した(写真1).同プロセッサが必要とする各種電圧の生成と,電力管理機能を備えている.

 電圧生成用に六つの出力(チャネル1~5,チャネルB)を備えている.このうち,チャネル1~3はPWMコントローラであり,外部にスイッチング・レギュレータを接続して用いる.チャネル1はコア電圧(0.8~1.5V,最大出力電流500mA),チャネル2はI/O(USBも含む)電圧(2.9/3.3V,同1A),チャネル3はメモリ用電圧(1.8V,同1A)を生成する.一方,チャネル4,5,Bはシリーズ・レギュレータ出力である.チャネル4は内部PLL用電圧(1.3V,最大出力電流30mA),チャネル5は内部SRAM用電圧(1.1V,同30mA),チャネルBはバックアップ電圧(3.0V,同5mA)を生成する.

 PXA27xは,CPU負荷に応じて周波数や電圧を制御する電力管理機能を備えている.従来のXScaleプロセッサは,周波数モードを変更する際に,プロセッサを一度スリープ状態にする必要があった.PXA27xではプロセッサの動きを止めることなく,周波数モードを切り替えられるようになった.本電源ICはこの機能に対応しており,I2Cバスを介してプロセッサからコマンドを受けることで,0.8/0.85/0.9/1.0/1.1/1.2/1.3/1.4/1.5Vのコア電圧を出力する.また,コア電圧を切り替える際の電圧の傾き(ΔV/Δt)も設定できる.

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[写真1] 電源IC「S1F81150」と評価ボード
サンプル出荷は開始している.量産出荷は2004年第2四半期からの予定.ただし,スイッチング用に外付けされているパワーMOS FETを内蔵した「S1F81150B7」については,現在開発中.

 また,長野日本無線は,本電源ICを搭載したPXA27x向けCPU評価ボードのデモンストレーションを行った(写真2).本ボードは,USB(ホスト,クライアント)やシリアル,CompactFlashカードなどのインターフェースを備えている.このほか,64MバイトのSDRAMと32Mバイトのフラッシュ・メモリを搭載している.フラッシュ・メモリについては,必要に応じて64Mバイトまで拡張可能.LCD(液晶ディスプレイ)パネルも搭載されている.

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(a) Windows CE上で動画を表示


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(b) 評価ボード


[写真2] CPUボードのデモンストレーション
デモンストレーションでは,評価ボードにWindows CEを実装し,その上でQVGAの画像を表示していた.

 ソフィアシステムズも,PXA27x用評価ボード「Sandgate II」のデモンストレーションを行った(写真3).本ボードには,64MバイトSDRAMと64Mバイト・フラッシュ・メモリが搭載されている.インターフェースは,USB2.0(クライアント),USB1.1(ホスト/クライアント),10/100Base-T(Ethernet)などに対応している.このほか,タッチ・パネル付きのLCD(640×480ピクセル),SDメモリーカード,メモリースティック,CompactFlashなどのスロットも備えている.OSとして,Windows CE.NETの動作を確認済み.今後は,MontaVista Linuxにも対応していくという.本ボードの価格は45万円.すでに出荷を開始している.

 このほか,同社はPXA27x用ICE(in-circuit emulator)「UniSTAC II for Bulverde」の展示も行った(写真4).本ICEは,本プロセッサの命令セット「Wireless MMX」に対応している.JTAGコネクタまたは本ICE専用コネクタを介して評価ボードと接続する.ハードウェアによるブレーク・ポイントは2~4点,ソフトウェアによるブレーク・ポイントは無制限に設定することができる.また,分岐トレース機能も備えている.搭載するエミュレーション用RAMの容量の異なる3機種(16Mバイト,32Mバイト,64Mバイト)を用意する.このほか,簡易型のJTAGエミュレータ「EJ-Debug for Bulverde」なども出荷する.

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(a) デモンストレーション用システムの構成


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(b) Sandgate II


[写真3] Sandgate IIのデモンストレーションのようす
デモンストレーションでは,Sandgate IIにWindows CEを実装した.OSが起動するまでのレジスタの値を,JTAGエミュレータ「EJ-Debug for Bulverde」によってディスプレイに表示している.

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[写真4] PXA27x用ICE「UniSTAC II for Bulverde」
ホストとなるパソコンと本ICEとの間をUSBまたはLANケーブルで接続する.ホストの要求仕様は,メモリ容量が32Mバイト以上(推奨は64Mバイト以上),ハード・ディスク容量が20Mバイト以上.OSは,Windows 98SE/Me/2000/XPに対応している.

 一方,モンタビスタソフトウェアジャパンは,PXA27xに同社のLinux OS「MontaVista Linux Consumer Electronics Edition」を実装してデモンストレーションを行った(写真5).本OS自体が電力管理機能(DPM:Dynamic Power Management)を備えており,CPUやドライバの負荷に応じて,アプリケーション側からCPUの周波数や電圧を制御したり,I/Oへの電力供給を制御する.今回は,PXA27x上でこの機能を利用できるようにした.

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[写真5] PXA27x上でLinuxを動かす
デモンストレーションでは,アプリケーションとしてAccessのブラウザ「NetFront v3.1」を用いて,HTMLファイルを表示させていた.

【過去の関連記事】
■ニュース:Intel,XScaleの電力管理機能を強化し,動作周波数の動的切り替えを可能に 2004.4.12
■ニュース:MontaVista,Intel XScaleプロセッサ向けのHard Hat Linuxを発売 2001.9.3

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