シリコンバレー駐在日記(3) ――生活の準備

田中 良平

tag: 組み込み 半導体

コラム 2002年10月 7日

●契約

 アパートの契約は,引っ越しのつごう上,駐在の1ヵ月程度前に行いました.このときにはアパートを決めていたので,本契約をするだけです.アパート探しから約1ヵ月の間に,うれしいことに家賃が1ランク下がっていました.こうしたところでもシリコンバレーの経済状態の一端を知ることができます.

 家賃の低下に伴って,バブル期に高い家賃契約をした人々が新しくて安い家賃のアパートに引っ越しする「大移動」がシリコンバレーでは起こっているそうです.シリコンバレーが不景気でも,シリコンバレー内部の引っ越しが多いために忙しい,と引っ越し業者が話していました.

 アパートの契約では,事務所の担当者が契約書を持ってきて説明してくれます.契約の際には,注意することがたくさんありました.家賃はもちろんですが,支払い時期や方法,駐車場の使いかたなどです.アパートにはプールやスポーツ・ジムなどが付いていることも多いので,これらの使用方法もあります.契約では,さまざまな事項について,使用方法や禁止事項が細かく記述されており,すべての事項に対して,サインしなければなりません.

●ごみの決まりごとは一つだけ

 これだけ細かい事項が示されている中で,ふと不思議に思ったことがあります.それは,ごみに対する注意書きがほとんど見つけられなかったことでした.日本の場合,ごみに関する決まりごとがいろいろとあります.しかし米国では,特に気をつけないといけないルールは存在しないようでした.アパートに設置しているごみ箱(単にゴミ箱といっても一つがものすごく大きい)に捨てることが指定されているだけです.心配になってほかの駐在員が契約しているアパートや住宅の事情を聞いてみると,やはり生ごみの日や不燃物の日といったものはないそうです.アパートのゴミ箱は,いつも山盛りになっています.ごみの内容を見てみると,たしかに分別しているとは思えません.ベッドが丸ごとゴミ箱に入れられていたこともありました.もちろんゴミ袋の指定なんてありません.

 ごみの回収方法も独特です.トラックの荷台に付属しているロボット・アームを使い,大型ゴミ箱を持ち上げ,荷台にごみを放り込むといった大胆な方式です.豪快といったことばがピッタリとはまりますが,朝方に回収するので,音がうるさいのが難点です.一戸建ての住宅の場合は,小型のごみ回収車が回っているようですが,アーム・ロボットを使ってゴミ箱を持ち上げる点は同じでした.

 はじめて見たときは,いったい何が起こっているのかと目を疑いました.日本人には想像できないことがまだまだあるようです.

●生活用品とライフライン

 シリコンバレーにあるアパートの多くには,あらかじめコンロ(電気またはガス),洗濯機,乾燥機,電子レンジ,冷蔵庫,食器洗い機,エアコンが備え付けられており,契約したその日から生活できます.ベッドなどの家具は,家具のレンタル会社を使いました.契約したその日から使えるようにすることが信念なのか,だいたい即日準備ができる体制になっています.

 こうして,契約から3日目に,アパートでの生活準備ができました.電気,ガス,水道については,初めから使える状態になっています.あとからそれぞれの会社に対して,使用する旨を伝えます.

 これらの契約の際は,ソーシャル・セキュリティ・ナンバーといって,米国で暮らすうえでは欠かせない番号が必要になります.まだ発行してもらっていない場合は,後から連絡する旨さえ伝えれば,たいていの契約は進めることができます.

●新築アパートなのに不ぐあいだらけ

 アパートの管理事務所からは,契約してから2週間の間に内部をチェックして,問題点がある場合は連絡するように言われていました.管理会社の人は,新築なので問題はないはずだと言っており,筆者も同じように思っていたのですが,それは甘かったようです.電気や水まわりなどのチェックを注意して行ってみると,いたるところに不ぐあいがありました.キッチンの配水管から水が漏れていたり,新品であるはずの冷蔵庫が壊れていたり,トイレの水槽がひび割れているなど,意外とたくさん問題が見つかりました.修理を依頼すれば,すぐに対応してくれるのですが,不ぐあいを出すことについて,日本ほど神経質になっていないように感じます.

 米国ではなにかと契約を行うことになりますが,このときにさまざまな手違いが発生します.このような手続きに関するまちがいを正していくことは,米国では日常茶飯事のようです.ここで生活をするためには,日本で生活するときよりも,自分自身でチェックする姿勢を持つ必要があることを確認しました.

 こうして,シリコンバレーでの生活がスタートしたわけですが,この記念すべき初日に飲むビールが,冷蔵庫の故障により冷やせなかったことは,ちょっとだけ残念でした.

(本コラムはDESIGN WAVE MAGAZINE 2002年4月号に掲載されました)


◆筆者プロフィール◆
たなか・りょうへい.同志社大学工学部卒,今年で31歳になる好奇心旺盛のエンジニア.シリコンバレーの目新しいところに,足を運んでは新鮮な驚きを体感する日々を送っている.現在は,シリコンバレーにあるDAIHEN Advanced Component社に勤務.FPGAとIP(Intellectual Property)を応用したシステムの開発を行っている.休日は,家族で巨大なショッピング・モールめぐりをし,お昼は数多くあるファースト・フード店で一休み.

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