課題のエネルギ効率を改善,キャパシタ・ディーゼル・ハイブリッド車がついに実用化 ――日産ディーゼル,商用のハイブリッド中型トラックを発売

組み込みネット編集部

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レポート 2002年6月27日

 日産ディーゼルは,キャパシタとディーゼル・エンジンを組み合わせたハイブリッド車「キャパシターハイブリッドトラック」を発売した.このハイブリッド車は,4tクラスの中型トラックである.バッテリ(電池)とエンジンのハイブリッド車はすでに実用化されているが,キャパシタと組み合わせたハイブリッド車として実用化に成功したのは世界初であるという.本ハイブリッド・トラックは,キャパシタの開発や同社の大型トラック向け電子制御トランスミッション技術などにより,低燃費と低公害を実現した.

 一般にキャパシタはバッテリと比べてエネルギ密度が低い.同社は,岡村研究所と共同で研究し,エネルギ密度が従来の約2倍になる6.3Wh/kgのキャパシタ「Super Power Capacitor」を開発した(写真1).キャパシタ・セルに入れる電解液やキャパシタの充電制御システムなどにくふうを施したという.充放電効率は入出力密度が500W/kgのとき92%(モジュール性能)であり,商用車の蓄電池として十分に利用できる.

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[写真1]開発したキャパシタ「Super Power Capacitor」(写真左)とモジュール・ユニット(写真右)

[表1]モジュール・ユニット仕様

セル構成 モジュール(3並列64直列)×2直列(384セル)
最大電圧 346V
最大容量 583Wh
定格入出力 60kW
外形寸法 1,105mm×505mm×470mm

 バッテリと異なり,発電の際にキャパシタは化学反応を伴わない.そのため,化学反応に伴うエネルギの損失がなく,劣化も少ない.これにより,効率よく大電流を充放電できる.また,寿命も長くなり,10年間(走行距離60万Km以上)はキャパシタを交換しなくてよいという.

 Super Power Capacitorは同社の上尾工場で生産する.製造設備は自社で製作した(写真2).製造室の面積は357mm^2(17m×21m)であり,材料室,セル組み立て室,性能試験室,モジュール&ユニット組み立て室の4室からなる.

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[写真2]セル組み立て室のようす

 ハイブリッド車のシステム構成としては,パラレル方式を採用した(図1).パラレル方式では,走行中はエンジンによる駆動が主体となる.発進時や加速時などエンジンに負荷がかかる場合には,モータが駆動力を補助する.本ハイブリッド・トラックでは,発進時はモータのみで駆動し,加速時はモータとエンジンで,一定の速度になるとエンジンのみで駆動する.

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[図1] 「キャパシターハイブリッドトラック」のシステム・ブロック図

 ディーゼル車は,発進や加速の際のNOx(窒素酸化物)が多い.本ハイブリッド・トラックは,現行のディーゼル・トラック(排ガス規制は長期規制:4.5g/kWh以下)と比べてNOxを50%削減できたという.また,今年(2002年)から2004年にかけて行われるディーゼル車の排出ガス規制の強化により定められる新短期規制値(3.38g/kWh以下)よりも25%低い値である.NOxのほかにPM(粒子状物質)も,現行のディーゼル・トラックより約70%低く,新短期規制値(0.18g/kWh以下)と比べても約50%低い排出量になるという(図2)

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[図2]排ガス規制とキャパシタ・ハイブリッド・トラックの排出ガス量

 ブレーキをかける際には,モータによって制動をかけ,その制動エネルギを電気エネルギに変換してキャパシタに蓄える.この蓄えられた電気は,発進時や加速時に再利用される.このようにブレーキ・エネルギを回収することによって,燃費が改善された.本ハイブリッド・トラックの市街地走行時の燃費は,従来のディーゼル車と比べて1.5倍改善したという.

 本ハイブリッド・トラックは,都市地域の商用車としての需要を見込んでいる.当面の販売目標は年間30台.同社の現行のディーゼル中型トラック「KK-MK252HB」をベースにしたハイブリッド・トラックの価格は14,436,000円(現行車の2.5倍程度).ただし,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からは480万円の,また加盟していればトラック協会から80万円の補助金が支給される.

 今後は,本ハイブリッド・トラックの性能や燃費を向上させつつ,原価の低減を図っていく.条件によっては,他社への技術供与も行っていく予定である.また,Super Power Capacitorの自動車以外への応用も模索していくという.


参考URL
日産ディーゼルのホームページ

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