有機EL,両面に同一の画像を表示できるパネルや色変換方式のパネルが登場 ――第13回フラットパネル ディスプレイ製造技術展

組み込みネット編集部

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レポート 2003年7月14日

 2003年7月2日~4日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,フラットパネル・ディスプレイに関する展示会「第13回フラットパネル ディスプレイ製造技術展」が開催された.有機ELディスプレイの中でも両面に同一の画像を映し出せるパネルや,色変換方式を採用したパネルに人だかりができていた.また,携帯電話に搭載された256色の有機ELディスプレイも来場者の関心を集めていた.

●パネルの両面に表示できる有機ELディスプレイに人だかり

 半導体エネルギー研究所は,表面と裏面の両方に同一の画像を表示できる2.1インチ型有機ELディスプレイを展示した(写真1).表面の画像と裏面の画像は反転している.駆動方法はアクティブ・マトリックス方式,色数は26万色.本ディスプレイは来場者の関心を集め,展示ブースの前にはつねに人だかりができていた.

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[写真1] パネルの両面に画像を表示できる有機ELディスプレイ
本ディスプレイはパネルの表面と裏面の両方に同一の画像を表示できる.ただし,表面の画像と裏面の画像は反転している.ソフトウェアなどで切り替えを行えば,折りたたみ式携帯電話のサブディスプレイとメイン・ディスプレイの両方を本ディスプレイで代替できる.

 一方,東北パイオニアは,1.1インチ型有機ELディスプレイを展示した(写真2).駆動方法はパッシブ・マトリックス方式,画素数は96×72,画素ピッチは0.228mm×0.228mm,色数は256,輝度は100cd/m2.また,輝度が100cd/m2のときの半減寿命は2,000時間である.本ディスプレイは,折りたたみ式携帯電話のサブディスプレイ(背面)に利用される.NTTドコモが発売した富士通製の携帯電話「F505i」に採用されている.同社は,本携帯電話の出荷に合わせて本ディスプレイの量産を開始した.

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[写真2] 「F505i」に搭載されている有機ELディスプレイ(左)と液晶ディスプレイ(右)
本ディスプレイは,NTTドコモが発売した富士通製の携帯電話に搭載されている.フル・カラーの有機ELディスプレイが搭載された携帯電話が発売されたのは,今回が初めて.写真の右側は,従来の携帯電話に搭載されている液晶ディスプレイである.

 また,同社はアクティブ・マトリックス方式の2.1インチ型有機ELディスプレイも展示した(写真3).画素数は176×220,画素ピッチは0.189mm×0.189mm,色数は262,144,輝度は100cd/m2.また,開光率は40%.量産出荷の開始時期は2004年を予定している.

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[写真3] アクティブ・マトリックス方式の有機ELディスプレイ
シャープ,東北パイオニア,半導体エネルギー研究所の合弁会社であるエルディスが製造した有機EL用の低温ポリシリコンTFT基板を利用している.このTFT基板を用いて東北パイオニアが発光材料の蒸着などを行い,有機ELディスプレイを製造する.

●色変換方式を採用した有機ELディスプレイが登場

 富士電機は,色変換方式を採用した3.1インチ型有機ELディスプレイを展示した(写真4).発光層に青色の蛍光材料を利用する.この青色(B)の蛍光材料を,変換材料を用いて赤色(R)と緑色(G)に変換する.これらのRGBの光源をさらにカラー・フィルタで調整する.

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[写真4] 色変換方式を利用した3.1インチ型有機ELディスプレイ
本ディスプレイの駆動方法はパッシブ・マトリックス方式,画素数は320×240,画素ピッチは0.195mm×0.195mm.100cd/m2の輝度のときの半減寿命は7,000時間.

 色変換方式の有機ELディスプレイには,色変換層の形成やカラー・フィルタ取り付けの工程が増えるというデメリットはあるが,発光層の形成が単純であるため,歩留まりが高く,ディスプレイの大型化に有利であるという.

 発光層の形成方法として,例えばRBGの蛍光材料を塗り分ける方法や,白色発光とカラー・フィルタを組み合わせる方法などがある.発光層をRGBの蛍光材料で塗り分ける方法は,マスク蒸着工程の歩留まりが低く,ディスプレイの大型化や高精細化が難しいとされている.一方,白色発光方式の場合,発光層の形成は容易だが,発光効率が低いという問題がある.さらに,白色発光方式には消費電力が高いという問題もある(100cd/m2のときの白色発光方式の消費電力は,色変換方式の約1.7倍).

 本ディスプレイの駆動方法はパッシブ・マトリックス方式,画素数は320×240,画素ピッチは0195mm×0.195mm,電源電圧が15Vの場合の輝度は100cd/m2.100cd/m2のときの半減寿命は7,000時間.量産出荷の開始時期は2005年の予定である.

 さらに富士電機は,色変換方式を採用したアクティブ・マトリックス方式の有機ELディスプレイも展示した(写真5).電源電圧が8Vのときの赤色発光は200cd/m2,緑色発光は600cd/m2,青色発光は350cd/m2である.また,赤色の色度は(0.65,0.34),緑色の色度は(0.29,0.67),青色の色度(0.13,0.14).

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[写真5] 色変換方式の有機ELディスプレイ(上)とその構造図(下)
色変換方式を利用した有機ELディスプレイをアクティブ・マトリックス駆動で表示したのは初めてであるという.

 色変換方式を利用した場合,TFT基板と発光層の間に厚い色変換層が存在する.また,カラー・フィルタや色変換層を形成したあと,発光層を積層する.このとき,層形成時の欠陥密度や歩留まりなどが問題となって,色変換方式を利用したアクティブ・マトリックス駆動の有機ELディスプレイの実用化は難しいとされていた.

 本ディスプレイでは,TFT基板上の発光層と色変換層を別々に形成し,それぞれを貼り合わせる(写真6).また,反射電極の平たん化技術や,基板の上部から光を取り出すトップ・エミッション構造を採用し,開光率を向上させた.こうして,製造時の欠陥密度や歩留まりの問題を改善したという.

 同社は本技術を利用して,2003年度中にアクティブ・マトリックス方式のフル・カラー有機ELディスプレイを開発する予定.

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[写真6] 貼り合わせ工程
本ディスプレイでは,TFT基板上の発光層と色変換層を別々に形成し,真空中で貼り合わせる.この工程を採用することにより,製造時の歩留まりが改善したという.

●輝度5,000cd/m2の携帯電話向けLEDモジュールを展示

 オムロンは,輝度が5,000cd/m2のLEDモジュールを展示した(写真7).本LEDモジュールには2個のLEDが組み込まれている.携帯電話のバックライトとして利用される.一般に,携帯電話のバックライトとして利用する場合,同等の輝度を得るために従来は3~4個のLEDが必要だった.

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[写真7] 輝度が5,000cd/m2のLEDモジュール
従来のディスプレイでは,バックライト用に3~4個のLEDを組み込んでいた.本ディスプレイでは2個のLEDだけで高輝度を実現している.

 従来のLEDモジュールは,導光板の端面にLEDを離散的に配置し,下面に反射シートを,上面に拡散シートとプリズム・シートを配置していた.LEDの光源は端面から導光板に入射され,導光板の上下面で全反射を繰り返しながら光が拡散する.導光板から出射した光は,拡散シートとプリズム・シートによって垂直方向に集光される.しかし,この方法を利用した場合,光の均一性や出射効率,指向性などの光学設計が難しいと言われている.このため,液晶ディスプレイの表示に光のむらができることがあった.また,高輝度のLEDモジュールが必要な場合,搭載するLEDの数を増やす必要があった.

 一方,本LEDモジュールでは,導光板内の光をLEDの光源から放射状かつ直線的に導光するようにした(ベクタ方式).これによって,各点における導光量と光の方向を確定できるため,導光板からの光の均一性,出射効率,出射光の指向性を確保できるようになった(写真8).また,拡散シートやプリズム・シートが不要になった.

 現在,同社は6,000cd/m2の輝度のLEDモジュールの開発を行っている.両LEDモジュールとも,2004年上半期の量産出荷を予定している.

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[写真8] 本LEDモジュールの原理
導光板内の光をLEDの光源から放射状かつ直線的に導光するようにした.また,拡散シートやプリズム・シートが不要になった.


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