若いエンジニアよ大志を抱け ――『IT革命からナノテクノロジーへ――半導体技術の創造と進化』
若いエンジニアよ大志を抱け
飯田清人 著
丸善株式会社 刊
ISBN:4-621-07080-0
18×13cm
210ページ
2,000円(税別)
2002年8月(初版第一版)
本書は,興味深い内容を平易に書いてあり,かつ読者によってさまざまな読みかたができる多面性を持っています.
第一に,本書は読みやすくコンパクトにまとめられた半導体技術の発展史です.第2章から第9章までは,ギリシャ時代から現代に至る電子技術・半導体技術の進化の過程を,エポックメーキングな発見・発明を中心に紹介しています.
第二に,単にエピソードの紹介にとどまらず,その理論や技術的エッセンスを平易に,かつ的確に解説しています.これから半導体技術を学ぼうとするすべての人に勧められる優れた入門書とも言えます.著者は,難しい理論の本質をわかりやすく説明できる才能を持っているのでしょう.
第三に,それらの発見・発明の視点や発想に着目することにより,先人の足跡に学ぶ創造の方法論となっています.例えば,
- 常識と異なる方法を試みる「逆さ発想」の視点
- 異分野の発見や理論から着想を得る「連想と応用」の視点
- ある部分をほかのものに置き換えてみる「代用」の視点
というように,発見・発明がどのような視点から生まれるかを分析しています.昨年(2002年)ノーベル賞を受賞して話題になった田中耕一さんの発明も,まさにこれらの視点から生まれたものと言えるでしょう.
そして,本書は現在,そして将来の半導体技術を担う若い技術者,研究者そして学生への激励の書です.さまざまな発見・発明に支えられて進化をとげてきた半導体技術は,未開の地であるナノテクノロジの入り口に立っています.そして,多くの若者が創造的にナノテクノロジの研究・開発に取り組み,大きな発見・発明を成し遂げていってほしいというのが著者の最大の願いでしょう.
宮崎 仁
(有)宮崎技術研究所
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