マイクロ波が専門でない方のためのRF MEMS入門書 ――『RF MEMS Circuit Design For Wireless Communications』

水野皓司

tag: 半導体

書評 2002年12月 3日

マイクロ波が専門でない方のためのRF MEMS入門書

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Hector J. De Los Santos 著
Artech House Publishers 刊ISBN:1-58053-329-9
23×16cm
224ページ10,424円(税別,amazon.co.jpの2002年12月3日現在の価格)
2002年7月1日(初版第一版)





 本書は,現場の技術者の方,あるいは大学の学部後期以上の学生の方を対象に書かれた,RF MEMS技術に関する入門書です.書名に示されているように,RF MEMS技術をワイヤレス通信技術へ応用することを目的とし,要求される技術事項やそれに対する現在の技術例などが述べられています.

 本書は5章からなっています.第1章は,携帯電話に代表される,いわゆる「ユビキタス」と呼ばれるワイヤレス通信についての方式などを概観しています.ここでは,RF MEMS技術に期待することが,「機器の消費電力の低減」と「帯域の拡大」であると述べられています.

 第2章では,ワイヤレス通信用のマイクロ波技術について,MEMSデバイス設計に必要な基礎知識がまとめてあります.例えば,表皮効果や誘電体線路の設計,反射係数などについて述べられています.これらは,マイクロ波技術以外の分野からRF MEMSデバイスの開発に入ってこようとする人々にとって有益でしょう.

 第3章は,これまでに研究・開発されたRF MEMS技術を用いた各種デバイスの解説です.可変容量ダイオードやスイッチだけでなく,微小振動子,FBAR(film bulk acoustic resonator)などについて,その動作原理や構造を説明しています.RF MEMS特有の応用の一つに,スイッチなどの可変デバイスを用いて回路構成を望みどおりに変える機能がありますが,第4章では可変容量ダイオードを用いたスタブ・チューナなどの実例について述べています.続く第5章でも,MEMSスイッチを用いた移相器や同調可能なフイルタ,振幅器などについて実例をもとに記述しています.

 内容的に広い範囲をカバーしており,これからRF MEMSデバイスの開発を行おうとしている方には有益な書籍です.しかし,すでに研究や開発に携わっている方には物足りない気がします.例えば,RF MEMSデバイス一般について,そのハンドリング電力やパッケージング,あるいはスイッチの寿命など,現在の重要な課題についての議論が抜けているからです.


水野皓司
東北大学電気通信研究所 テラヘルツ工学分野

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