Microsoft,NT Embedded 4.0後継OS「Windows XP Embedded」のベータ2をリリース
米国Microsoft社は,組み込みOS「Windows NT Embedded 4.0」の後継である「Windows XP Embedded」のベータ2を,2001年9月10日にリリースした.Windows XP Embeddedは,2001年11月に発売されるWindows XPに,組み込みに特化した機能を加えたOSである.ベータ2からは日本語の表示や入力を行えるようになった.現在,CD-ROMによる配布を無料(ただし,送料負担)で行っている.正式版は,2001年第4四半期に出荷する予定(図1).
ここでは,Windows XP Embeddedの開発状況を,Microsoft社Embedded/Appliance Platform Group, Directorの沼本健氏と同Marketing & Business Development, Senior DirectorのKeith White氏(写真1)に聞いた.
――Windows XP EmbeddedとWindows NT Embedded 4.0の違いは?
沼本氏 Windows NT Embedded 4.0とWindows XP Embeddedはまったく違うものになっている.XP Embeddedはコンポーネント化されている.また,パソコン用XPのコンポーネントはすべて含まれている.コンポーネント数は約1万.そのうち9,000はデバイス・ドライバで,300のネットワーク・カードをサポートしている.例えば,Compact PCIやシャーシ型のPCIカードを利用できる.
パソコン用XPとXP Embeddedはコンポーネントを共通化している.そのため,パソコン向けXPの発売とほぼ同時期にXP Embeddedを出荷できることになった.NT Embeddedを開発したときは,そうはいかなかった.パソコン用のNT4.0はもともとモジュール化されていなかったので,モジュール化の作業に時間がかかり,NT Embedded 4.0の出荷開始時期はNT4.0の出荷開始時期からかなり遅れた.また,NT Embedded 4.0はコンポーネント数が300くらいで,ネットワーク・カードは17しかサポートしていなかった.
XP Embeddedは,コンポーネントがたくさんあるが,画面の案内に従っていくだけで,アプリケーションごとに必要なコンポーネントを選択しビルドできるTarget Designerというツールが用意されてある.また,必要なコンポーネントが過不足なく選択されているかどうかをチェックするTarget Analyzerというツールも付いている.
左上部に「10186 Compnents」と表示されている. 必要なコンポーネントを選択しているようす.そのほか,Design Templatesと呼ぶ機能により,ホーム・ゲートウェイやキヨスクなどに必要なコンポーネントがあらかじめテンプレートとして用意されている.
――組み込みに特化して追加された機能とは?
沼本氏 いろいろなメディアからブートできる.インストールした後,パソコン用のXPはハード・ディスク・ドライブからしかブートできない.しかし,XP Embeddedはフラッシュ・メモリやCD-ROM,ハード・ディスク,ROMからブートできる.また,NULL VGAドライバと呼ぶ機能により,マウスやキーボード,モニタがなくても動作するようにしてある.
――ベータ1からベータ2になって,変わった部分は?
沼本氏 ベータ2からは日本語を入力,表示したり,日本語のアプリケーションを使用できるようになった.簡単ではあるが,自社のWeb上に日本語のFAQを作成した.
それから,ベータ版を導入している企業と,早期導入プログラムについての提携を結んだ.綿密な連絡を取り合い,協調してデバッグなどを行っている.ベータ1ではアナウンスしている提携企業の数が10社だったが,ベータ2ではイスラエルRetalix社とドイツWincor-Nixdorf社が加わって12社となった.また,企業名は言えないが,数社の日本企業とも提携している.
――Talisker(Windows CEの次期バージョン)とXP Embeddedの違いは?
沼本氏 Taliskerはリアルタイム性があるが,XP Embeddedにはない.もし,XP EmbeddedをリアルタイムOSとして使いたい場合,サード・パーティが出荷している製品を導入する必要がある.また,TaliskerはARMやMIPSなど,多数のCPUに対応しているが,XP Embeddedはx86にしか対応していない.
テレビのチューナなどの単純な機能の製品,つまり,ローエンドのものにはTaliskerがよい.データをキャッシングしてストリーム・データとして処理するような機器やサーバのようなハイエンドのものにはXP Embeddedが適している.あくまでも一つの目安だが,RAMやROMのフットプリントが5Mバイト以下ならTalisker,それ以上はXP Embedded.
――どの組み込みOSを競合と考えているか
White氏 基本的にはすべての組み込みOSだが,開発する機器の種類によって違ってくる.Windowsの強みは,いろいろなものと接続できること.Bluetoothなどの無線規格にも対応しており,例えば,ワイヤレスのプロジェクタなどに使える.その製品だけで完結するのではなく,何かほかの機器と接続して使うような用途に適している.
――出荷後,何年間サポートを続ていくのか
White氏 基本的に,OSそのものの販売を打ち切るようなことは考えていない.継続して販売していく.開発ツールについては,顧客からのフィードバッグしだいだ.サポートについては,顧客からの要望もあり,現在,長期サポートを検討中だ.
・マイクロソフト株式会社のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
・Windows XP Embeddedに関するホームページ
http://www.microsoft.com/japan/windows/embedded/xpepreview/
・Windows XP EmbeddedのCD-ROM申込みのページ
https://microsoft.order-1.com/XPe_beta/
・Taliskerに関するホームページ
http://www.microsoft.com/JAPAN/windows/embedded/taliskerpreview/redir-overview.asp