高分子材料を用いた17インチ型有機ELディスプレイに人だかり ――EDEX2002 電子ディスプレイ展

組み込みネット編集部

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レポート 2002年5月 1日

 2002年4月16日~18日,東京ビックサイト(東京都江東区)でフラットパネル・ディスプレイに関する展示会「EDEX2002 電子ディスプレイ展」が開催された.有機EL(electro luminescence)ディスプレイを展示したブースが来場者の関心を集めていた.その中でも,高分子材料を用いた17インチ型の有機ELディスプレイの展示には人だかりができていた.

●17インチ型26万色有機ELディスプレイ

 東芝松下ディスプレイテクノロジーは,高分子材料を用いた17インチ型の有機ELディスプレイを展示した(写真1).本ディスプレイは,有機ELディスプレイとしては,画面の大きさが最大であるという.

 有機ELディスプレイは,電流駆動による自己発光素子を用いたディスプレイである.応答速度がμs単位と速いため,動画などの表示に向いている.

 有機ELディスプレイは,主に低分子材料を用いたものと高分子材料を用いたものに区別される.一般的に,低分子材料を用いたものは,G(緑)とB(青)の発光効率は高いが,R(赤)の発光効率はやや落ちる.高分子材料を用いたものはこの逆である.

 本ディスプレイの駆動方法は,アクティブ・マトリックス方式が用いられている.アクティブ・マトリックス方式では,画素ごとにTFT素子を設け,TFTのON/0FFによって電流を制御する.発光は連続的であり,動画の表示に向いていることや,TFT基板上に駆動回路を形成できることなどから,現在,広く用いられている.

 本ディスプレイの製造方法はインク・ジェット方式.画素数は1,280×768,画素ピッチは0.2895mm.階調は64,輝度は100~300cd/m2.製品化の時期は未定である.

 同社はこのほか,高分子材料を用いた2.2インチ型26万色有機ELディスプレイも展示した(写真2).画素数は176×200,画素ピッチは0.189mmである.また,同社は,低分子材料を用いた2.2インチ型有機ELディスプレイの開発も行っている.2.2インチ型有機ELディスプレイは2002年内に製品化する予定.

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[写真1] 東芝松下ディスプレイテクノロジーの17インチ型有機ELディスプレイの展示

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[写真2] 東芝松下ディスプレイテクノロジーの2.2インチ型有機ELディスプレイの展示

●画素ピッチ130ppiの有機ELディスプレイ

 セイコーエプソンは,高分子材料を用いた2.1インチ型26万色有機ELディスプレイを展示した(写真3).同社は,2001年10月31日~11月2日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された「LCD/PDP International 2001」でも有機ELディスプレイを展示した.このときの展示では画素ピッチが100ppiであった.今回のディスプレイは130ppiである.輝度は120cd/m2.応答速度は60フレーム/s以上.動画を30フレーム/sで表示したときの消費電力は150mWである.

 本ディスプレイは,英国CDT(Cambridge Display Technology)社の製造技術を用いている.同社のインク・ジェット・プリンタ技術をもとに開発されたインク・ジェット・ヘッドを用いて成膜する.製品化の時期は2004年の予定.

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[写真3] セイコーエプソンの2.1インチ型有機ELディスプレイの外形と構造

 一方,東北パイオニアは,低分子材料を用いた1.8インチ型26万色有機ELディスプレイを展示した(写真4).この有機ELディスプレイは,半導体エネルギー研究所と共同で開発した.

 本ディスプレイの駆動方法はアクティブ・マトリックス方式である.階調は64,画素数は176×768.画素ピッチは0.168mm.開口率は40%,輝度は80cd/m2.白色全点灯時の消費電力は250mWである.寿命は5,000時間.東北パイオニアの有機ELディスプレイは,米国Motorola社の携帯電話やケンウッドのカー・ナビゲーション機器などに採用された実績があるという.このほか,同社はパッシブ型の4色有機ELディスプレイを組み込んだ携帯型MDプレーヤやDVDプレーヤも展示した(写真5)

 なお,三洋電機も低分子材料を用いた有機ELディスプレイを展示した.

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[写真4] 東北パイオニアの1.8インチ型有機ELディスプレイの展示

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[写真5] 東北パイオニアの有機ELディスプレイを用いた携帯型MDプレーヤの展示

●sRGBに対応した透過型TFD液晶ディスプレイ

 セイコーエプソンは,米国IEC(International Electorotechnical Commission)の色再現性・色空間に関する規格「sRGB」に対応した2.1インチ型の透過型TFD(thin film diode)液晶ディスプレイを展示した(写真6).駆動はTFD素子を用いたアクティブ・マトリックス方式である.TFDとは,TFT液晶ディスプレイで用いられている薄膜トランジスタを薄膜ダイオードに置き換えたもの.薄膜トランジスタを用いた場合よりも電極の数を減らすことができる.

 本液晶ディスプレイの色再現性はNTSC比60%(同社の従来品の1.5倍),消費電力は4m~7mWである.色数は26万色,画素数は176×220.量産出荷の開始時期は2002年後半.

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[写真6] セイコーエプソンの2.2インチ型TFD液晶ディスプレイの展示

●二つの液晶を同時に駆動できるドライバLSI

 シャープは,二つの液晶ディスプレイを同時に駆動できるドライバLSIを開発し,このLSIを組み込む携帯電話のモックアップを展示した(写真7).現在の携帯電話は,折りたたみ式が主流となっており,内側の大きな画面のほかに,時刻や着信などを確認できる小さな画面が背面に付いている.本ドライバLSIを使うと,画素数が132×176(内側の画面)と132×64(背面の画面)の二つの液晶ディスプレイを駆動できる.

 本ドライバLSIは,液晶コントローラや昇圧回路などを内蔵している.二つの画面とも,最大65,536色を表示できる.また,省電力モード時であっても,背面のディスプレイに64色1行のテキストを表示できる.このときの消費電力は0.1mWである.

 電源電圧は1.65V~3.3V.液晶駆動用の出力電圧は5.0V~19.0V(2~7倍に昇圧).SOF(system on film)実装に対応する.パッケージはTOP(tape carrier package)で提供される.サンプル出荷の開始時期は2002年5月,量産出荷の開始時期は同年7月.サンプル価格は2,000円.

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[写真7] 二つの液晶を駆動できるシャープのドライバLSI(右下)と携帯電話のモックアップ

●輝度400cd/m2の7インチ型TFT液晶ディスプレイ

 NECは,輝度400cd/m2の7インチ型TFT液晶ディスプレイを展示した(写真8).表示部のサイズは154.08mm×87.048mm,視野角は上下左右170°である.

 本ディスプレイの駆動方法はアクティブ・マトリックス方式である.輝度400cd/m2時の消費電力は5.5W.画素数は112,320,コントラスト比は300対1である.

 量産出荷の開始時期は2002年8月.サンプル価格は30,000円.

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[写真8] NECの7インチ型TFT液晶ディスプレイの展示

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