プロセッサ最新テクノロジ2016 シリーズ8
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2016年2月21日
注目ポイントはチップの先進性だけじゃない/ARMマイコン開発を総合的にサポートするAtmel SMART
開発ツール, ソフトパッケージ, クラウドを充実させたAtmel SMART
アトメルジャパン合同会社(以下:Atmel)は先進的な視点とユニークなアーキテクチャをもつマイコン・メーカとして知られている.マイコンには1993年に参入した草分け的存在であり,1997年に最新8ビット・マイコンのAVR,1998年に世界初のARMマイコン(ARM7TDMIコア),2007年にオリジナル32ビット・マイコンのAVR32,2008年からはARM Cortex-Mコア採用の32ビット・マイコンなど意欲的に新製品を投入してきた. さらに,同社の強みはチップだけでなく,ユーザのニーズをいち早くつかみとる開発ツール,ソフトウェア・ライブラリ,クラウド連携などのエコシステムの充実にあるという.今回は,Atmelの最新ツール,ソフトウェアおよびクラウドを含む評価・開発環境などについてお話を伺った. 執筆:宮﨑 仁
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アトメルジャパン合同会社 フィールドアプリケーションエンジニアリング工学博士 ガン ワン 氏 | アトメルジャパン合同会社 フィールドマーケティング 小林 素康 氏 | アトメルジャパン合同会社 ワイヤレス ソリューションズ マーケティング 荒井 康之 氏 |
アトメルジャパン合同会社
1.AtmelのARMマイコンはSMART
Atmelは1980年代に不揮発メモリのメーカとして創業し,1990年代以降は8051コアのマイコンを発表.1997年にAVRを発売し,マイコン・メーカとしての地歩を固めた.
一方で,1994年には早くもARMコアの32ビット・マイコンの開発を始めている.当時は,省電力RISCプロセッサのARM7TDMIが携帯電話に採用され始めた時期であり,ARMコアでフラッシュメモリ内蔵のマイコン製品を作ったのは他にないユニークな発想だった.1998年にはARM7TDMIコアを採用して,世界初のARMマイコンを製品化した.また,ARM926,Cortex-A5コアのMPU製品もあり,新製品も開発中だ.その後,ARM自身がCortex-Mコアを発表してマイコンに参入してからは,Cortex-M0+,Cortex-M3,Cortex-M4,Cortex-M7とラインナップを広げてきた.
最新の製品としては,Cortex-M0+コア搭載で動作時に35μA/MHzの超ローパワー・マイコン「SAM L21」や,L21に320セグメントのLCDコントローラを内蔵した「SAM L22」,さらに5V動作可能のCortex-M0+コア搭載で耐ノイズ性を高めた家電向けマイコンの「SAM C20/C21」,Cortex-M7搭載で最高300MHz動作,256KB TCM/32KB Cacheを内蔵したハイエンド・マイコンの「SAM S70/E70」などがある.
Atmelでは,ARMコアを搭載したマイコン製品のブランド名を,SMARTと名付けている.SMARTは単にチップだけを指すわけではない.CPUコアと連携するペリフェラル,ワイヤレス,セキュリティ,ソフトウェア・ライブラリ,Low PowerテクノロジなどAtmelの先進的な技術が集積されており,ARMコアを最大限に活用することができる. .
2.AVRからARMまで統合した最新の開発環境
Atmelでは開発ツール,ソフトウェア・ライブラリ,評価ボードなどのエコシステムにも力を入れ,最新の無償の統合開発環境としてAtmel Studio 7がある(図1).
図1 AVRからARMまで統合した最新開発環境Atmel Studio7
従来はAVR用の開発環境としてAVR Studioを無償提供してきが,バージョン6からAVRとARMの開発環境が統合され,名称もAtmel Studioとなった. AtmelマイコンからArduinoの開発まで幅広く活用できる.
Atmel StudioはVisual Studioのシェルを用いており,Windowsアプリケーション開発の経験者にもなじみやすい.一方,豊富な機能はアドオンで簡単に追加でき,AVR Studioの軽快な操作性を維持している.また,機能制限やコード・サイズ制限をせずに,無償提供しているのもAtmelの伝統といえる.
Atmel Studio 7には,ASF(Atmel Software Frame work)に代表される豊富なサンプルコードや,最新の自動コンフィグレーション・ツールAtmel STARTとの連携により,さらに強力で使いやすくなった.
ASFは,Atmelが提供する充実したソースコード・パッケージだ.ペリフェラルのドライバからミドルウェアまで,さまざまなサンプルソースが利用しやすく整理されている.使用したいデバイスやボード,機能などから,目当てのソフトウェアを簡単に探せる.量産レベルの実用性を備えたものも多く,カスタマイズして製品に利用することも可能だという.
たとえば,最新の超低消費電力マイコンSAM L22を搭載したExplained Pro評価ボード(写真1)についても,すでに120点以上のサンプル・ソフトウェアが登録されており,今後さらに追加されていく予定だ.
写真1 超低消費電力セグメントLCDコントローラ内蔵のARM評価ボード(Cortex-M0+):SAM L22 Xplained Pro
ASFはAtmel Studioにはすでに含まれており,またAtmelのWebサイトからダウンロードして利用することもできる.Atmel Studioで新規プロジェクトを開き,Wizardに従ってサンプル・ソフトウェアを選んで組み合わせていくだけで,評価ボードを試してみるテスト・プログラムを簡単に作成できる.
Atmel STARTは,Webベースの強力な自動コンフィギュレーション・ツールである.これはAtmelのマイコン製品のピン機能の割り当て,クロック生成などをGUIで簡単に行い,さらに必要なドライバを自動的に生成してくれるコード・ジェネレータの機能をもっている(図2).
図2 PINの設定をしている様子 開発作業を大幅に簡略化できるAtmel START
最近のマイコンには多数の機能が内蔵されていて,その中から必要な機能を選んでI/Oピンやクロックなどのリソースを割り当てるのは大変だ.その作業を自動化し,初めて使うデバイスでも簡単に動かせるようにしたものがAtmel STARTだ.
開発者は,使用したいデバイスを選びグラフィカルに表示されたピン配置をみながら,必要な機能を割り当て,ペリフェラル設定を行うと自動的にドライバなどが選択されて,ソースコードプロジェクトが生成される.ソースコード・プロジェクトは,Atmel Studio,KEIL,IAR用が選べる.
とくに最新のマイコンでは,SERCOM(多機能シリアル通信モジュール), PTC(Peripheral Touch Contr oller), CCL(Customer Configured Logic)など非常に高機能で設定の自由度が高いペリフェラルを簡単に活用することができる.
さらに,Atmelでは低価格で使いやすい評価ボードのファミリとして,Explained Pro等を展開している.Explained Proは各ファミリのマイコンを搭載したCPUボードと,各種拡張ボード(ワイヤレス,センサー,セグメントLCDなど)を組み合わせることによって必要な機能を簡単に実現できる.
3.すぐに試せるIoTクラウド環境の提供
Atmelでは,超低消費電力マイコンやワイヤレス・マイコン,8ビットtinyAVRなど,IoTのエッジ・ノードとして最適なマイコン製品を数多くラインナップしている.これらのデバイスを誰でも簡単に活用してIoT関連製品を開発できるように,無償のクラウド環境Atmel Cloudが用意されている.
Explained Proなどのマイコン評価ボードにセンサ,ワイヤレスなどの拡張ボードを組み合わせれば,IoTのエッジ・ノードを簡単に構築できる.あとはインターネット接続環境を用意してAtmelのwebサイトから手軽にIoTシステムを構築できる.これは,簡単なテストやデモには十分活用できる.また有料でより実用的な商業利用のクラウド環境に拡張もできる.
Atmelでは,その他にもコネクティビティ技術やセキュリティ技術などIoTに必要なさまざまな技術を提供しており,トータルなIoTシステム構築を強力にサポートしている(図3).
図3 センシングからクラウドまでサポート
------------ 第8話 終了 ------------
プレゼントはこちらから
https://cc.cqpub.co.jp/system/enquete_entry/483/
アンケートに答えていただいた読者に下記のどちらかをプレゼント(合計20名様)
「SAM L22 Xplained Pro」 LCD評価委ボード
「ATWINC1500-XSTK」 Wi-Fi + センサー拡張ボード付IoTクラウド評価キット
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インターフェース誌 巻頭企画プロセッサ・メーカにテクノロジ・シリーズの
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この記事に関するお問い合わせ先
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アトメルジャパン合同会社 http://www.atmel.com/ja/jp/
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tag: CPU, インターフェース, クラウド, セキュリティ, センサ, ソフトウェア, ボード, ミドルウェア, メモリ, ワイヤレス, 通信, 開発環境