この夏,いよいよ燃料電池バスが東京を走る ――第3回 燃料電池自動車国際シンポジウム
2003年3月18日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,国土交通省が主催する「第3回 燃料電池自動車国際シンポジウム」が開催された.本シンポジウムでは,燃料電池バスの普及をテーマに基調講演やパネル・ディスカッションが行われた.このほか,自動車メーカによる燃料電池自動車の展示や,トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した燃料電池ハイブリッド大型バス「FCHV-BUS2」の試乗会も行われた.
●燃料電池自動車はテスト・コースを出て公道へ
パネル・ディスカッションでは,「実走行段階に来た燃料電池バスの課題と将来展望」をテーマに,日本における現状と課題などが議論された.国土交通省や東京都環境局のほか,米国カリフォルニア州で燃料電池バスの普及活動に取り組んでいるCalifornia Fuel Cell Partnership(CaFCP),水素燃料の商用化に積極的なアイスランドからパネリストが参加した.
この中で,国土交通省 自動車交通局技術安全部 環境課長の森崎一彦氏は,「燃料電池は,テスト・コースで走る段階は終わり,公道試験の段階に入った」と述べた.現在,国内では,21台の軽量車両と4台のバスが大臣認定を取得して,公道試験を行っている.これらの自動車のほとんどは,自動車メーカの従業員が運転しているが,そのうちの5台の乗用車については第3者がハンドルを握っているという.小泉首相は,2005年までに燃料電池自動車を実用化するように指示しており,政府として,この目標を達成するための対策をとっていくという.
また,東京都環境局 地球環境担当副参事の澤章氏によると,現在,東京都で発生する二酸化炭素の約4割が自動車から排出されている.さらに,騒音の問題もある.このような背景から東京都では,2003年の夏からトヨタ自動車と日野自動車が共同開発した燃料電池ハイブリッド大型バス「FCHV-BUS2」を公共輸送機関として,都営バスの路線に走らせると発表した(写真1).これに対してCaFCPのExecutive DirectorであるCatherine Dunwoody氏は,「東京のような大都市の公共輸送機関として燃料電池バスが成功すれば,世界に対して大きなインパクトがある」とコメントした.
トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した大型バス(写真上).燃料電池「FCスタック」はトヨタ自動車が開発した(写真下).
燃料電池自動車の実用化への期待は大きいが,インフラの整備,コスト(現状,買い取りは無理),高圧ガスに関する法律の改正,氷点下における信頼性など,いくつかの課題も指摘された.ユーザの立場でパネル・ディスカッションに参加した自動車生活ライターの飯田裕子氏は,性能だけでなく利便性やライフ・サイクルも重要であると述べた.また,燃料に水素を使用するため,自動車免許のほかに特殊な知識が必要となる点も指摘した.
●トヨタはリースも開始
トヨタ自動車は,上記の大型バスのほかに乗用車「トヨタFCHV」を展示した(写真2).2002年12月から,日本と米国で本乗用車の限定リースを開始した.すでに,国内では4台(環境症,経済産業省,国土交通省,内閣官房)を,米国では2台(University of California,Irvine校とDavis校)を納品した.リース価格はひと月120万円(米国10,000ドル/月).
燃料電池としては,出力が90kWのFCスタックを使用.燃料は純水素であり,最大充てん圧力は350気圧(35MPa).現在,高圧ガス保安法では,充てん圧力を最大200気圧と定めている.燃料電池自動車については,今のところ特別に許可されているが,今後法改正されるとみられている.
トヨタ自動車のほかに,米国General Motors社,ダイハツ工業,米国Daimler Chrysler社,日産自動車,本田技研工業が燃料電池自動車を展示した(写真3~写真7).