ヘッド・ハンターの視点(1) ――エンジニアの節目は32才と38才

米焼酎

tag: 組み込み 半導体 実装

コラム 2003年6月16日

 筆者は,人材紹介(いわゆるヘッド・ハンティング)のしごとに従事しています.先日,エンジニアの年齢について考えさせられることがありました.エンジニアの節目となる年齢は32才と38才ではないかと筆者は考えています.読者の中にもこのくらいの年齢の方がおられるでしょうから,参考にしていただければと思います.

●実務経験を期待される32才

 32才のAさんは男性,神奈川県在住で独身.大学を卒業した後,制御用ソフトウェア開発一筋で10年間,開発職を経験してきました.ところが,最近はインドのソフトウェア開発会社に勢いがあり,アプリケーション・ソフトウェアの開発案件の多くをそうした海外の企業が受注していきます.その結果,Aさんのしごとは開発ではなくソフトウェアの外注管理や品質管理が中心となり,うんざりぎみのようすでした.本人はもっとソフトウェア技術を磨きたいので,転社(転職ではない!)を考えていました.

 職務経歴をうかがったところ,10年間懸命にしごとをされており,転社の動機も十分納得できるものでした.筆者は,「希望のしごとをお望みなら,協力させてもらう」と言いました.1週間後,Aさんから「先日のお話,興味がありますので相談させてください」というメールが筆者のもとへ届きました.

 筆者はまず,紹介先の会社のリストアップを行いました.定期的に経営者に連絡をとって,事業計画や抱えている問題点などをうかがっている会社が10社程度ありました.電話でそれぞれの会社の最新の状況を確認しながら,Aさんの特徴を説明していきました.人材に関する経営者の質問はさすがに鋭く,緊張感のある会話に,たいへんエネルギを使います.その結果,「会ってみたい」と言われる会社が5社ありました.

 今度はAさんに5社の会社の概要と経営内容などを説明し,3社に絞り込みました.技術責任者との面談では,実際に担当する職務についての質問が中心となります.Aさんのこれまでの実績から,歯切れよく話が進みました.次は社長面談です.これは人物面に関する質問が中心となります.Aさんの熱心さとリーダシップが随所に見えました.

 会社側の意見も聞きながら,希望する会社を選ぶことになります.しごとに打ち込むには通勤時間が短いのがよいとのことで,Aさんは某装置メーカを選択されました.待遇面の最終調整を会社と行い,内定をもらいました.Aさんには,5年,10年先を見据えて焦らずじっくりとしごとを積み重ねてもらうことを筆者は祈っています.

●マネージメント能力を求められる38才

 38才のBさんは男性,東京都内在住で,奥様と小学生のお子さんの3人家族.2社の外資系企業で,開発職と技術営業職を経験されており,幅広い職種をこなせます.転職の理由は,「もっと自分の能力を生かせる職場はないものか?」というものでした.筆者には,Bさんが大きな壁の前に立たれているように見えました.立ち向かうことができれば必ず乗り越えられるもので,乗り越えられれば心配ないように見えました.

 Aさんの場合と同じように,各企業にBさんの紹介を始めたところ,共通して聞かれた項目がありました.それはマネージメント能力(管理能力)です.32才のAさんの場合と違い,38才のBさんには実務経験に加えて,マネージメント能力を期待されます.マネージメント能力は職務経歴書からは読み取りにくく,お互いに会って話をしてみないとわかりません.また,相手の会社の理念や社風(トップがワンマンの会社もあれば,権限委譲が進んでいる会社もある)によっても,求められるものが違います.

 Bさんは面接で自己の可能性を強調し,1社から内定をもらいました.会社が示した待遇面の条件は,本人の今後の努力に期待するところが大きいこともあり,少し不満の残るものでした.筆者は,「Bさん本人の自覚が足りないのでは?」と思ってはいても,それを口に出すことはできず,現在の求人状況を率直に話して,決心することをBさんに勧めました.

 Bさんの例から思うのが,38才という年齢のむずかしさです.32才までは,自分の「やりたいこと」,「やるべきこと」を一生懸命追い続けていけばよいと思います.しかし,その先になると,なかなかそれだけでは会社に認めてはもらえません.周りにいる上司を参考に,マネージメント能力に磨きをかけることも必要ではないかと思います.

 会社の事業変革に伴って職種の変更は本人の意思と関係なく発生します.30代になれば,自分の年齢を考えてしごとの内容を吟味することも必要だと思います.これは,自己責任なのです.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2003年6月号に掲載されました)

◆筆者プロフィール◆
米焼酎(ペンネーム).30年前,F- 8,8080,Z-80マイコンと出会い,半導体業界にあこがれて二つの外資系半導体メーカを経験.今は,人材コンサルタントの修行中.話をするのが好きで,焼酎があるとお尻に根が張って何時までも飲む癖がある.

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