メモリIPへの要求は面積から製造容易性や信頼性にシフト ――Mosys社がエラー訂正機能を組み込んだ1T-SRAM製品を発売

組み込みネット編集部

tag: 半導体

インタビュー 2002年5月29日

 システムLSI向けのメモリIPコアをライセンスしている米国Mosys社は,今年(2002年)の初めに,エラー訂正機能を組み込んだメモリ・コア「1T-SRAM-R」を発表した.同社は,DRAMと同じメモリ・セル構造(1トランジスタ,1キャパシタ)をとりながら,SRAMと同程度のアクセス速度,およびSRAMと同じ仕様のインターフェースを備えるメモリ・コア「1T-SRAM」を開発しているIPベンダである.1T-SRAMは,例えば家庭用ゲーム機「NINTENDO GAMECUBE」や通信機器などに採用されている.

 同社によると,半導体製造技術の微細化が進むにつれて,メモリ・コアの占有面積の問題よりも,製造容易性や信頼性の問題のほうが重要になってくるという.ここでは,同社 Vice President/General Manager, Intellectual PropertyのMark-Eric Jones氏(写真1)に1T-SRAM-R製品の概要について聞いた.

p1.jpg
[写真1] 米国Mosys社 Vice President/General Manager, Intellectual PropertyのMark-Eric Jones氏

――1T-SRAM-Rとは?

Jones氏 1T-SRAMのメモリ・セルにエラー訂正回路を埋め込んで,歩留まりや信頼性を向上させた製品だ.弊社ではこの技術を"Transparent Error Correction"と呼んでいる.データ32ビットに対して,エラー訂正用の6ビットを付加する.エラー訂正にはハミング符号を利用している.

――なぜ,歩留まりや信頼性に着目したのか?

Jones氏 システムLSIでは,チップ上のメモリ・コアの占有面積が急激に増えている.米国SIA(Semiconductor Industry Association)がまとめているITRS(International Technology Roadmap for Semiconductor)によると,0.13μmルールのシステムLSIの場合,チップ全体の52%をメモリ・コアが占めているという.この比率は年々上昇し,2014年の35nmプロセスではチップ全体の94%に達すると予測されている.すなわち,今後はメモリ・コアの製造品質が上がらないと,システムLSI全体の製造品質が上がらないことになる.

――エラー訂正機能を組み込むことで,コアの面積はどのくらい増えるのか.

Jones氏 面積のオーバヘッドはない.従来の1T-SRAMのビット・セルには,まだサイズを縮小する余地(マージン)があった.そこで,ビット・セルのサイズを従来より20%縮小し,エラー訂正用のビットを追加しても,全体のメモリ・ブロックのサイズが大きくならないようにした.また,エラー訂正回路をメモリ・ブロックの内部に置き,インターフェースを従来の1T-SRAMと同じ仕様にした.つまり,ユーザは,エラー訂正機能のことをまったく意識せずに1T-SRAM-Rを利用できる.これがTransparent(透過的な)Error Correctionという名前の由来だ.

――メモリの歩留まりを改善する方法として,あらかじめ冗長ビットを組み込んでおき,レーザを使ってリペア(修復)する方法が利用されている.こうした方法と比べて,Transparent Error Correctionにはどのような利点があるのか?

Jones氏 リペア・プロセスは,面積の増加が少なく,経済的に製造品質を高めることのできる方法である.しかし,例えば間欠的に発生する欠陥などには対応できない.このほか,エラー訂正回路を外付けする方法もある.この方法だとTransparent Error Correctionと同等の製造品質を実現できるものの,占有面積が大きくなる.

――製造品質とは具体的に何のことか?

Jones氏 メモリ・コアの場合,「歩留まり」,「信頼性」,「ソフト・エラー発生率」の三つが製造品質の基準になる.1T-SRAMは通常のSRAMよりサイズが小さいので,メモリ容量当たりの歩留まりは自然に高くなる.

 信頼性については,台湾のファウンドリ企業であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)といっしょに調査した.1,000時間のHTOL(高温動作寿命試験)とHAST(加速ストレス試験)をパスした.

 ソフト・エラーは,半導体材料やパッケージ材料に含まれるアルファ線が原因で発生する誤動作のことだ.宇宙線が原因になることもある.従来はDRAMにおいて問題となっていたが,最近ではSRAMでも問題となってきている.Transparent Error Correctionを利用すると,製造プロセスが0.13μmルール,動作周波数が200MHzのとき,ソフト・エラー発生率は10FIT(failure in time)/Mビット未満になった(1FITは,1デバイスにつき約10万年に1回の割合でエラーが発生することに相当).これは従来の1T-SRAMのソフト・エラー発生率より2けた程度低い.通常のSRAMと比べると,その差はさらに大きい.エラー訂正以外の方法でこの数字は実現できない.

――すでにライセンスを受けた企業はあるのか?

Jones氏 Motorola社とPhilips社にライセンスした.また,企業名は明かせないが,携帯電話についての三つのプロジェクトが進行中である.非常にメジャーな会社だ.


参考URL
米国Mosys社のホームページ

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日