新XScaleやUWB,PCI Expressのデモが続々 ――Intel Developer Forum Japan Spring 2004

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

レポート 2004年4月13日

●MultiBand OFDMのUWBに対応したデモも続々と

 Intel社は米国Texas Instruments社などと共同で,2004年1月,MultiBand OFDMの通信方式を採るUWBのSIG(special interest group)を結成すると発表した.これを受けて,本フォーラムではMultiBand OFDM方式のUWBのデモンストレーションがあちらこちらで行われていた.

 イスラエルのWisair社(国内窓口はイーコネクションズ)は,UWB用のRFトランシーバ・チップ「UB501」のデモンストレーションを行った(写真6,7).データ転送速度は最大480Mbpsであり,Wireless USBに応用することを視野に入れている.Wireless USBはUSB 2.0の拡張規格として,Intel社を中心に規格の策定が行われている.本トランシーバ・チップを搭載した無線機の通信距離は2m程度.ただし,データ転送速度を落とせば距離を伸ばすことは可能である.現在,物理層(PHY)とMAC(media access control)層の回路の最適化を行っているという.

 国内でUWB無線を利用するには総務省からの認可が必要ということもあり,今回は有線でデモンストレーションを行っていた.ベースバンド回路(FPGAに実装)から本トランシーバ・チップにデータを送り,ケーブルを介してスペクトラム・アナライザに転送し,その結果をディスプレイに表示した.デモンストレーションでは,7バンドを使用していたが,チップ本来の性能としては8バンドまで伝送できるという.周波数帯域は3.1GHz~7.4GHz.

 本トランシーバ・チップは0.18μmのSiGeプロセスで製造している.まず,特定のパートナ企業にサンプル・チップを出荷する予定.また,ベースバンド・チップも2004年12月ごろにはサンプル出荷を開始し,2005年中ごろにはチップセットとして量産を開始したいという.

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[写真6] UWBトランシーバ・チップ「UB501」
パワー・アンプを内蔵している.バンドパス・フィルタやバルーン・フィルタは外付け.

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[写真7] UB501のデモンストレーション
以前は,RFトランシーバの部分をすべてディスクリート部品で構成していたため,ボード・サイズが大きかった.無線機の筐体が大きいのは以前のものを利用しているためで,実際のRFトランシーバ・ボードは小さい.

 Wisair社のUWB用RFトランシーバは,本フォーラム内に開設されたIntel社の「Research and Development」パビリオンでもデモンストレーションが行われていた(写真8).これは総務省の認可を受けており,無線通信によるデモンストレーションを行っていた.ビデオ・カメラ(写真8の右端)からデータをパソコンへ取り込み,そのデータをEthernetを介してUWB無線機に送る.そこから無線でもう一方のUWB無線機に送信して,別のパソコンに画像を表示する,というシステム構成だった.

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[写真8] Intel Research and DevelopmentにおけるUWBのデモ
ここでは,ディスクリート部品で構成したWisair社のRFトランシーバを用いていた.データ転送速度は50M~60Mbps程度.

 さらに,NECエレクトロニクスのブースでも,Wisair社の無線機を使用してWireless USBのデモンストレーションを行っていた.カメラから取り込んだ動画をUWBの物理層を利用して伝送した.MACはNECエレクトロニクス製の「IEEE802.15.3 MAC PCIボード」を利用した(写真9)

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[写真9] IEEE802.15.3 MAC PCIボード
Wireless USBのデモンストレーションに用いられたNECエレクトロニクスのMACボード.

 このほか,アジレント・テクノロジーのブースでは,MultiBand OFDM UWBに対応可能な無線試験に関するデモンストレーションが行われていた(写真10).デモンストレーションの内容は次のとおり.まず,パソコン上で信号シミュレータ「Advanced Design Simulator」を実行させ,これをもとに任意波形発生器でベースバンド信号を生成する.IQ変調方式によってD-A変換を行ったあと,そのデータをベクトル信号発生器「E8267C」に取り込む.E8267Cから出力されるデータがUWBの送信データとなる.この送信データをオシロスコープ「54855A」で測定し,さらにRF信号解析ソフトウェア「89601A」でFFTや時間軸のデータの振幅などを表示することができる.

 UWBは,3.1GHz~10.6GHzの広帯域を利用するため,測定器もこれに対応する必要があるという.例えば,E8267Cは250kHz~20GHzの周波数帯域に対応している.

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[写真10] MultiBand OFDM UWBに対応可能な測定環境
RF信号解析ソフトウェア「Agilent 89601A」は,MultiBand OFDMだけでなく,ワイヤレスLAN(IEEE 802.11)やW-CDMAなどにも対応している.任意波形発生器以外はすべてAgilent Technologies社製.

●PCI Express IPコアでRambusと図研がビジネス協調

 米国Rambus社のブースでは,同社の物理層IPコア「Raser PCI Express」と,図研のMAC層,データリンク層,トランザクション層に対応したIPコア「Z-Core PCI Express」のデモンストレーションが行われていた(写真11).PCI Expressでは,物理層とMAC層は「PIPE」というインターフェースで接続することが決められている.今回のデモンストレーションでは,PIPEで両社のコアを接続し,正常に動作することを確認した.デモンストレーションの内容は,USBカメラで取得した画像をPCI Expressを介して別のパソコンに転送するというものである.

 本フォーラム開催中に,両社がPCI Express製品に関して提携を結んだことを発表した.ただし,これは独占的な契約ではない.IPコアを利用したい顧客は,それぞれの会社にコンタクトする必要がある.

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(a) デモ用システムの構成


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(b) Rambus社のボード(左奥)と図研のZ-Coreボード(右)


[写真11] Rambusと図研のIPコアを協調動作
カメラの画像をZ-Core PCI Expressに取り込み,Raser PCI Expressに転送する.リンクは×2(2レーン)である.本デモンストレーションでは,伝送速度は1.8Gbps程度だった.

 これとは別に,NECエレクトロニクスは,PCI ExpressスイッチICを用いたデモンストレーションを行った(写真12).本ICは,ダウンストリーム専用の×4レーンのポートを四つと,アップストリームとダウンストリームの両方に利用できる×8レーンのポートを二つ備えている.電源電圧は,内部電圧が1.5V,I/O電圧が3.3Vである.

 今回のデモンストレーションでは,パソコン間で動画データの転送を行った.動画データが格納されているノート・パソコンと本ICを搭載した評価ボードの間はLANケーブルで接続されている.本評価ボードともう一方のパソコンの間はPCI Expressで通信する.動画データを受け取り,Windows Media Playerで動画を再生した.このデモンストレーションではLANケーブルがボトルネックとなり,データ転送速度は10Mbps程度しかでていないという.

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(a) デモンストレーション用システムの構成


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(b) PCI Expressスイッチを搭載した評価ボード


[写真12] PCI Expressスイッチのデモンストレーション
LANケーブルと評価ボードの間,評価ボードとパソコンのメイン・ボードの間はいずれも×8レーンのポートを利用.×8レーンのポートをアップストリームとして利用するかダウンストリームとして利用するかは,EPROMのデータによって設定する.

【過去の関連記事】
■ニュース:マルチバンドOFDM方式のUWBを推進するSIGが発足,2004年5月に正式仕様を公開 2004.1.27
■レポート:12月の認証ワークショップに向けて,PCI Express対応IPコアやボードを発表――Intel Developer Forum Fall 2003レポート 2003.10.6
■レポート:PCI Express対応の開発環境が整いつつある――インテル デベロッパ・フォーラム Japan Spring 2003 2003.4.15

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