日本のMEMSファウンドリが本格稼動,オリンパスやオムロンが成果を展示 ――第13回 マイクロマシン展
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レポート 2002年11月28日
2002年11月13日~15日に,科学技術館(東京都千代田区)において,マイクロマシン(微小機械)およびナノテクノロジに関する展示会「第13回 マイクロマシン展」が開催された.オリンパス光学工業やオムロンなどがMEMS(micro electro mechanical systems)ファウンドリ・サービスを開始しており,これらのサービスの成果を展示して注目を集めた.3日間の入場者数は8,424人と前年に比べて1,000人近く増えており,マイクロマシン技術やナノテクノロジへの技術者の関心が年々高まってきていることがうかがえる.
●オリンパスのMEMSファウンドリ・サービスに予想以上の反響
オリンパス光学工業のブースでは,同社が2002年2月から開始したMEMSファウンドリ・サービスを利用して製作したインクジェクション・プリンタ・ヘッドなどが展示されていた.本サービスでは,顧客の要求に合わせてMEMS設計のコンサルティングや設計受託,試作,評価・検証,量産などを請け負う.サービス開始以降,顧客からの問い合わせが相次いでいるという.
今回は,本サービスの利用例として,富士ゼロックス製インクジェット・プリンタ「Work-Centre B900N」を展示した(写真1).本プリンタのインクジェクション・プリンタ・ヘッドは,富士ゼロックスが設計を行い,試作と量産をオリンパス光学工業が担当した(写真2).このプリンタ・ヘッドは,バルク・マイクロマシーニング技術を用いてインクの流路を形成し,このデバイスと制御用LSIを張り合わせて構成した.プリンタ・ヘッドのノズル密度は800dpi.
このほかに,オリンパス光学工業製の走査型レーザ顕微鏡「OLS1100」などに搭載されている光スキャナや,WDM(wavelength division multiplex)通信に使用されるミラー・アレイなども展示された(写真3,写真4).光スキャナは電磁駆動方式であり,駆動部であるMEMSチップが中央に配置されており,そのまわりを磁石が囲んでいる.機械的に駆動させる従来のガルバノミラーと異なり機械磨耗がない.耐久時間は1万時間以上.これは,ガルバノミラーの耐久時間の約5倍に相当するという.共振周波数は4kHz,走査角は1~8度.ミラー・アレイは,通信事業者から開発を委託されたもので,現在は試作段階にあるという.
●オムロン,MEMSセンサと信号処理回路を1パッケージにして提供
2001年からMEMSファウンドリ・サービスを開始したオムロン セミコンダクタ事業部のブースでは,MEMSセンサ・チップとその信号処理回路を1パッケージにしたモジュールのコンセプトが紹介されていた(写真5).従来,オムロンなどのデバイス・メーカがセンサ・チップを提供し,顧客が信号処理回路を作っていた.同社はセンサ・チップやカスタムICの製造,パッケージングなどのサービスを行っていく予定.
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これとは別に,同社は携帯電話やPDAなどの携帯機器およびゲーム機向けの3軸加速度センサを展示した(写真6).これもMEMS技術を用いて製造した.本加速度センサは,ピエゾ抵抗効果(金属や半導体にひずみを加えると抵抗率が変化するという現象)を利用している(図1).検出範囲は±2G.感度は標準0.5mV/G/である.動作温度は0~60℃,耐衝撃性は1,000G以上.
(a)と(b)は3軸加速度センサを用いたデモンストレーションのようす.加速度センサの傾きに応じて,(a)のX軸,Y軸,Z軸の位置を表すランプが変化する.(c)は,デモンストレーション用の装置に取り付けられた3軸加速度センサ.パッケージの外形寸法は4.9mm×4.9mm×1.3mm.
現在,オムロンではバルク・マイクロマシーニング技術を用いてデバイスを製作しているが,今後はサーフェイス・マイクロマシーニングにも対応していきたいという.なお,オムロンは2002年7月に台湾のWalsin Lihwa社とMEMSファウンドリ事業についての業務提携を結んでいる(本件に関するオムロンの発表資料のURL:http://www.omron.co.jp/press/e0709.html).
●駆動部の厚みが0.4mmの薄型超音波モータ
セイコーエプソンは,駆動部(ステータ)の厚みがわずか0.4mmの薄型超音波モータを展示した(写真7).このほか,ぜんまいを動力源としたアクチュエータや小型発電機などを展示しており,ブースにはつねに人だかりができていた.
本超音波モータの動作原理は次のとおりである.1)ステータの圧電素子を振動させる,2)その振動をだ円運動に変換し,摩擦伝達によってロータを回転させる,3)この回転力から駆動力を取り出す(図2).この原理を応用したピン・アクチュエータも展示されていた(写真8).技術的には数年後には実用化できるレベルに達しているが,製品化するかどうかについては顧客の要求しだいだという.