セイコープレシジョン,標準時刻情報を無線で配信できる時分割制御プロトコルを開発 ――オンライン認証やトレーサビリティに応用可能

組み込みネット編集部

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レポート 2004年1月16日

 現在,インターネットを利用した商取引が盛んに行われている.インターネットを用いることで,いつでもグローバルな商取引を行えるようになったが,ここで文書の原本性の保証などが問題となる.そこで,いわゆる標準時刻情報(日本標準時刻など)を利用して認証を行おうという動きが出てきている.また,標準時刻情報は,食品などの流通経路の管理(いわゆるトレーサビリティ)においても重要な役割を果たすと期待されている.

●時刻情報を長波で受けて特定小電力無線で送る「TimeLink」

 このように標準時刻情報の利用に注目が集まる中,セイコープレシジョンは標準時刻情報を無線で配信するための時分割制御プロトコル「TimeLink(タイムリンク)」を開発した.本通信プロトコルは装置間(マスタとスレーブ)の正確な時刻合わせ機能を持つことを特徴としている.すでに,同社が販売しているタイム・サーバ(標準時刻の受信/配信を行う装置)「TS-2010」などに組み込まれている.

 本タイム・サーバを日本標準時刻に合わせる方法には次の三つがある.

  • アナログ電話回線を介して,直接,通信総合研究所(CRL,日本の標準時刻を決めている機関)から時刻情報を受け取る.
  • 電波時計用の長波(JJY)から時刻情報を受け取る
  • NHKのFMラジオの時報から時刻情報を受け取る

 長波JJYの場合,受け取った電波を特定小電力無線(通信速度2,400bps)に変換してタイム・サーバに送信する.この無線通信においてTimeLinkが使われる.

●正確な時刻による制御は低消費電力化にも貢献

 また,同社は2004年4月に,本プロトコルを利用したデータ収集用特定小電力無線通信端末「RF-Sensing TAG」を発売する(写真1).本端末は,温度,湿度,気圧,衝撃などの各種センサから取得したデータを,補正済みの時刻情報といっしょにマスタ(パソコンやサーバなど)に送信する.利用する周波数帯は429MHz.通信距離は見通しで100m以上.最大256個の端末を同時に利用できる.物流の際の温度・湿度管理やセキュリティ・システムなどにおける需要を見込んでいる(写真2)

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[写真1] RF-Sensing TAGの外観
外形寸法は,110mm×60mm×25mm(ただし,アンテナは含まない).試作機では,サーミスタが取り付けられていた.

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[写真2] RF-Sensing TAGによる温度測定の履歴
RF-Sensing TAGで取得したデータの時間ごとの履歴.

 マスタ(サーバやパソコンなど)と本端末の間の処理は以下のとおりである.

 まず,マスタと本端末(スレーブ)がTimeLinkによって時刻同期を取る(ホストとなる機器は,タイム・サーバなどによって標準時刻情報を保持しているものとする).同期が取れない間はデータを転送することはできない.同期が取れたあとも,ユーザが定義した時間間隔で時刻補正を行う.同期が取れると,本端末は収集したデータをホストに転送する.本プロトコルでは,1分間を複数の領域に分割する.例えば,ある時間領域では通信対象となる端末のスケジューリングを行い,別の時間領域ではデータ転送を行う.ホストと本端末が共通の時刻情報に基づいて動作しているので,複数の端末を同時に稼働した場合でも,端末ごとにデータ転送を行う時間をずらして,データの衝突を回避することができる.

 また,ユーザが本端末を動作させる時間(補正された時刻情報に基づく)を設定することもできる.これにより,必要なときだけ本端末を起動させることができるので,消費電力を抑えることができるという.本端末は単4電池3本で駆動するが,その電池寿命は5年以上であるという.

 本端末は,同社とセイコーエプソン,日本プレシジョン・サーキッツが共同で開発した.CPUや液晶ディスプレイはセイコーエプソンが,特定小電力無線チップは日本プレシジョン・サーキッツが提供した.将来的には,CPUと無線チップを1チップに集積するという.

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