日本の携帯電話を制覇したJava技術 ――2002 JavaOne

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 半導体

レポート 2002年10月 1日

 2002年9月25~27日,神奈川県横浜市のパシフィコ横浜にて,Java技術に関するコンファレンス「2002 JavaOne Conference in Japan」が開催された.併設された展示会では,Java対応の携帯電話/携帯端末向けのソフトウェア開発環境,およびJavaチップ(Java専用プロセッサ)などが展示された.

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[写真1] 展示会場の入り口

●Javaを使って携帯電話の位置をモニタ

 KDDIは,携帯電話の位置をモニタできるサービス「GPS MAP」のデモンストレーションを行った.あらかじめ登録した端末について,端末の位置や状態(荷下ろし中,運転中,食事中など)をモニタできる.同社のJava対応携帯電話のうち,2002年9月から販売されているA5301Tなどが対応している.本サービスは,10月1日から開始されている.

 利用者はhttpを使ってKDDIのサーバにログオンし,ブラウザ上で端末の位置を確認する.位置情報をサーバに通知するJavaプログラムが端末に組み込まれている.端末がサーバに位置情報を定期的に自動送信する.Cメール(cdmaOne携帯で利用できるショート・メール・サービス)を使ってサーバが端末のJavaプログラムを起動し,位置情報を取得することもできる.利用者のプライバシに配慮し,サーバの情報取得を拒否する設定も用意する.クラッキングを防ぐため,あらかじめ登録した端末のJavaプログラムしか起動できない.

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[写真2] 端末の位置や状態(ステータス)を一覧できる

●Sub-QCIF動画を再生できるJava

 ズコット・ワイヤレスは,Javaチップ「XPRESSO」を展示した.J2ME(Java 2 Platform, Micro Edition;携帯機器向けのJavaの仕様)とCLDC(Connected, Limited Device Configuration;携帯型ネットワーク情報機器用のライブラリ)の仕様に準拠する.Sub-QCIF(128×96ピクセル)の解像度で,1秒間に15フレームの動画を再生できる.なお,現在の携帯電話で録画・再生できる動画は1秒間に5フレーム程度である.

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[写真3] デモンストレーションとして,Walt Disneyのアニメーション映像を流していた

●携帯電話間で仮想熱帯魚を受け渡し

 NTTドコモのブースでは,504iシリーズの携帯電話による赤外線通信のデモンストレーションを行っていた.2台の携帯電話がそれぞれ熱帯魚育成シミュレーション・ゲーム「アクアゾーン」を起動し,赤外線通信機能を用いて魚のデータを受け渡していた.アクアゾーンはiアプリ(iモード用のJavaプログラム)の一つ.504iシリーズは,全機種に赤外線インターフェース(IrMC)を標準装備している.異なるメーカの端末どうしでも通信できる.

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[写真4] SO504iとP504iでも通信が可能

●Javaでリアルタイム制御を行えるJavaチップ

 理経は,米国aJile Systems社のJavaチップ「aJ-80」,「aJ-100」とその関連製品を展示した.Javaスレッドのリアルタイム制御を備えており,リアルタイムOSなどを用意する必要はない.スレッド・スイッチングは1μs以下だという.また,320×240ピクセルの解像度で1秒間に30フレームの動画を再生できる.

 このJavaチップは,米国Sun Microsystems社,米国Cyberonix社,米国Mitsubishi Electric Automation社が共同開発したガソリン・スタンド用の顧客サービス兼販売管理システム「eGAS Station」に採用された実績がある.

 また,aJ-80を搭載した切手サイズのモジュール「JStamp」(米国Systronix社製)による電光掲示板のデモンストレーションも披露した.

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[写真5] 中央に組み込まれている基板(モジュール)がJStamp

●開発環境に組み込める携帯電話のエミュレータ

 サン・マイクロシステムズのブースでは,携帯機器のためのJavaプログラム開発環境「Sun ONE Studio 4 Mobile Edition」と,これに組み込んで使える携帯電話エミュレータ「i-JADE」(ゼンテック・テクノロジー・ジャパン製)を展示した.JADEシリーズを使うと,携帯電話用のJavaアプリケーション・ソフトウェアをパソコン上で実行したり,デバッグすることができる.

 ゼンテック・テクノロジー・ジャパンのブースでは,iアプリ(NTTドコモのサービス)用のi-JADEのほか,ezplus(KDDIのサービス)用の「ez-JADE」,J-Sky(J-フォンのサービス)用の「Sky-JADE」という,各サービスに対応したエミュレータを展示していた.同じJavaアプリケーション・ソフトウェアとは言っても,各サービスによってライブラリなどが異なるため,記述するJavaのソース・コードも異なる.特に,通信や画像・音声を扱う部分が各社異なっているという.

 ezJADEとskyJADEについては,実際の携帯電話に搭載されている組み込み向けJava実行環境「JBlend(アプリックス製)」が組み込まれている.

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[写真6] i-JADE(左)とez-JADE(右)

 また,ゼンテック・テクノロジー・ジャパンは,Javaで開発したブラウザ(閲覧ソフトウェア)「MediaTrekker」を,富士通製のJavaチップ評価ボード「PersonalJava」に搭載して展示した.Javaチップへの搭載は非常に楽で,ボードを入手してから数時間で動作させることができたという.

 また,同ブラウザをオムロン製のJavaチップ上で動作させるデモンストレーションも行っていた.

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[写真7] 富士通(下段左および上段のディスプレイ),オムロン(下段右)のJavaチップ上でMediaTrekkerを動作させるデモンストレーション

●身体に障害を持つ技術者へのサポート活動

 身体に障害を持つ技術者を対象とする,技術教育に関するボランティア・グループ「智恵の和」は,本グループの活動内容をアピールし,賛同企業や技術サポート要員などを募集していた.2002年8月に,本グループの立ち上げにあたり交流会を開いたところ,30人ほどの技術者などが集まったという.本グループでは2002年10~12月ころに,Java入門編の30時間のトレーニング・コースを開催する計画である.

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